一級建築士記述研究所はじめました
この記事は有料記事でしたが、記事を書いてから時間が経過したため無料で全文が読めるように変更しました。
はじめまして、記述研究所で研究員をしています「源」です。令和3年度一級建築士合格にむけての、お手伝いする記事を書いていきますので、よろしくお願いします。
一級建築士記述研究所とは
当研究所は、一級建築士製図試験の「計画の要点等」いわゆる記述問題に焦点を絞った試験対策をサイトに書いています。令和2年度の対策として、2019年11月から始め2020年10月までの約1年間に400本弱の記事をアップしてきました。
ただ単に例文を覚えるだけではなく、なぜそのように書くのかについて、周辺知識や文章の構造などの解説を加えて説明していきます。また、設問条件のイラストを加えることで、内容を頭に浮かべやすくなるように工夫しています。
昨年度は、3人で記事を書いていましたが、今年からは諸事情がありまして一人で書くこととなりました。当初から、基本コンセプトは私が決めていましたので、研究所自体の方向性に変更はありません。
現在、サイトでは雰囲気がつかめる程度の記事を残していますので、メニューからホームやカテゴリーなどをご覧ください。
変更点としては、以前の記事が三人の話し合いで決めていたものから、私一人の考えになった点です。平均的な意見から、個人の偏った意見になっているかもしれません。そこは、皆さんの意見を聞きながら軌道修正していければと思っています。
また、一人の作業ですので更新頻度は落ちます。更新頻度については、昨年のペースが速く追いつけないとの意見もいただきましたので、濃い内容のものをゆっくり更新していこうと思います。
記述研究所のコンセプト
まず、当研究所の基本コンセプトです。
「記述問題の対策は解答例を暗記するだけ」との意見をよくみかけます。例文では、難解な言い回しや難しい専門用語が使われ、記憶に残りにくいものが多いと感じます。
当研究所では、誰でも容易に理解でき、記憶に残りやすく、読み手に伝わりやすいような文章を目指しています。
具体的には、難しい言葉、用語は使わないようにし、初めて読んだ中学生が理解できる文章をと考えています。かんたんに理解できる文章は、記憶にも残りやすいものとなります。
時には稚拙な言い回しと感じられる部分があるかもしれませんが、読み手に伝わらないことや、自分の記憶に残らない文章になるよりはマシであるとして採用しています。
また、近年の記述問題ではイメージ図が必須とされ、重要な部分を占めています。このため、記事における解説や補足説明のための図は、極力、手書きのものを採用しています。
普段から解答用イメージ図に多く触れておくことで、どのような設問に関してもイメージ図が浮かんでくるように配慮しています。イメージ図解答時の訓練として、書き込みを最小限に抑えつつ、短時間で伝わる図を書くようにしています。
記述問題に答えるためには、少なくとも一度は頭に入れたことがある知識でなければなりません。全く知らないことは、どれだけ考えても浮かんではこないからです。
当研究所では、記憶に残りやすいように図を添えるだけではなく、知識を体型的に整理することで、本試験における必要な場面で思い出せることを目指しています。
記述問題とは
一級建築士試験を受験する方は、ほとんどが理系出身です。文章に対しては少なからず苦手意識があり、日常的に文章を書くことが少ない方が多いと思います。
文章を書くことに慣れていないと、記述問題の解答には時間がかかりがちになります。時間制約がある試験では、無駄な時間はかけたくありません。また、時間をかけて考えたとしても、伝わらない文章を書くこととなってしまいます。
記述で必要なことは、簡潔な言葉を使って、自分の考えを正確に読み手に伝えることです。当研究所では、文章になじみの少ない人でも伝わる文章を書けるよう、文章に慣れることや書く理論をひとつずつ説明しながら進めていきます。
試験における記述問題は、いわば建築主である試験元が知りたいことに答えることです。試験元が要望する「設計条件」に沿ったものを、どのように工夫しているかを説明していきます。
文章で解答するのではなく、建築主と話していると思って考えると、もう少しスラスラと答えることができると思います。どうしても、文章にする段階で構えてしまうのではないでしょうか。
建築士試験の記述問題は、例文を暗記することで対応できるといわれます。このことは、半分は当たっています。確かに、暗記したことをそのまま書けばよいだけの問題は存在します。
しかし、覚えた設問と全く同じものばかりではなく、多少なりとも変わった聞き方をしてくるものも多くあります。
そのような問題にも対応できるように、当研究所では、理論に基づいて解答できるように整理していきます。
例文を覚えるだけではなく、周辺知識を整理するとともに、解法に沿って答えられることを目指していきます。
記述の印象を上げるポイントは
記述問題に解答するとき、以下の7つのポイントに気を付けると解答が変わります。
①文字は丁寧に書く
②文体を統一する
③設問に対する解答であるかを確認する
④主語と述語の関係を確認する
⑤文末を「…と思います、思われる」としない
⑥ 一文は短くする
⑦図面との整合を確認する
①文字は丁寧に書く
文字は訓練することで、速く書いても丁寧に書いているように見せることができます。試験日までは意識的に手書き慣れることで書くための基礎体力を身につけましょう。
読みやすい文字のために気を付けたいことは、漢字と平仮名の字の大きさです。漢字を大きめに、平仮名を一回り小さく書くと全体のバランスが良くなり、読みやすい文となります。
②文体を統一する
解答の文体は全体を通して統一する必要があります。文末が統一されていないと、説得力が欠ける文章になってしまいます。試験では「です、ます体」または「だ、である体」のどちらかで統一しましょう。
受験生の多くは「である体」を使用しています。これは自分の意見を主張する場合である「試験」や「論文」においては、「である体」の説得力が増すためです。
③設問に対する解答であるかを確認する
単純な勘違いも含め、問われている内容に答えていない場合がよくあります。今一度、何を聞かれているのかを確認しながら答えを見直すクセを付けます。設問に対して解答がズレている場合の例です。
設問例「エントランスホールへのアクセスについて記述しなさい」
解答例「①受付から見える位置に計画し、セキュリティに配慮した」、「②建物の南側に計画し、明るい雰囲気とした」
この設問の場合に求められている解答はアクセスです。
利用者が施設外部からエントランスホールへ至るまでの経路や外部からの視認性、または、施設内の階段やエレベーターとの位置関係、同一階の他の部屋からのアクセスについて記述することです。
解答例で示すように、今まで勉強した内容に似たような問題があると勘違いし、アクセスについて問われているにもかかわらず、①セキュリティや②室の配置を答えてしまうことがあります。
このような勘違いがないように、勉強段階においては、自分の解答が設問にしっかり答えることができているかを確認するようにしましょう。
④主語と述語の関係を確認する
主語と述語が呼応していない場合が見受けられます。正しい関係であれば、主語と述語だけを抜き出して一つの文章が成立します。
途中の修飾語が多くなるあまり、主語と述語の関係がずれてしまうことがありますので、確認が必要です。
また、4W1Hを意識して書くことも必要です。こちらの記事を参照してください。
⑤文末を「…と思います、思われる」としない
記述では、設計者である「あなた」が考えたことを記述するため「…と思います。」のような感想を書くことは適切ではありません。
あくまで、自分が考えたことなので「…と想定した…」と表現します。
また、「…と思われる…」という表現では、他人事な表現で、自信がないと判断されるため「…である…」と断定します。
⑥一文は短くする
一文の文字数は60文字までとします。これは、人が流れを追いながらサラッと読める文字数には限度があり、60文字程度とされているからです。
これより長い場合、読み返さないと全体を理解できない文になってしまう可能性があります。
採点者は多くの解答を採点するため、一読で理解できない解答を低評価とする可能性があります。また、一つの文には一つの項目のみ書き欲張らないようにします。
⑦図面との整合を確認する
記述の解答が終わったらエスキスとの整合を確認します。
例えば、計画についての設問で方角や位置について答えている場合、方角を間違えていることはよくあります。
また、想定していたキーワードを使うことに引っ張られ、設計条件に当てはまっていないこともあります。
記述は図面で表しきれない部分を補足するものなので、図面と整合を確認しましょう。
勉強方法の選択
限られた時間の中でやらなければならない試験勉強です。無駄な時間を使っている余裕はありませんので、どのように勉強を進めるのかは重要な選択となります。
まず、私の経験をお伝えします。
学科合格時の初年度は完全に独学で製図試験を受けました。資格学校や通信に頼らず、市販本だけで挑みました。
2級建築士試験を完全独学で突破した経験から、とりあえず独学でやってみようという軽い気持ちでした。当時は今ほどネット情報はありませんでしたし、周囲に建築士がいなかったため何のノウハウもなしに受験しています。結果はランクⅡの不合格でした。
2年目は資格学校の学科合格発表後に始まるコースへ通いました。初年度とは違う情報の充実ぶりに感心しながら勉強を進め、なんとか合格することができました。
無駄な時間を過ごさないためにも、合格の可能性が最大限上がるように勉強方法を選択すべきと感じました。
現在は、資格学校の長期コース、短期コース、通信コース、また、ネット上の通信添削など、様々な選択肢が存在します。
しかしながら、経済的負担は大きいのでその点も考慮しながら選択しなくてはなりません。
現在、世の中の状況は大きく変わっています。資格学校の授業形態も変更され、WEB主体であったり、生徒同士が意見を交換する機会も減少していると思います。
資格学校の通信コースを選択することで、情報量と経済負担のバランスが取れるのではないかと考えます。
ただ、通学の最大のメリットである、質問に即時に答えてくれる講師や、他の受験生の図面を見ること、対面での情報交換などは、別の手段では難しいので悩みどころです。
また、通信コースは勉強の強制力が少ないので、自己コントロールができる方でないと続けることができません。その点を十分に見極めて、決定してください。
勉強の進め方
現在、製図試験に向けて勉強の進め方を考えている方は多いと思います。
昨年度、ブログを通して受験生と交流している中で、多くの人が後回しにして困った3つのことに気付きました。
①図面、記述を速くきれいに書く技術が足りない
②法律知識が足りない
③設備関係の知識が足りない
まずは、製図勉強の初期にこれらの対策をしておくと、試験直前に焦ることがありません。
受験生の多くは、エスキスを不安に感じて多くの時間を割いてしまします。勉強を開始した時期から、ずっとエスキスばかりをやり続けている場合があります。
しかし、エスキス方法は高層の基準階型と低層型では考え方が異なりますし、建物の使用用途でも手法は異なります。
このため、課題発表までは手順の確認や、汎用性のあるものにとどめておくことが得策と考えます。
エスキスにこだわるよりも、下記の3点を初期に強化することで合格可能性を上げておくべきです。それでは個別に説明します。
①図面、記述を速くきれいに書く
製図試験は人が採点します。学科試験はマークシートによって機械的に採点され、解答が正解かどうかの判断をするため、人間が介入する余地がありません。
しかしながら、製図試験では、人間が何枚も図面や記述を採点するため、採点者の感情が介入する余地があります。
製図試験の採点は明確な採点基準が存在するはずですが、全く同じ内容が書いてあるものだとしても、きれいな線や文字で書いてあるものの方が有利になることは当たり前です。その判断過程に人が介在しているからには、避けられないことです。
少なくとも、読めない字で書かれたものは、いくら素晴らしい内容であっても、採点者に伝わることはなく、得点することはできません。
製図試験の採点が人によって行われているからには、印象に左右されてしまうことは必然であり、きれいに書いてあるものの方が内容的に優れていると判断されます。
一点といえども合否判定に影響する試験なので、印象による部分もおろそかにすべきではありません。
また、時間制限のある試験なのでスピードも重視しなくてはなりません。図面や記述を書く時間を全体的に短縮することできると、時間的に余裕が生まれるとともに、焦ることが無くなり心の余裕も生まれます。
このことから、まずは、きれいに速く書くスキルを身に着けるようにします。この時期に進める訓練としては、第一に、日頃から手書きに慣れておくことです。
文字は書き慣れることで上手になります。できれば、始めに美文字練習帳などで文字をきれいに書く理論を勉強しておくと、上達の速度が上がると思います。
次に、図面の練習ですが、この時期にやっておくべきことは手順の確認です。まずはトレースから始めればいいのですが、どのような図面を書く時でも、自分なりの手順を確立させることが重要です。
よく出題される横型敷地だけではなく、縦型敷地のものを練習します。さらに、低層階、高層階のどちらも練習し、課題発表でどのようなものが示されたとしても、対応できるようにしておくと万全です。
手順の確立と同様にやっておくべきことはパーツの練習です。階段やトイレなどのパーツはどのような施設でも必要なので、手が勝手に動くくらいで書けるまで練習しましょう。
②製図に必要となる法律知識を備える
近年の製図試験では、法律知識が厳密に問われています。
法律違反はランクⅣに直結しています。製図試験で問われる法律知識の範囲は少ないので、早めに全体を押さえておきます。知識として頭にいれた状態で問題を解くことで、法律知識の理解が進み、知識が定着します。
どの法律を勉強していくかの選択は、試験元が発表している標準解答例が参考になります。記述の解答例はありませんが、図面に受験生の間違いが多く、注意すべき事項が記載されています。
以下のその一例を示します。
延焼のおそれのある部分
最近の試験では、延焼ラインの記入が求められ、延焼のおそれがある部分にある開口部を防火設備としなくてはなりません。
防火区画
階段や昇降路などの竪穴部分や、定められた面積に応じて防火設備で区画します。
道路高さ制限
用途地域、容積率などの条件から、前面道路からの後退距離を考慮しながら道路高さ制限を確認します。
直通階段に至る経路等
避難用の直通階段を2つ設け、居室の最も遠い位置から各階段への歩行距離と重複距離を確認します。
建築物移動等円滑化基準
バリアフリー法の対象となる建築物である場合には、基準への適合が求められます。
③設備の知識を備える
近年の製図試験では、PS、DSの欠落は厳しく採点されます。設備の知識が十分でないと正しく記入できません。
また、記述問題でも設備に関する知識は必ず問われます。設備の知識は、ぜひ、余裕のある時期に進めてください。
基本事項から理解することで、本番の緊張感の中でも迷うことなく設備計画を進めることができるようになります。
以上の3点を強化することで、迷いがなくなり解答時間の短縮ができます。時間的余裕が生まれれば、エスキスにも十分な時間を割くことができ、焦りから生まれる勘違いや、ケアレスミスが減ります。
合格可能性を上げるため、まずは3点を優先的に勉強を進めていただきたいと思います。
受験生の皆さんは図面練習と法律確認を進めていただきたいと思います。当研究所では、以下の通り分野ごとに記事をまとめています。
それでは、今後ともよろしくお願いします。最後まで読んでいただきありがとうございました。