IL速報

爆速報です。国際法を専攻していますが,専門外のことしか書きません。

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最近の記事

東エルサレムを含むパレスチナ被占領地に関するイスラエルの政策および実行から生じる法的帰結に関する勧告的意見(国際司法裁判所,2024年7月19日)

恒例の速報ですが,いつも通り速度だけを追い求めて精確性を犠牲にしておりますので,意見の本文(https://www.icj-cij.org/case/186)も併せてご確認ください。 では,以下要約です。 2022年12月30日,国連総会が決議A/RES/77/247を採択し,その18段落で次のように決定しました。 勧告的意見の要請は,2023年1月17日に国連事務総長よりICJに書簡で送付され,19日に登録されました。 Ⅰ 管轄権・拒否の裁量(Discretion)裁

    • ガザ地区におけるジェノサイド条約適用事件 仮保全措置命令(2024年3月28日)

      先ほど「ガザ地区におけるジェノサイド条約適用」事件の新たな仮保全措置命令が出されました。 本文はこちらからご覧いただけます: https://www.icj-cij.org/case/192 これに先立つ2023年1月26日の仮保全措置命令では, が命令されておりました。 その後,2024年3月6日に南アフリカは裁判所に対し,ICJ規程41条とICJ規則75条1項・3項,76条に基づいて,さらなる仮保全措置を命令し,および/または1月26日の仮保全措置を修正すること

      • ジェノサイド条約事件先決的抗弁判決(ウクライナ対ロシア,2024年2月2日)

        Ⅰ 背景 前提としてウクライナはロシアに対して,次のような請求をしています。 (a) ロシアの主張に反して,ウクライナ東部ではジェノサイド条約3条に規定されるようなジェノサイド行為は行われていないことを裁定し,宣言すること (b) ロシアは,ウクライナのジェノサイドという誤った主張に基づき,ジェノサイドの防止・処罰を目的とする行動を合法的にとれないと裁定し,宣言すること (c) ロシアがドネツク・ルハンスクの2共和国の独立を承認したことは,ジェノサイドの誤った主張に基づき,

        • テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約およびあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の適用事件(ウクライナ対ロシア)(ICJ,2024年1月31日)

          Ⅰ 一般的背景 本件は,2014年のウクライナ東部・クリミアで発生した事件を受けてウクライナが手続きを開始したものです。 ただし,ICJが管轄権を有しているのは,テロ資金供与防止条約(「ICSFT」)および人種差別撤廃条約(「CERD」)の規定に基づく紛争に限られています。 ICSFTに関して原告は,ロシアがテロ資金供与犯罪の実行を防止・抑制する措置を講じなかったことを主張しています。 CERDに関して原告は,ロシアがCERDの義務に反してクリミア住民に対する人種差別を行

        東エルサレムを含むパレスチナ被占領地に関するイスラエルの政策および実行から生じる法的帰結に関する勧告的意見(国際司法裁判所,2024年7月19日)

        • ガザ地区におけるジェノサイド条約適用事件 仮保全措置命令(2024年3月28日)

        • ジェノサイド条約事件先決的抗弁判決(ウクライナ対ロシア,2024年2月2日)

        • テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約およびあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の適用事件(ウクライナ対ロシア)(ICJ,2024年1月31日)

          慣習国際法の同定における「バクスター・パラドックス」はパラドックスか?

          ①はじめに:国際法学における「パラドックス」「パラドックス」という言葉って,なんかロマンがありますよね。当然の前提と妥当な推論から生じる行き詰まり。こうした盤面に直面するたびに,ふと「おかしいな」と,隠しきれない笑顔でつぶやいてしまうものです。 そんなパラドックスが国際法学でも提唱されました。 ②前提:慣習国際法とは何かまずは「前提」からご説明いたします。 国際法の2つの形式 国際法とは,国際社会において,主に国と国との間で適用される規則のことです。国内社会で「規則

          慣習国際法の同定における「バクスター・パラドックス」はパラドックスか?

          ニカラグア海岸から200海里以遠のニカラグアとコロンビアの間の大陸棚境界画定問題本案判決(ニカラグア対コロンビア、2023年7月13日)メモ

          Ⅰ 事案の概要ニカラグアは、ボゴタ条約31条を管轄権の基礎としてコロンビアとの紛争をICJに付託し、以下の2点について判断を求めました。 〇第1: 2012年11月19日ICJ判決で決定された境界線を超えた部分で、ニカラグアとコロンビアのそれぞれに属する大陸棚区域における、両国間の精確な海洋境界線 〇第2: ニカラグア沿岸から200海里以遠の両国の海洋境界が画定するまでの間に、主張が重複している大陸棚区域、およびその資源利用に関する両国の権利義務を決定する国際法の原則及び規則

          ニカラグア海岸から200海里以遠のニカラグアとコロンビアの間の大陸棚境界画定問題本案判決(ニカラグア対コロンビア、2023年7月13日)メモ

          イラン資産事件ICJ判決の概要(メモ)

          一 事実の概要 本件は,1955年の友好条約が問題とされています。 前提となる事実としては,以下のようなものがあげられております。 ・1979年のイラン革命と同年の在テヘラン米大使館占領事件を受けての,1980年米イラン国交断絶 ・1980年代に生じた米軍殺傷事件により米がイランを「テロ支援国家」として認定 ・米がテロ当事者・テロ支援国家の資産を差押え・執行の対象とする国内法や大統領令を定める ・米裁判所がイランの国や企業を強制執行手続きの対象とする判決を次々に下

          イラン資産事件ICJ判決の概要(メモ)