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記述研究所のテキスト 11


用語集

この用語集は、製図試験を初めて受験する方が覚えておくと役立つ記述用語を説明しています。
「建築計画」「構造」「設備」「環境負荷低減」の4分野を分割して用意します。
初めて製図試験を受ける方に向けて書きましたが、基礎から再確認したい方にとっても役立つように詳しく書いています。
また、記述の勉強を進める中で、理解不足だと思った用語があった場合には、辞書的に使い再確認する利用方法をおすすめします。

この記事は「環境負荷低減」です。近年は益々重要になってきている分野です。
早めに基本から押さえておきましょう。


ZEBゼブ

ZEB (net Zero Energy Building)とは、従来の建築物で必要となっていたエネルギー量を、建築計画や設備計画を駆使することで、省エネルギー、創エネルギーにより使用する一次エネルギー量を実質0%以下を目指すという概念です。

ビル、工場、学校、事務所などの大型建物を対象とします。一般住宅向けの施策であるZEH (net Zero Energy House)とは区別されます。

ビルでエネルギー消費の多い、空調、照明、給湯などのエネルギーを削減し、太陽光、風力などの自然エネルギーを利用したエネルギーを創出します。

公共建築でのZEB事例が国土交通省HPにて示されています。参考になりますので見ておきましょう。


再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、石油、石炭、天然ガスなどの化石エネルギーとは異なり、太陽光、風力、地熱などの自然界に存在するエネルギーを指します。特徴として、以下の点があります。

  • 枯渇しない

  • どこにでも存在する

  • 二酸化炭素を排出しない

建物で消費される主なエネルギー(冷暖房、照明・動力、給湯など)を削減するために利用されます。

具体例としては、太陽光発電、各種ヒートポンプ(地中熱、大気熱利用)、太陽熱利用給湯システムなどがあります。


二酸化炭素排出量削減

地球温暖化の対策として、建築分野においても二酸化炭素の排出削減
が求められます。

建築材料による削減

普通ポルトランドセメントに比べ、生成時の二酸化炭素排出量が少ない混合セメントを躯体の一部(基礎、杭など)に使用します。

混合セメントには、高炉セメント(製鉄過程で発生する高炉スラグを混ぜたセメント)やフライアッシュセメント(火力発電過程で発生した微細な石炭灰を混ぜたセメント)があります。

建設発生土を場内利用することで、運搬時に発生する二酸化炭素を削減することができます。

施工段階での削減

施工現場での電力や燃料削減が二酸化炭素排出量削減につながります。具体的には、以下の活動が考えられます。

・照明機器の高効率化、自動点灯、こまめな消灯
・空調温度の適正化
・建設機械の省エネ運転励行(アイドリングストップ、省燃費運転研修)
・低燃費型建設機械の採用


環境負荷低減手法

環境負荷低減とは、建物で消費される主なエネルギー(冷暖房、照明・動力、給湯など)を削減するための手法を指します。

建築設計においてはパッシブデザインアクティブデザインがあり、動力を用いるかによって区別されます。

動力を使わない自然エネルギーを利用するものがパッシブデザイン、動力を用いるものがアクティブデザインになります。


パッシブデザイン

パッシブデザイン[Passive Design]とは[Pssive]が「受動的な」という意味であることから、自然が持っているエネルギーを建築設計手法にて受動的に利用することを指します。動力を必要とせずに快適な環境をつくる方法のことです。

対義語として、機械装置を用いて快適環境を実現する手法をアクティブデザインといいます。

パッシブデザインの代表的なものを示します。


Low-E複層ガラス

Low-E(Low-Emissivity:低放射率)ガラスとは、特殊な金属膜を表面にコーティングしたガラスを組み合わせた複層ガラスです。日射の熱を抑え、断熱性も高いので一年を通して空調負荷を軽減させることができます。

特殊金属膜をコーティングしたガラスの位置によって、目的が変わります。
室内側のガラスに特殊金属膜がある場合には、冬場の暖かさを重視した断熱タイプになります。
室外側のガラスに特殊金属膜がある場合には、夏の暑さ対策を重視した遮熱タイプのLow-E複層ガラスになります。

Low -E複層ガラス種類


庇、ルーバー

直射日光を遮るために設置します。まぶしさを調整するとともに、夏場の室温上昇を防ぎ、空調負荷を低減します。南面は水平ルーバー、東西面は垂直ルーバーを設置して日照を調整します。

日照抑制により室内の温度上昇を抑えることで、空調エネルギーを減らすことができます。

庇、ルーバー


ライトコート

ライトコート(light court:光庭)は建物内部に室外としての中庭を設け、光が行き届くようにするとともに風通しも良くすることができます。照明、空調エネルギーを抑えることができます。

ライトコート


ライトシェルフ

ライトシェルフは、直射日光を遮りながら、反射・拡散させることで光を室内に届けます。庇として直射日光を遮りながら、上面で反射させて室内に光を取り込みます。

取り込んだ光を天井面で反射、拡散させることで明るくします。明るさを取り入れ、日射を遮蔽するため、照明、空調エネルギーを抑えることができます。

ライトシェルフ


トップライト

トップライトは、天井面に開口を設けて採光や通風を確保します。室内に光や風を届けることによって、空調、照明エネルギーを抑えることができます。
春や秋などの中間期には、トップライトを開けて通風させます。

トップライト

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