記述研究所のテキスト 02
製図試験の攻略法
この言葉は孫氏の兵法の一節です。
敵と自分自身の能力を知ることできれば、争いごとでは常に勝てることを表現しています。
相手を理解することで、自分自身の戦略や行動を決めることの重要性を示しています。
製図試験も自分以外の受験生との争いごとです。
孫氏の兵法は、製図試験にも通じる理論です。
「製図試験」というものを理解することで、自分がどのような準備や勉強方法をするべきかが理解できるはずです。
それでは、記述について学んでいきましょう。
記述の歴史
まずは、記述の歴史を学びます。
記述用にA3解答用紙が用意される形式となったのは平成21年度からです。
それまでは製図用紙に引き出し線で補足事項を記入していました。
構造計算書偽装問題を踏まえ実施された平成21年の建築士試験改革により、試験内容が大幅に変更されました。
試験時間が5時間半から6時間半に1時間延長されました。
さらに、図面だけでは確認できない計画、構造、設備に関する知識を詳細に問うため、記述問題が追加されました。
試験元が求める能力
なお、記述問題を導入するにあたり試験元がどのような能力を求めるのかは、以下の文書を読むことでわかります。
こうして、現在の10問程度の記述が要求されるようになりました。
なお、任意の補足として求められた図的表現(イメージ図)は、令和元年試験からは必須に変更されており、必ず記入することとされましたが、令和5年では一部で任意の補足図の要求が復活しています。
試験元が求める一級建築士像
平成21年の試験改革に先立って発表された文書を紐解くことによって、試験元が求める一級建築士像がわかります。
以上から、「計画の要点等」で求められる能力は、あくまで基本的な能力です。構造、設備に関する知識を有し、専門分化された建築設計を統括する能力を求められています。
記述試験対策で必要とされる構造、設備の知識は基本的なものです。構造設計者、設備設計者のような専門知識は不要です。
実務で必要な知識と試験で必要な知識は異なるということ理解し、自分の知識量、レベルを把握したうえで必要なものだけを勉強しましょう。
製図で必要な3つの力
製図試験では作図力、記述力、エスキスの3つの力が必要とされます。これらの力がバランスよく整った者が合格を勝ち取っていきます。
作図力
作図力は練習を重ねることで、確実に実力が備わります。ただし、漫然と書くだけではなく、一本の線の引き方も考えるようにします。また、次の動作を考えながら進めることで手が止まる時間を減らします。
練習を積み重ねることで、頭で覚えるのではなく、身体に覚え込ませることができます。ここまで来れば、本番の緊張感の中でも迷うことなく書き進めることができます。
記述力
記述力も作図と同様、日々の訓練で実力が備わります。まずは模倣から始め、定型文を覚えます。
その後、どのような問題にも対応できるように応用力をつけ、最終的には自分のプランをアピールできるようにまでなりましょう。
記述力は最も短時間で実力を上げることができます。ぜひ、本テキストで段階を踏みながら実力をつけていきましょう。
エスキス力
エスキス力だけは、努力の量と実力が比例しません。
それゆえに、一番不安を抱いてしまいます。
試験において、エスキスの失敗が不合格に直結します。
エスキスばかりに注力し、作図や記述まで手が回らない受験生は多くいます。
作図は周囲の受験生と比べる機会がある、焦りを感じて練習をしますが、記述は他人と比べる機会がないので、後回しにされがちです。
では、エスキスを失敗する原因は何でしょうか?
エスキス手順は確立できているという前提ですが、設計条件の読み落としと勘違いに一番の原因があり、これらを誘発するのは「あせり」です。
エスキスを失敗しないためには、焦りを生まないように、十分な時間を用意することが重要です。
訓練によって記述、作図にかかる時間を削り、エスキスに充てる時間に余裕を持たせます。