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君と探した場所、未だ見ぬ翼

はじめに


 ニュースでセンセーショナルに取り上げられている行き場の無い若者たちが集うトー横、グリ下、ドン横。居場所を無くした若者たちは、緩くコミュニティを作り助け合いながらも、将来への絶望からオーバードーズや犯罪、死へと向かっていきます。
 残念ながら、報道ではまるで他人事の様に、家庭の問題や監視カメラ・警察の巡回等の対策にスポットが当たるのみです。最悪なのは、居場所の閉鎖に向かう様な流れで、まるで流行を終わらせるように収束するかの様な伝え方です。

 2021年2月に孤独・孤立担当大臣が設置され、人々のつながりに関する基礎調査が行われました。結果は、全世代で繋がりが希薄化していると言う予想された物でしたが、「孤立・孤独感がある:しばしばある・常にある」が20~40歳までが圧倒的に多く、70~80歳が少ないという世代間格差が予想外で、高齢者よりも若者の方が孤立・孤独感を感じているのです。若い世代は、特に人間形成の重要な時期をコロナ禍で過ごし、人間関係を形成する力に障害が出ています。2023年5月31日 孤独・孤立対策推進法が成立、来年4月に施行されますが、孤独・孤立は社会全体の問題として明記されています。つまり、この問題は国や行政が責任を持たないといけない問題で、孤立・孤独は社会の問題なのです。
 
 私たち個人、家庭は社会を映す鏡です。
 母子家庭で育った主人公の慶一を中心に、家庭内暴力や虐待で追いやられた少年少女達、手を差し伸べるどころか束の間の居場所を無くそうとする社会。少年少女達は、オーバードーズや暴走を繰り返しながら死へと向かっていきます。現代の閉塞感、居場所を求めて彷徨う若者達の声が聞こえる様に、欠陥としての家庭や社会、悲惨な現状も敢えて目を逸らさずに描いていきます。


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