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ざっくり語彙 ~スキマ5分の「スマホでボキャビル!」~ 031

【遠近法】
一口に【遠近法】といっても実はいろいろな種類があるみたいですが、一般的なイメージとしては、

視点を固定する

その視点から見える物だけを描き、見えない物や存在しないはずのモノは、描くモチーフから徹底的に除外する

・近くの物は大きく、濃く描く
・遠くの物は小さく、淡く描く

結果として、二次元の平面に、あたかも奥行きのある三次元的な空間が再現されているかのように見える

といった理解で大丈夫なようです。
そしてさらに、この【遠近法】を評論文読解のための知識として応用するためには、ぜひとも、以下の点についても知っておきたい。

【遠近法】の原型は古代ギリシャからあったが、それが復活し、重要な認識法として発展していくのは、西洋のルネサンス期。なお、ここで言うルネサンス期とは、西洋に近代という時代を用意したその準備期間のこと。

・つまり【遠近法】は、西洋に始まる近代と呼ばれる時代を象徴するようなものの見方である。
➡︎ルネサンス期の【遠近法】は、芸術の分野ではなく、数学の領域から出てきた。つまり、〈近代を代表する学問=科学〉的な観点を有しているということになる。
➡︎その観点とは、例えば、〈画面から一切の見えないモノを排除し、見えたままを描く=客観性の追求→近代合理主義〉や、〈人間の視点から世界を捉えるという発想=人間中心主義〉などのことである。また、〈世界を見る側=主体=人間/見られる対象=客体=自然〉という世界観、すなわち〈主客二元論〉にも通じるものである。

・となると【遠近法】は、実は近代という時代において成立した一つのものの見方に過ぎず、唯一絶対の、普遍的な世界認識の方法というわけではない。

このあたりのことを知っていると、読むのが楽になる文章は、けっこう多いですよ!

〜例文〜

伝統的な部族社会や非西欧で描かれた絵画のなかには、いわゆる遠近法を無視したような構図のものが多い。しかしそれは必ずしも、その絵が拙いということを意味するわけではないのだ。

〜関連知識〜
ピカソなどの絵を観て、「なんじゃこりゃ…!?」と思ったことはありませんか? 「泣く女」や「ゲルニカ」などの、不思議な構図ですね。あれは、〈対象を様々な角度から見た際のそれぞれの情報を、一つの平面に描く〉という方法で、キュビズムなどと呼ばれるものです。こういったものの捉え方が、〈視点を固定し、見えないモノは排除する〉ことを大前提とする【遠近法】の対極にあることは、イメージに難くありません。そして【遠近法】近代を象徴するものの見方であるなら、20世紀を席巻するキュビズム的な画法は、まさに"反近代"を企図したものであった…と言えるのかもしれません。







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