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外部資金を獲得する意味とは

今回は外部資金を獲得する意味について考えてみたいと思います。


外部資金とは

大学教員を含めた研究職に就いていない方はピンとこないかもしれませんので、外部資金について簡単に説明しておきます。

外部資金とは、その名の通り、学外から取得してくる研究資金のことです。

代表例でいえば、科学研究費助成事業(通称:科研費)が挙げられます。

ただ、外部資金というのは科研費だけではなく、民間企業からの助成金なども存在します。
民間からの研究助成金の場合、研究テーマが絞られていることが多いのですが、自分の専門分野がテーマと合致している場合には応募する選択肢が増えることとなります。

基本的に大学では学内研究費という大学から支給される研究費が存在するため、それと区別するために外部資金という呼び方をしていると考えてもらってよいかもしれません。

外部資金を獲得するメリット

①強力な業績となる

外部資金を獲得するということは、研究者として非常に強力な業績となります。

分野にもよるかもしれませんが、多くの分野では、査読論文以上の価値を持っていると言っても過言ではないと思います。

その理由としては、外部資金を獲得するためには厳しい競争を勝ち抜かねばならないからです。

論文の査読も厳しい審査を切り抜けなければならないのですが、外部資金の獲得と決定的に違うのは、「競争」がないということです。

良い論文であれば掲載されるのは当然であり、良い論文が投稿されればされるほど、その学術誌は価値が高くなるため、そこに制限をかける意味はないのです(学会の予算や規模によっては投稿数が限られていることもあるかもしれません)。

そのため、掲載に必要な一定のラインを超えていれば、投稿数に関係なく掲載されるといえます。

一方で、外部資金は競争的資金と呼ばれるように、研究資金を獲得するために他の応募者と競う必要があります。

つまり、査読と違い、研究遂行に必要な一定のラインを超えていたとしても、応募者数や採用数によっては不採用となることも何ら珍しくはないのです。
むしろ、一定のラインを超えているかどうかではなく、選ばれなければ資金を獲得することはできないのです。

そのため、査読論文の投稿よりも外部資金獲得のほうが高い評価を得られることが多く、公募の際の強力な業績となります。

②必然的に研究が進む

資金を獲得するためには、研究成果の公開を含めた研究計画書の提出が求められます。

そして、その研究計画書に則った研究の遂行が必須となります。

もちろん、研究ですのですべてが上手くいくというわけではなく、最終的には予想とは異なる結果となることもあります。
ただ、お金をもらっている手前、自由な研究とは異なり、確実な研究の遂行が必要となり、どのような結果となったのか、論文だけではなく、出資してくれている会社や学会などでの発表が求められることもあります。

縛られているという見方もできますが、確実に研究を進めなければならない状況に身を置くことができますので、必然的に研究が進むこととなります。

そして、お金がありますので、より質の高い研究を進めることができるのも大きなメリットといえます。

③さらなる外部資金獲得へとつながる

①、②の研究が進むということと関連しますが、外部資金を獲得し、質の高い研究の遂行、質の高い論文の執筆ができれば、さらなる外部資金の獲得へとつながっていきます。
お金持ちが投資によってお金をさらに増やしていくような構図といえるかもしれません。

最初の外部資金獲得というのが最も高いハードルかもしれませんが、一度外部資金を獲得できると、その後の外部資金の獲得へとつながっている可能性が高いといえます。

そのため、最初は共同研究などで他の研究者の手を借りながら外部資金を獲得し、ある程度実績が積み重ねられてきたら単独で獲得できるよう挑戦してみるという戦略も一つの方法だといえます。

外部資金を獲得するデメリット

①より確実な研究の遂行が求められる

メリットの②の反面となりますが、外部資金を獲得するということは、お金をもらって研究を行うわけですので、自由に行う研究とは違って、より確実に研究を遂行しなければなりません。

そのため、研究の途中で放り出すということはもちろんタブーであり、予定していた年度内に研究を終わらさなければなりません。

そうなると、仕事の優先順位を考えなくてはならない場面が出てくることもあり、普段の仕事とのバランスをとることが難しくなる場合があります。

大学教員は研究者でもありますので、研究を行うことは当たり前ではあるのですが、授業や学務分掌、外部の仕事や学生指導などを抱えていると、ワークバランスを保つことが難しくなるということも珍しくはありません。

そのため、外部資金を獲得するのはいいものの、自分の首を絞める環境となっている、と考えている先生方のお話も聞いたことがあります。

研究に邁進できる環境であれば願ってもいないことですが、大学の中で研究に特化できる大学はほんの一握りですので、自分のワークバランスを踏まえたうえで研究を進める必要があります。

※人間関係が悪化する可能性がある

これは稀な例かもしれませんが、私の周りでは意外と耳に入ってくることが多いため、取り上げさせていただきます。

外部資金の獲得が人間関係の悪化を招くことがあります。

率直にいうと、「妬み」が原因です。

外部資金をとってくる人は業績もある程度蓄積してきており、研究遂行能力があると判断された人ですので、研究分野に関しては問題ないかと思います。

ただ、教育に力を入れている方や、教育畑から大学教員になられた方にとっては、「もう少し学生指導に力を入れてほしい」、「学外に向けた研究を行うのであれば、まずは学内の問題に取り組んでほしい」、といった声があがることもあるのです。

大学教員は研究者でもありますので、研究を行い、その成果を社会に還元するのは至極真っ当な仕事の一つなのですが、外部資金の獲得について理解が得られないこともあります。

今回は外部資金の獲得についてお話ししました。

結論から言うと、外部資金の獲得は大学教員として目指すべきものであり、一種の矜持でもあると思っています。

自分自身の給料が上がるわけでもなく、研究への責任が重くなることから、実際には負担が増えるだけだと感じてしまうかもしれませんが、「研究者」として名乗るのであれば、獲得したい実績といえます。

科研費はもちろんのこと、民間の競争的研究費にも挑戦してみたいものです。

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