ブンガクのことば【0106】
蛇の話をしようかしら。その四、五日前の午後に、近所の子供たちが、お庭の垣の竹藪から、蛇の卵を十ばかり見つけて来たのである。
〜太宰治「斜陽」より〜
「斜陽」は「かず子」という女性の一人称語りの小説である。それゆえ、その語りについては、いわゆる役割語…その言い回しが、発話者の社会的属性を表すような叙述が頻出する。引用の箇所で言うなら、「蛇の話をしようかしら」の「かしら」が、"女性"という属性を表す記号となっている…というように(もちろん、実際には「かしら」は女性の使用に限定