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創作大賞2024を終えた感想と完結作品の紹介『あなたの知らない永遠』

(8月4日追記)創作大賞2024が一作につき一部門ということを見落としていたので、当記事で紹介している『あなたの知らない永遠』はおそらく読まれる前に落選かと思います。たった今漫画原作部門のタグを外しましたが、おそらくもう遅いでしょう。とはいえ作品自体は完結させておいたので、「エタるんじゃないか?」という不安を抱かせずに読むことができます。綺麗に完結させているので、みなさんぜひ読んでみてください。

少し遅くなりましたが、みなさま作大賞2024お疲れ様でした。結果発表までどうなるかわかりませんが、ひとまず一段落ついたといったところでしょうか。私も三作品でエントリーしていまして、一作は期間内に始めて締め切りまでに完結させるつもりで書いていたのでなかなか大変でした。

さて、そろそろ総括でもしようと思いましたので、ここに簡単なまとめと作品の紹介をしたいと思います。


エントリーしたカテゴリー

まずはエントリーしたカテゴリーですが、三作品すべて漫画原作部門で、うち一作だけファンタジー小説部門にもエントリーしています。

漫画原作部門は三話までですが、ファンタジー小説部門は全話が評価対象とのことで、明言はされていなかったと記憶していますが完結させた方がよいと思い急いで完結させました。突貫工事のため自分でもわかるガバが結構あり修正したい気持ちもあるのですが、念のため結果発表まで編集は控えようと思います。


締め切りを守れることの証明として

ファンタジー小説部門にエントリーした作品を完結まで書いたのにはもう一つ理由があります。それは締め切りを守れることの証明です。

過去すべての納期を守ったかというとそうではないですが、私は基本的に締め切りを守りますし、遅れる場合はたいてい一日で、それもちゃんと雲行きが怪しくなった時点でクライアントに連絡、相談しています。

これは仕事にしたいなら当然の話と言われればその通りです。しかししばしば「絵師やライターは締め切りを守らない一般常識のない人が多い」といった不評も耳にするわけで、それじゃあ「そうでないことの証明」や「少なくともそれが一般常識から外れているのを理解している態度」を示す必要があるなと考えたわけです。コンテストの締め切りなんてそれを示す絶好の機会ですから、他の仕事やプライベートの用事があっても間に合わせますよね。誰でもキャパシティを超える量の仕事を受けたら遅延もあるでしょうけれど、それはそれとして人並みの常識があることを証明しておかないと、自分自身にとって不利ですし、依頼者も発注しにくいですからね。


そんなこんなで悩みに悩んで完結させた作品がこちらです。

地の文が少なくテンポが良いので、1時間ほどで読めるかと思います。


さて、ここからは本作を書いた経緯と本作の見どころをご紹介します。


ファンタジー小説『あなたの知らない永遠』を書いた経緯

まず本作を書いた経緯について書きます。ご興味のある方は本作読了後に読んでみてください。純粋に作品だけ楽しみたい方は飛ばしてください。


先に明かしておくと、本作はかなり前に東方二次創作として書こうと思って結局お蔵入りさせた構想を元に、プロットを組み直して膨らませたものです。なぜお蔵入りにしたかですが、早い話、同人サークルに入るのに前向きになれなかったのが一番の理由ですね。

当時は同人サークルというものをよく知らなかったので某鳩のSNSでそういった集団をいくつか見てみたんですが、面倒なことで揉めているところがちらほらあったり、それに巻き込まれたり、ちょっと性に合わないなと思うところがあって結局やめにしました(大半のサークルは上手くやってるとは思いますが)。それから二度と使うこともないと思って構想をまとめたファイルをPCのデータ整理時に削除したのですが、記憶には残ってまして、それを今回いい機会だからと再構築して出したわけです。


明かしたついでに言うと、東方二次創作として書こうとしていたときの配役と本作のキャラの対応はニナ→霊夢、サラ→魔理沙、ジェシカ→アリスでした。もっとも、その段階では本作の中に出てくる民間伝承『三人娘の悲劇』の部分と和解する部分しか考えていなかったので、本作の主役ステラに当たる人物は存在すらしていませんでした。それではファンタジー小説部門の字数の下限である2万字すら怪しかったので、字数を増やしつつ物語の奥行きを出すために、ニナの生まれ変わりであるステラを生み出しました。仲の悪い二人をステラが仲裁する形にすれば「ステラとジェシカ」「ステラとサラ」「三人全員」「ニナとの思い出」の三通りのくだりが描けますからね。あとは和解の方法をステラが大きく関与する形にして帳尻を合わせれば間に合うだろうと。


それから東方二次創作として考えたものを改変するにあたって、当然ですがキャラの原型は可能な限り残さないようにしました。サラの口調を「だぜ」や「のぜ」にしたら魔理沙そのまんまになるのでもう少し女性らしい口調にし、ジェシカもやはりアリスと同じ雰囲気だと問題なのでかなりお姉さんっぽくし、ニナ(ステラ)に至っては霊夢とは似ても似つかないレベルまで性格を変えました。彼女の性格は、構想を寝かせている間に『美女と野獣』の簡略版で有名なボーモン夫人の短編集を読んだ影響の方が大きいですね。とにかく根が善良でめげない強さを持った主役が書きたかったので、ほぼ一から性格を作り直しました。本作はボーモン夫人の作品に出てくるような性悪な悪役は一切出てきませんけれど。


なおキャラの性別を変更しようかとも考えましたが、このシナリオで三人のうち一人ないし二人を男性にするとコンセプトが全然違ったものになりますし、三人の関係性がかなり気持ち悪くなるのでやめました。全員男性にしてゲイの物語にするのはありだと思いましたが、BLはまったく趣味ではないので書けないですし、硬派なゲイの話は田亀源五郎先生みたいな当事者が書かないとろくな出来にならないと思いやめました。ちなみに私は百合厨でもありません(サラとステラが愛し合う描写をほぼすっ飛ばしているのはそのため)。


『あなたの知らない永遠』の見どころ

本作の見どころはなんと言っても、第一話目のサラとジェシカの険悪な(というかサラがジェシカのことを一方的に嫌っている)状態から、ステラが加わり少しずつ関係を回復していく過程がまずひとつです。それから二人を仲裁する形で奮闘するステラの真っすぐで友人思いな姿がひとつ。そして五千年かけて変化したジェシカの不老不死や永遠に対する考え方がひとつ。といったところです。

本作のテーマの一つは壊れた関係の修復、和解です。そのため前提として親友だった二人が険悪な関係(本作ではサラが一方的にジェシカを嫌っている)を作る必要がありました。
その険悪な関係からの、第一話のサラが凄い剣幕でジェシカを罵倒するシーン。ここはこの世で最も恨んでいるかつての親友とばったり会ったらどんな暴言を吐きたくなるかを想像し、自身もそういう気分になりきって勢いで書いたので、けっこう生々しい暴言になっていると思います。
(このあたりの「その人物になりきって書く」というのは誰しもやると思いますが、私は『ブラックエンジェルズ』の平松伸二先生の自伝漫画『そして僕は外道マンになる』を読んで強く意識するようになりました)

次にステラの奮闘ですが、まず彼女は明るく天真爛漫な性格という前提で、もうとにかく根が善良でまっすぐな、清々しい人物として描いています。物事の善し悪しは一概に決められるものではありませんが、本作は主役である善き人ステラ(及びニナ)が、本質的に善人だが魔が差して間違いを犯してしまった親友ジェシカと、それによって変わってしまった最愛の人サラを、善き行いによって助ける形になっています。なので、そういった善性を好む人にとっては気持ちの良い展開が待っているでしょう。本作はステラを中心とした「善き人の、善き人による、善き人のための物語」なので。

そして作者である私が一番気に入っている結末部分、ジェシカの変化ですが、これは読んでからのお楽しみということでここでは明かさないでおきます。軽くヒントらしきものを書くと、ジェシカはある覚悟を決めたことで自分は孤独ではないという考えに至るのですが、それでも相当な期間、親友であるサラとステラ(ニナ)に会えないんですよ。ジェシカは作中で唯一、人間だった期間がないのですが、私が三人の中で一番人間臭い人物として描いたのがジェシカで、前日譚にあたる民間伝承『三人娘の悲劇』の時点から最終話までで、人として一番精神的に成長したのも彼女なんです。そこに注目していただくと、また少し違った見え方になるかもしれません。


入賞するかどうか冷静に予想してみる

『あなたの知らない永遠』の解説はこれくらいにしましょう。

それで入賞するかどうかですが、まずこの『あなたの知らない永遠』が一番入賞の可能性がないと思います。なぜかというと、現在日本の出版社がこのてのコンテストで求めているファンタジー小説は、おそらく広義の「なろう系」か、その周辺にあたるジャンルだと思われるからです。

それで本作がそれに当たるかというと、かすってすらいません。本作は前述の通り私が過去に東方二次創作として立てた構想が元になっていますし、そもそも扱っているテーマがやや重く、加えてファンタジーの皮を被ったヒューマンドラマを書こうとして書いているので、方向性がまったく違います。しかも主役のステラは善良ときてますから、少なくとも最近のファンタジーを好む人は感情移入もし難いのではないかと思います。サラかジェシカが主役ならともかく。

こういったコンテストは選考側の意図を汲み取るのも入賞するために必要だったりしますから、その点で本作が入賞する可能性は、少なくともファンタジー小説部門では低いでしょう。大幅な加筆とエンターテインメント色を強める修正を加えれば漫画原作の方はわかりませんが、ファンタジー小説として出版社から求められているものではないと思います。

もっとも「宝くじは買わなければ当たらない」という理屈と同じで、エントリーするに越したことはないですから、そりゃエントリーしますよ。本作で描きたいことは一通り書いたので満足していますが、担当編集や(漫画原作としてなら)作画担当と議論しながら多くの層に刺さる形に変える試みも、できるならやってみたいという意欲はあります。一人ではどうしても視野が狭くなりますし、共同作業でより魅力的な作品にできるならぜひ挑戦してみたいと思っています。


まとめ

以上で創作大賞2024の総括と、エントリー作品の一つ『あなたの知らない永遠』の作者解説を終わります。

もしよろしければぜひ読んでみてください。


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