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用語集(設備)

この用語集は製図試験初学者が覚えておくべき記述関係の用語を説明します。「建築計画」「構造」「設備」「環境負荷低減」の4分野を分割して用意します。初めて製図試験を受ける方が覚えておくべき用語を選びましたが、基礎から再確認される方にとっても役立つように詳しく書いています。

この記事は「設備」です。課題発表後、テーマに応じて必要となる用語を追加する予定です。


空調設備

空調設備とは、空気調和設備や換気設備を合わせたものの総称です。空気調和とは、「温度」「湿度」「気流分布」「清浄度」を整えて、室内の環境を快適にすることです。

空気調和の4要素
「温度」
熱源を用いて空気を加温、冷却します
「湿度」 加湿器、除湿器を用いて空気の湿度を調整します
「気流分布」 送風機で空気の流れを作ります
「清浄度」 フィルタを用いて空気に含まれる汚染物質を除去します


・ルームエアコン

空調設備を理解するため、最も身近な家庭用ルームエアコンで説明します。

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冷房運転の場合は、室外機の熱交換器で冷媒が冷やされます。冷媒配管で冷媒が室内機へ運ばれ、室内の熱交換器で室内空気を冷やします。

・部品構成

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【室内機】
フィルター/ 室内のほこりを取り除きます
熱交換器/室内の空気を温め、または冷やします
クロスフローファン/風を起こし空気を吹き出します

【室外機】
熱交換器/冷媒を温め、または冷やします
ファン・モーター/冷媒の熱を放出します
インバーター/モーターの回転数を変えます

室内の熱交換器は熱伝導率の高いアルミ製フィンで構成され、室内空気との接触面積を大きく取った熱交換器の中を通過することで熱が奪われ冷たい空気へと変わります。

空気の流れとしては、クロスフローファンによって室内の空気が循環するだけなので、室内空気は入れ替わりません。このため、別途、換気設備が必要です。


熱源方式

空調方式は、大きく分けて熱源の位置で分かれます。一つの熱源に集中した「中央熱源方式」と、数か所の熱源に分散させた「個別分散熱源方式」に分かれます。

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熱源方式によって大きく二つに分かれます。それぞれの代表的な空調方式は以下のとおりです。製図試験で使いやすい空冷ヒートポンプパッケージ方式から説明していきます。

[中央熱源方式]
単一ダクト方式(定風量型)
単一ダクト方式(変風量型)
ファンコイルユニット方式
[個別分散方式]
空冷ヒートポンプパッケージ方式(天井カセット型)
空冷ヒートポンプパッケージ方式(床置きダクト接続型)
空冷ヒートポンプパッケージ方式(天井隠蔽ダクト接続型)


空冷ヒートポンプパッケージ方式


製図試験で個別空調が必要となる場合に、最も多く選ばれる方式は「空冷ヒートポンプパッケージ方式」です。この方式は先に説明した家庭用ルームエアコンの規模が大きくなったもので、業務用ルームエアコンを指します。

空冷ヒートポンプパッケージ方式も基本的な機器構成は同じなので、換気機能はありません。換気設備には全熱交換器が多く用いられます。

製図試験での「空冷ヒートポンプパッケージ方式」は、居室にて個別空調が必要な場合の「天井カセット型」、天井の高い大空間で高い吹出能力が必要な場合の「床置きダクト接続型」、吹抜けで用いられる「天井隠蔽ダクト接続型」の3種類が多く使われます。


・天井カセット型

屋外の空冷ヒートポンプパッケージ室外機から、各室の室内機に冷媒を介して熱供給する空調方式です。

ヒートポンプを用いて、冷媒に熱を与えたり取り、除いたりします。ヒートポンプは外気が持っているもともとの熱エネルギーを利用するので、省エネルギー性に優れています。

室内機は室内の空気を吸って送風するため換気機能はありませんので、別途、換気設備が必要です。個別制御が容易で省エネルギー性に優れます。個別制御に優れるため、客室、研修室等の比較的小さな部屋や、運営時間の異なる店舗等に採用されます。

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天井カセット型では、ビルマルチと呼ばれる1台の室外機に10台程度までの室内機を接続する方式がよく用いられます。

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室外機/屋外設置(地上、屋上)
室内機/天井裏設置
シャフト/PS要(DS不要)
換気設備/別途必要
特徴/省エネ、個別制御性良好

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