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#10 「一番」へのこだわり

好きな人の「一番」は自分であってほしい。
この欲求は人間なら誰しもがあるものだと思う。

この競争社会に生まれてしまったからだろうか。
僕はこの一番へのこだわりがとても強い。
だからこそ、好きな人の「一番」ではないとわかった瞬間、相手への気持ちが冷めるのと同時に、これまで一番になるために頑張ってきた努力が無駄になるのでは、という、何とも自分勝手な葛藤をしてしまうのだ。

自分には見せない顔や、自分の守備範囲から超えた話題に楽しそうに話しているところを見るとどうしても「あ、負けたな…」と思ってしまう。
彼の好きなものや彼からオススメされたものは、できる限り押さえようとしているが、それでも僕が対応できない土俵で勝負されるとそれはもう負け試合だ。

同性だからこそ、好きな人へのコミュニケーションは積極的にできる部分はある。しかし、だからこそ彼の「友達のうちの一人」という現実を突きつけられたとき、心のなかで何か黒い靄がかかるのだ。
僕の中では「特別」なのに、彼の中ではあくまで「友達」。このギャップに、この現実にいつも突き落とされる。

二番じゃダメなのだ。一番じゃないと。
同性に恋してしまったんだ。
「恋人」なんて大層な奇跡は求めてない。
だけど、せめて「親友」の枠は僕であってほしい。
「結婚式のスピーチ」の役は僕にやらせてほしい。
婚姻届の「仲人」は僕に書かせてほしい。
あなたの人生の「特別」を、なにか一つでも僕に任せてくれないだろうか。
そんなワガママを僕は思い続けてるんだ。

彼とは距離を置こう。
そう誓ってからもうすぐ一ヶ月。
まだ僕のカレンダーには彼との予定がなくなる気配がない。
彼との予定が入ってもいいように空けている日があるくらいには、まだまだ距離を置けないみたいだ。
なんて弱い生き物なのだろうか。

僕といるときより、楽しそうだったなぁ。
あんな声で笑うときもあるんだなぁ。
気を遣わせてたのかなぁ。
あぁ、もう。態度に出すのもダサいのに。

まだまだ恋煩いは治りそうにない。


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