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大学入学共通テスト[現代文]対策 ~自習のためのアドバイス〜

 こんにちは。現代文講師の小池です。今回は、来たる大学入学共通テストに向け、高校三年生や受験生の皆さんが今から[現代文]をどのように勉強していくべきなのか、なるべく簡潔にまとめてみたいと思います。

現況

 ご存じのように、大学入学共通テスト現代文の目玉の一つであった記述問題については、すでに見送りが決定しています。これにより、

100分で大問5題(記述・論理的文章・文学的文章・古文・漢文)

という当初に予定されていた構成は、

80分で大問4題(論理的文章・文学的文章・古文・漢文)

へと変更されました。
 そしてこの変更を踏まえ、少なからぬ人が「センター試験に戻すということね」と受け取ったようなのですが、実はそうではありません。簡単にいえば、第1問の論理的文章も、第2問の文学的文章も、

複数テキスト問題

という〈新傾向〉の出題となる可能性が高い。これは根拠のあることで、例えば大学入試センターの公式発表でも、

問題の作成に当たっては、⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。
(「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針 令和2年1⽉29⽇」より抜粋。太字は引用者)

とされているのですね。「異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた、複数の題材による問題」と明言されているのがわかると思います。これをもう少し具体的に言えば、

第1問:論理的文章
〔複数の評論文〕、もしくは〔1本のメインとなる評論文+実用的文章、グラフ、図表、写真、会話文など〕
*実用的文章…法律文や契約書、新聞記事や説明書などを指します。

第2問:文学的文章
〔小説・エッセイ・詩・短歌俳句からの、複数の文章の組合せ〕

というパターンになります。より詳しくは、過去2回実施されたプレテストがありますので、その第2問第3問をごらんください(なお、第1問は中止となった記述問題なのですが、実用的な文章や複数テキストの内容を知るには重要な資料となります。ざっとでかまわないので、そちらのほうにも目を通しておいてください)。

どう対策すべきか?①

 では、こうした複数テキスト型問題について、今どのように対策を進めていくべきなのでしょうか。それに関して絶対的な大前提として強調しておきたいのが、

まずはオーソドックスな読解力を鍛える!

ということの大切さです。たとえ複数の文章が出題されようと煩雑な資料が付されようと、その文章それ自体の読み取りについて、何かこれまでにはない特殊なものが要求されるわけではありません。

・文章全体の論やストーリーの展開を整理する
・論理的な文章なら主張を、文学的な文章なら心情を整理する
・未知の語句については辞書で意味を調べ、「意味調べノート」にまとめる

といったオーソドックスな勉強をコツコツと継続していきましょう。詳しくは、以下の記事をご参照いただけると嬉しいです。

 もちろん現状の成績にもよりますが、現代文という科目に不安を抱いている人ならば、今から少なくとも夏いっぱいまでは、こうした地道な学習をしておきましょう。この点をおろそかにすると、複数テキストうんぬん以前のところでつまずいてしまいます。

どう対策すべきか?②

 けれども、やはり〈新傾向〉に向けての対策がゼロでいいわけではありません。繰り返しますが、第1問の論理的文章においては、〔実用的文章、グラフ、図表、写真、会話文など〕が付される可能性が高い。となると、

グラフ、図表、写真、会話文などと文章とを関連づけながら読む

という訓練は、ぜひとも日常的な学習で実践してほしいのですね。そしてそのために、おそらく最も使いやすいものが、新聞記事になります。新聞記事には、その文章をより正確に理解するために必要な様々な資料――グラフ、図表、写真、年表など――が付されているものが毎日必ず掲載されています。それを一日1本でいいので、しっかりと読み解いておきたい。例えば、

「記事には『世論の多くは新型コロナ再拡大が心配』、ってあるけれど本当にそうなのかな? あ、統計のグラフが付いてるじゃん。どれどれ……うわ。『大いに心配』が45%で、「ある程度心配」が47%! これは確かに、世論の多くが心配していると言えるなぁ…」
  (世論調査の数値は、2020年5月25日「朝日新聞」3面の記事による)

などと、添付されている資料と文章の内容をしっかりと照らし合わせ、関連づけながら理解する、といった読み方になりますね。現時点からこうした訓練を積んでおくことができると、論理的文章において〔1本のメインとなる評論文+実用的文章、グラフ、図表、写真、会話文など〕というパターンの問題が出題されたとき、有利に戦いを進めることができるはずです。

 もう一つ、今から実践すべき、論理的文章における〈新傾向〉問題の対策に、法律系の文章に読み慣れる、という訓練があります。
 ここで最も威力を発揮するのが、おそらく、高校『政治経済』の教科書
 法律系の文章は、文体も固く、語彙も抽象的で、何より一文が異常なほどに長く、かつ、独特の言い回しを用いたりするので、正直にいって非常に読み取りづらい。しかしながら『政治経済』の教科書なら、その法律系の文章を、それを理解するうえで大切な知識や考え方と一緒に引用してくれている。もちろん、高校生や受験生が理解できるように。さらに言えばそこには、グラフや図表なども添付されているので、共通テスト現代文における論理的文章の対策に、まさにうってつけなんですよね。これを利用しない手はありません。

 なお、文学的文章の対策については、現時点では、先ほど言及した、

・文章全体の論やストーリーの展開を整理する
・論理的な文章なら主張を、文学的な文章なら心情を整理する
・未知の語句については辞書で意味を調べ、「意味調べノート」にまとめる

という点を実践しておいてくれれば大丈夫です。センター試験に引き続き共通テストの文学的文章でも、おそらく語彙の問題は出題される可能性が高いので、「意味調べノート」の作成は、特に力を入れてください。小説に登場する語彙や表現は、心情把握のカギになることも多々あります。

どう対策すべきか?③

 もちろん、下半期に入ったら、複数テキスト型問題を数多くこなしていくことが大切になります。やはり、形式への慣れというのは必要ですから。しかしながら共通テストについては、上に添付したプレテスト以外に、"過去問"が存在しない。となるとここは、市販の対策本を利用してもらう、ということになります。特に文学的文章の複数テキスト型問題については、それを使って対策するしか方法はありません。宣伝になってしまい申し訳ないのですが、僕も以下の対策本を出版しておりますので、お読みいただけると幸いです。  

 2回実施されたプレテストのすべての大問と設問について、紙幅の許すかぎり詳しく分析しています。
 また、これらプレテストや他のサンプル問題、および大学入試センター発表の資料、そして学習指導要領の解説などを分析し、完全オリジナルの予想問題を計4本収録しております。もちろん、詳細な解説付きです。

最後に

 もう一度、前半に引用した大学入試センターの公表している資料を参照してみましょう。

問題の作成に当たっては、⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。
(「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針 令和2年1⽉29⽇」より抜粋)

 実は、先ほどはあえて不問に付しておいたのですが、こちらの資料、かなり曖昧な文言になっていることに気づいた人もいるかもしれません。確かに「異なる種類や分野の⽂章などを組み合わせた、複数の題材による問題」の検討については明言しているのですが、そこに、「を含めて検討する。」とあるのがとても厄介な事態を出来させます。それは、

「を含めて検討する」とある以上、複数テキストはあくまで検討候補のうちの一つで、実はこれまで通りの「⼤問ごとに⼀つの題材で問題を作成する」というパターンの出題もないわけではない!

ということです。
 となると、ここまでまとめてきたような対策を実践していったのに、実際にはオーソドックスな問題しか出題されなかったという事態も、可能性としてあり得るわけですね。
 こうした話をすると、「えー……結果として出題されないなら、対策なんて無意味じゃん……」とモチベーションが下がってしまう人もいるかもしれません。
 でも、それはまったく不安に思う必要はありません。
 まず、

・文章全体の論やストーリーの展開を整理する
・論理的な文章なら主張を、文学的な文章なら心情を整理する
・未知の語句については辞書で意味を調べ、「意味調べノート」にまとめる

という勉強法については、これは共通テストのみならず、国公立・私立に向けたあらゆる現代文学習につながりますから、まったく問題ありません。
 そして、共通テストに特化した対策としての、「新聞記事」や「政治経済」の教科書についても、まず「新聞記事」で時事ネタに触れておくことは現代社会論を扱う文章を読むうえで大いに有効な対策となりますし、あるいは「政治経済」の学習は、近年の入試評論文・小論文に頻出する語彙や背景知識の習得に直結します。
 ちなみに、またまた宣伝で恐縮ですが、僕の書いた対策本の予想問題も、一般入試に向けた対策としてもぜひとも読んでおきたい頻出テーマや知識を扱った文章をメインに作成しました。
 以上を踏まえるなら、要するに、

ここに紹介した勉強法は、実際の共通テストが複数テキストという新傾向を反映したものになろうが、これまで通りの出題になろうが、どちらに転んでも有意味なものとなる

のですね。この点だけは、最後に強調しておきたいと思います。

 政治や大人の思惑もからみ、共通テスト自体の内容や先行きが不透明であるのみならず、ここにきてのコロナ禍……高校3年生や受験生の皆さんは、さぞ不安なことと思います。
 そんな皆さんの思いを少しでも解消することができればと願い、本稿をしたためました。本当に微力ではありますが、これからも、できるかぎりのサポートをしていきたく思います。この難局、ともに乗り切っていきましょう。


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