妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「からくり人形館の怪…」
この土蔵なのだな…?
『斬妖丸』よ
お前が強い妖気を感じるのは?
しかし…
これは土蔵などというよりも
まるで城の様にデカいのう
この家の先代が
家督を息子に継いでから
この中に閉じ籠り気味だと聞く
もう一月も中から出て来ぬとな…
先代の趣味は
からくり人形の収集らしい
今では趣味が高じて
自分でも作っておるとの事
しかも、狂ったように
没頭しているとか…
食事は家人に届けさせ
客にも応対せんらしいな…
この中に
妖の気配が在るとなると
先代の安否が気にかかる…
行くぞ『斬妖丸』
先代を一刻も早く連れ戻し
家人の心配を解いてやらねばな…
********
ふふふふ…
誰か入って来たようじゃな
今回はどの様にして
客を楽しませてくれようかの
儂の作りし『からくり』は見物じゃぞ
みんな驚く事は請け合いじゃて…
これ、どうしたと云うのじゃ
何を騒いでおる…?
何じゃと?
今回の来客は
お前達を狩る者と申すか…?
妖狩りとな…
ふ…
心配など要らぬわ
お前達は儂の大切な作品じゃ
いや…すまぬすまぬ
儂の可愛い子供達じゃったな
その妖狩りの侍とやら…
このからくり館
総出で歓待してくれようぞ
********
むんっ!
危ない!
矢が飛んで来おった!
その方角に人の気配は無い
妖はどうじゃっ?『斬妖丸』!
フンッ!
てえいっ!
何のっ!
矢だけではない
槍衾まで出しおるっ!
これは拙者を本気で
仕留めるつもりの様じゃな…
ん…?
何だ、あの等身大の人形は…?
歯車とゼンマイのからくりで
動きし人形か…?
クソッ!
同じヤツがもう二体現れたっ!
三方から囲まれた…
ヤツらめ!
こっちへ向かって
走って来おる気か?
うぉ!
人形どもの着た服がはじけ飛んだ…
服の下に隠していたるは
まるで針ねずみの様な
数百本もの槍の穂先か!
それを突き出したまま…
こっちへ一斉に向かって来る!
三方から激突して
拙者を串刺しに致す気だなっ!
上だっ!
拙者は激突する寸前に
床を思いっきり蹴って
空中へ跳躍した
「ガッシャーンッ!」
眼下では
からくり人形どもが
三方から凄まじい速さで
激突した!
槍が互いの身体に突き刺さり
粉々になって吹き飛ぶ部品もあった
ゼンマイが撥ね
幾つもの歯車が転がった
ふううぅ…
危うかったわ…
一瞬遅ければ拙者は針山になっておった…
********
おのれえ…
よくも儂の可愛い子供達を…
三人も殺しおってえ!
許さぬぞ… 妖狩り侍め!
思い知らせてやる!
この広い土蔵の中全てが
儂のからくり空間じゃ!
見るがよい!
儂のからくり屋敷の恐ろしさを!
そして…
苦しみながら死ぬるが良いわ!
********
「ガッシャーン!」
「ガッシーン!」
むっ!
しまった…
土蔵の中の広い空間に
拙者を囲む部屋を造りおった!
閉じ込められてしまった!
どうやら…
この家の先代自身が
からくりを操る妖と成り果てたようじゃ…
そこに気付くのが遅かったわ!
ヤツめ…
今度は何をしようと言うのか…?
「ガガガガガガーッ!」
なっ、なんだ…?
地震か…?
この部屋を揺るがす振動は?
むっ?
天井が…?
天井が下がって来る…
吊り天井か!
しかも天井には
槍の穂先がぎっしりと植わっている!
拙者を刺し殺した上に
さらに潰すと云うのか!
ふふふ…
刺されるのも潰されるのも
どちらも御免被る…
『斬妖丸』よ…
この頑丈なからくり部屋を
木っ端微塵にしてくれようぞ…
やるぞ!
鎌鼬直伝の
『真空乱れ刃』を放つ!
そして…
この部屋をバラバラにしたら
すぐさま竜巻を起こし
ヤツのからくり空間である
この土蔵全てを吹き飛ばしてくれるわ!
いざっ、参るぞ!
真空乱れ刃っ!
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