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Schubert: String Quartet in G minor, D.173 講師:ジュリアード四重奏団

プロジェクトQ・第21章 ~ 若いクァルテット、シューベルトに挑戦する
公開マスタークラスを聴きに行ってきましたので、指導内容をレポートします。

10月23日(月)渋谷ホール&スタジオにて
講師:ジュリアード弦楽四重奏団 
受講生:Vn1米岡結姫 / Vn2佐久間基就 / Va島英恵 / Vc金叙賢
受講曲:シューベルト 弦楽四重奏曲 第9番 ト短調 D.173


フレーズの入り、閉じを合わせる

シューベルトは、古典的でモーツァルトみたいだけど、もう少しロマンティックなので、音符がエレガントに始まり、エレガントに閉じています。それを4人同時にやりたいが、ずれてしまっていますね。

Vn1は、旋律であってもソロと思わず、「一緒に踊りましょう」と3人を誘いましょう。

どう弦に触れるか、音の方向、フレーズの着地点などをイメージして、それをあとの3人とも共有できるように、ボディランゲージ(ザッツ)で3人に伝える。

そして発音された音に命を吹き込むのが左手(ビブラート)です。

練習方法
同じ部分を、これまでやったことのない曲想でやってみましょう。
どう弾くかを口では内緒にして、ボディランゲージで伝えられるか、受け取れるかの練習を、曲想を変えながら色々とやってみましょう。

完全に一人になる部分は、自分向けに弾く場所でいい。音色も自由に変えていい。

お客を、別の場所に連れていく方法

お客を別の場所に連れて行きましょう。そのためには、ストーリーを作り、あちこちで思いがけない、意外なレスポンスをする。そうするとお客はもっと聞きたくなります。
変化をつける必要があります。

1. 和音が変わったときの反応のバリエーションを増やしましょう

和音が変わったときの反応(弾き方の変化)のバリエーションをもっと増やしましょう。
譜面が単純なので違いを出すのが難しい曲だけれど、苦労して時間をかけても取り組む必要がある課題です。

右手で違いをつくる:シンプルに弾く。ソフトに弾く。深く押し込むなど。
左手で違いをつくる:ビブラート、音程など。

2. 再現部の扱い

繰り返し、再現部、など同じメロディが出てきますが、前に弾いた時から時間が経って物語は進んでいるので、譜面は同じでも気持ちは必ず変わっていなければいけません。
話というものは、展開していかないと面白くない。

たとえば映画とかで、男女が歩いている → キスした → その後また歩いてる
同じ並んで歩いているのでも、気持ちは違うでしょう?

3. 繰り返しの扱い

2回繰り返している理由はなに?
ともかく、2回やる理由を4人で考えましょう。

エコーになることもある。より強調することもある。

たとえば、普段、誰かと会話をしていると考えてください。
2回繰り返して言う理由はなに?繰り返しをするときは必ず何か変えているはずです。
「結構です」「結構です!」みたいな。「結構です」「結構ですw」とか。
同じことを同じテンションで繰り返してる人がいたら、変人だと感じるはず。

4. 面白い所を見せましょう

面白いところがどこか見えにくいです。
この曲の面白いところはどこですか?

まず、面白いところを見つけて、マークしましょう。
それを、言葉で答えないで、音で見せてみてください。「この音です」と、ピンポイントで。
暖かくするとか、ビブラートでも弓の使い方でもなんでもいい(正解はない)ので。

緊張感があるところがどこか把握しましょう。書いてあるダイナミクスよりも、自分の感性を重視してよい。
譜面がずっとpだったとしても、ずっと平らにpでなくていい。
音量もそうだし、音のテンションとか、ビブラートでも緊張感を表現できます。

5. テンポを変えましょう

スピードを変えることは、ストーリーが客に伝わりやすくするのをとても助けてくれます。
テンポが一定である必要は全くありません。
「走ってる」「焦ってる」と思われずに、お客さんに気付かれないように、テンポを速めたり戻したりする方法を練習をしましょう。

6. 雰囲気を変えましょう

テンポが同一の中でも、椅子に深く腰掛けてリラックスしているのと、前のめりに立ち上がろうとしているのでは、音の向かい方が違いますね。
1つの小節の中でも細かく、音の方向は変化しています。
効果的に表現するには、4人でビブラートの種類を音符ごと、場面ごとに一致させること。
ムードや雰囲気を変えられる方法は、最大限に使っていくべきです。

こういう変化のつけ方は、どんどんやりすぎて、失敗をしてみましょう。
そうしないと、どこがギリギリ最大限に表現できるラインかわからないです。

7. 拍の重みを変えましょう

全ての拍の重要さが、どれも同じということはありえません。

たとえば舞曲が使われている時は、それが「身体的・物理的にどういう踊りなのか」をお客さんに伝えるのが大事。

縦の動きか、横の動きか?
直線的なのか、回ってるのか?など

これは組み合わさって短いスパンでコロコロ変わるので、ストロークの長さ、ビブラートをどうかけるか etc...
それらで予想できない展開を見せていくと、お客はもっと聞きたくなります。

8. 拍を自由にずらしましょう

同じリズムが続く箇所では、タイミングを変えることができます。わざとらしくなく。
まずは情景をイメージしてみます。日曜の朝、スーパーで買い物して楽しいな、とかでもOK。

練習方法
ロマン派の曲では、ビートの幅を思い切って変える練習をしましょう。
やりすぎて失敗するくらいでOKです。それで自由になれます。
思い切ってrit。思い切ってためる。思い切って前に進む。タイミングを思い切って外す。など

9. 意外な和音の扱い

第3楽章

最初の2フレーズで、ハーモニーが予想内のところと、予想外のところはどこですか?
まずそれを4人とも理解しましょう。
そして言葉で答えないで、予想外のところを、音を変えて見せてください。


すんなり進みすぎています。意外な音に対しては、抵抗感が必要。自然ではない所なので。


講師プロフィール

ジュリアード弦楽四重奏団 Juilliard String Quartet

米ジュリアード音楽院教授によるクァルテット
1946年の結成以来今日に至るまで受け継がれる「声」と「魂」

この曲の講師
アレタ・ズラ ヴァイオリン
Areta Zhulla, violin
ロナルド・コープス ヴァイオリン
Ronald Copes, violin

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