「金融AI成功パターン」を読んで、また保険APIハッカソンなどからも見る日本での金融イノベーション前進の形「共創」
2月23日発売、一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)による「金融AI成功パターン」早速読みました。
この本は金融でのデータ活用やAI活用の面でとても素晴らしいヒントを提供してくれるが、さらにその一つ上のレイヤー「金融でのイノベーションの形」にもヒントを提供してくれている。そして今週開催されたProtosure社、FINOLAB共催の埋込型保険APIハッカソンも同じヒントを提供してくれているのでそのような領域を探ってみたい。
「金融AI成功パターン」の本が可能にする業界の底上げ
こちらの本の著者である金融データ活用推進協会(FDUA)であるが「金融データで人と組織の可能性をアップデートしよう」というミッションと共に設立された一般社団法人であるが、金融機関とAIスタートアップなど含め2022年4月設立からすでに110社以上(金融機関だけでも60社以上!!)を抱えるいまや一大業界組織である。
またこちらの本なるべく多くの人たちに読んで欲しいので、ここで内容について深く書くことはしないが、本の説明にもある執筆者のリストがこちら。
ひたすらハンパない企業達なのである。本の中ではこのハンパない企業達が
・データ活用をした事例
・かなり詳細な考え方とステップ
・AIのモデリングや運用のイメージ
・注意点、苦労話
などを結構詳細に話してくれている。
そして並行して金融データ活用推進協会(FDUA)はデータ分析コンペティション「第1回 金融データ活用チャレンジ」も開催している。
そしてこの本や金融データ活用チャレンジが起こしていることはデータ活用、AI活用のエリアでの業界の壮大な底上げである。
本で多数の業種ごと、ユースケースごとの事例とそこへ至るステップを提供することにより、各金融機関が内製化されたAIエンジニアなどがいないもしくは少ない金融機関でも
・データ活用最初はどのようなユースケース見るべきだろう?
・データ活用、AI活用ってどのようにスタートするのだろう?
などの一番最初のやるかやらないかの検討を白紙からするのではなく、前例や自分達がどこからスタートしたいかのヒントを提供することにより、「やってみたいかも?」ぐらいのゾーンにいる人達でも色々な新しいことをスタートするのが難しい金融機関のような組織にいても、スタートするために必要な企画書などにも書ける情報を提供してくれている。
そして金融データ活用チャレンジのようなハンズオンで実際の技術に触れる機会を提供することにより、AIエンジニアはもちろんのこと技術職でない人達にもデータ分析がどのように動いているのか見せることによりスタートしたあとのステップもイメージしやすいようになっている。
この「底上げ」であるが、なぜそれをしないといけないのかといえば金融業界で各社(もしくは各社の中の一部門であっても)が色々なデータ活用のスタートすらできないのであれば、それは業界としての問題だという認識である。業界自体がデータ分析などのエリアである程度先進的な技術などを使えていなければ
・面白い仕事を創出することできず
・対面や紙などにたよるマニュアルな作業が多い業界になり
・優秀な人材を雇うことが難しくなり
業界として廃れてしまうという個社の問題ではなく大きな業界ごとの問題となる。その認識があればデータ活用を検討・スタートするステップの部分というのは「非競争領域」と定義してしまい、そこのノウハウは共有してしまい業界としてもっと簡単にスタートできる形を作る。そのレイヤーで競うのではなく、データ活用が可能にするさらに上のプロダクトのレイヤーで業界は競争をすれば良い、といったイメージである。
である。
埋込型保険APIハッカソン
また時を同じくして2月17日~24日まではProtosure Japan社とFINOLAB共催で埋め込み型保険APIハッカソンが開催されていた。
こちらのハッカソン「日本で消費者の保険体験向上に貢献する埋込型保険があまり普及していない」という業界の問題に対しProtosure Japan社がノーコードプラットフォームとAPIを提供し、オープンイノベーションによる新規ビジネス創造を目的としたコミュニティFINOLABとタッグで、エンジニア・非エンジニアどちらも組込型保険の可能性と技術的入り口を体験できるイベントになっていた。
また自分の所属する保険業界での協創を推進する業界横断の有志コミュニティのGuardTechもこちらのハッカソンの後援をしていたので、ハッカソンのプレイベント(2月1日)「保険はサービスに溶け込めるのか? ~ 組込型保険の現在地と今後の可能性~」でも「Community Inter-connect~コミュニティを繋いでイノベーションを加速せよ!~」のセッションでGuardTech代表温水さん、住友商事 MIRAI LAB PALETTE 鎌北さんにも登壇していただき、モデレーターを務めさせていただいております。
そして2月24日(金)夜には各チームの発表会がFINOLABで開催され、さらにはMIRAI LAB PALETTEではライブビューイングイベント、YouTubeでも配信、そしてツイッターでも #保険APIハッカソン で楽しそうな投稿がたくさん出てくる。そして各賞受賞チーム・作品は以下(おめでとうございます!)
■最優秀賞:Team Irreplaceable
作品名「連絡帳アプリに埋め込む!こどもお迎え保険」
■優秀賞:住友生命 (チーム: ナニワの妻ヲタ救い隊)
作品名「mote 〜モートゥ〜」
■特別賞:TEAM DAY1
作品名「あんしんソーシャルプロテクション〜損害賠償責任保険・費用保険」
■審査員賞:Critical Thinking Crew作品名「ペットの幸せを守る保険 HapiNex」の
僕もプレゼンを拝見したがプレゼンターすべて良くビジネスモデルも考えられている上に、さすがProtosure Japan社様のノーコードのプラットフォームとAPIが整えられたということあり、1週間でアイデアから作ったと思えない完成度のデモなどが披露されていた。
大手保険会社の面々も参加し、大手保険会社を審査員に抱えこちらも「日本で消費者の保険体験向上に貢献する埋込型保険があまり普及していない」問う問題に対し
・埋込型保険のアイデアの共有、自分でもアイデア出しに挑戦
・アイデアが出てきたあとのビジネスモデル検討や、テクノロジー的な繋ぎこみなども実践
などの機会を提供することにより
そしてそのようなアイデア出しや最初のプロトタイプ作りなどを業界として今までより多くの人が簡単にできるようにすることにより、それよりも上のレイヤーで各社競争をする、といったイメージである。
金融でイノベーションを阻害する要因と日本的な解
さて、2つの取り組みで共通の「非競争領域」の定義、というものが出てきたがここには大きなヒントがあると思われる。金融業界は他の業界と比べても重厚なセキュリティやコンプライアンスのニーズや壁がありイノベーションを起こすのは大変な業界であると言われている。さらに自分の立場上、日本の金融業界だけでなく世界の金融業界とも一緒に仕事をするのでそこから見えている日本の金融の固有な側面
など日本の金融でイノベーションの阻害をする要因は多くある。ただ日本の金融の固有な側面というのは何も短所だけではない。
という長所がある。イベントなどで人と偶然会う機会はとても多いし、何だったら道端やスタバでも人に偶然会うくらいだ。日本だけを見ているとこちらの長所気が付かないかもしれないが、例えば米国と比べれば
ととても簡単に集まれる距離でもないし、偶然スタバで会って知り合いになっている可能性などもあまり高くないのである。
そのような日本の金融の長所を利用しない手はない。業界で集まり、「非競争領域」を定義していろいろな無駄を減らして業界の前進を進めるのが金融のイノベーションを進める上で日本的な解なのである。ドロ沼の中でオリンピックの100m走競技をしても何も楽しくなくツラいだけである。せっかくならきれいな陸上競技場を整備するところまでは「非競争領域」と定義し、きれいなグラウンドの上で(上のレイヤーで)競争をするべきなのである。
上の二つの取り組みを合わせただけでも業界のものすごいドロの部分が整備されて綺麗なグラウンドになるという強い希望を感じる。
何を隠そう自分達もSymphonyのプラットフォームを活用して金融でのコミュニケーションや、情報連携、業務の自動化などのテクノロジーのレイヤーなどを「非競争領域」と定義して進めているのである程度のポジショントークはあるものの、この「非競争領域」を定義して進める「共創」が日本の金融でイノベーションを進める鍵の一つであることは強く信じている。
(あとがき)フィードバックも金融業界の効率化などの仲間も募集しております
いかがだったでしょうか?是非このnoteへのフィードバックも聞きたいし、こんな目線での金融業界の効率化など一緒に仕事をするパートナー企業や個人募集しております。
意見交換をしたい、一緒に仕事をしたいなどお声がけしていただければとても嬉しいです。SymphonyでGen Ueharaまでメッセージを送っていただいてもかまわないし、こちらどちらからコメントでもフォローもよろしくお願いいたします。
・ツイッター:@gen0707(フォローしていただいたら感激です)
・LinkedIn:Gen Uehara(是非コメントつきでコネクションリクエストお送りください)
・Eight:上原 玄之(コメント付きで名刺交換大歓迎です)
・Facebookも同じ名前でいます。
では楽しい世界をみんなで頑張って築き上げましょう!