映画『トレーニング・デイ』を観た感想

『トレーニング・デイ』

★★★★★

「イコライザー」を見たせいで、

同じアントワン・フークワ監督の本作を見たくなって見ました。

1度みたことがあって、その時も面白いと思ったので…。


あらすじは「麻薬捜査官としての勤務初日、ベテラン捜査官にいろはを教わる主人公が、その過酷な世界とそれと対峙する捜査官の在り方の現実に直面する」といったところでしょうか。


一番のウリはなんといってもベテラン刑事の強烈なキャラクターでしょう。

捜査官とは言え麻薬捜査では潜入捜査や情報屋、ギャングとのコネクションが大切とのことで、自身もギャング風の出で立ち。行動も大胆不敵にして、必要とあらば平気でルールを破ります。

しかし言葉には説得力があり、結果もしっかり出す(多分)。

怒ったり褒めたりを使い分けて常に主導権を握り人の上に立つ、いわばカリスマ。ちょっとダーティなカリスマです。好きなキャラです。


しかしあまりにダーティすぎて、視聴者は主人公とともに困惑します。

麻薬の味を覚えさせたり、ギャングを手下に使ったり、

犯罪者をイジメる際の楽しそうな顔ときたら…。

取り締まる側と取り締まられる側の垣根が曖昧に思えてくる。

どこまでが本当にこの業界の常識なのか…?

ルールを破ることを良しとしない正義漢の主人公は戸惑います。

しかし彼は同時に出世欲もある、元アメフト選手の野心的な若者なのです。

(この設定がうまいですね。ただの堅物ならついていこうかと悩まないでしょう。)

この力強くかっこいい、しかも自分を認めてくれているっぽい実力者に、

はたしてついて行っていいものか?

勤務初日の「試用期間」という右も左もわからない状況がうまく作用していて、

派手なアクションは少ないもののずっと緊張感が張り詰めていて目が離せません。

何かの僅かなサインを見逃して、選択を誤ればきっと後悔することになる…。

そんな気がしてしまうのです。


そんなベテラン捜査官ですが、昔はどうも主人公のように潔癖な正義漢で、

犯罪の撲滅に情熱を持っていたようなのです。

しかし作中でそれはほとんど語られません。

多分主人公に「昔の自分を思い出すよ」とかなんとか、言っただけだと思います。

この小出しなのもすごく良いです。

なんのエピソードも語られないことで、逆に強く印象に残ります。

ああ、彼も昔は…と。

特典映像の未公開シーンをみると、実際に昔、捜査官になりたての頃に味わった挫折について語る結構長いシーンがカットされていました。

語られるエピソードもいいのですが、カットする采配はすごい。

無駄がなくキレのある演出です。


ストリート出身の監督がこだわってリアルを追求したギャングの世界も見ものです。

主人公が危機に直面したとき、そのリアルさ故なのか

「自分がこんな状況になったらどうしよう…」と考えてしまい怖かったです。

どう考えてもどうしようもないです。死にます。

日本にもああいうのがいるのでしょうか。

個人的には下手なグロやホラーよりずっと怖いです。


これまでヒーロー役のイメージが強かったデンゼル・ワシントンがダーティーな役を演じたことでも話題だったそうですが、

怖くて悪くて知的で、すごくはまり役でした。Y.D.S(やっぱりデンゼルすごい)


他にも有名ラッパーが脇役として出ていて、

そっち方面はほとんど知らないのですが

スヌープドッグの演技がよかったです。

なんで演技もうまいんだろう。

英語ネイティブの方の評価も知りたいところです。

字幕で見てて「この人演技下手だなぁ」とか思うことってほぼないのですが。

関係ないですが古畑任三郎とかユンケルのCM見ると

イチローの演技が上手くていつも笑ってしまう。



ではまた。


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