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スタートアップと株式投資型クラウドファンディング

クラウドファンディング

クラウドファンディング(crowdfunding)とは、新規成長企業等があるプロジェクトを行うために必要な資金をインターネットを通じて不特定多数の人から少額ずつ集める仕組みです。クラウドとは、雲(cloud)ではなく群衆(crowd)の意味です。群衆(crowd)と資金調達(funding)とを組み合わせた言葉で「クラファン」と略されることも多いようです。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングは、(1)株式投資型クラウドファンディング、(2)購入型クラウドファンディング、(3)寄付型クラウドファンディングの3種類に分類されます。

株式投資型クラウドファンディング事業者の一例

イークラウド
FUNDINNO(ファンディーノ)
ユニコーン
CAMPFIRE Angels

株式投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット

メリットは、上限額1億円ですが、単純な損得を超越した応援団やファンのような株主による資金調達が可能になることです。

デメリットは、第一に、次の資金調達ラウンドでベンチャーキャピタルからの資金調達を視野に入れている場合、クラウドファンディングが与える影響を考慮する必要がある点です。なぜならば、個人株主数が増加し、株主の合意を取り付ける手間を敬遠するベンチャーキャピタル(VC)もあるからです。多くのベンチャーキャピタルは出資の際に、M&AによるEXITに備えて、全株主を当事者とした株主間契約書を締結することが通常なのですが、株主数が多すぎると”全株主の合意”を取り付けられない可能性があるのです。ベンチャーキャピタルが全株主の同意を得たい理由ですが、M&AによるEXITの際に、一部の株主が会社売却に反対しないように、経営株主(代表取締役で株式を相当数保有する者)にドラッグ・アロング・ライト(Drag Along Right)(※1)を与えたい点や、みなし清算条項(※2)を契約書に盛り込みたい点等の理由が考えられます。ドラッグ・アロング・ライトやみなし清算条項といった、財産分配契約について、少額投資の個人株主に対してまで契約の締結を求めることは一見すると煩雑であるように思えるかもしれませんが、優先分配の機能を有効なものとするためには全株主が原則として参加する必要があります。第二に、クラウドファンディングでは、多数の個人株主の中に、上場審査で問題になるような反社会的勢力の株主が紛れ込む可能性が指摘される点です。

【参考】「我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」平成30年3月経済産業省

(※1)ドラッグ・アロング・ライトとは、売却請求権とも呼ばれ、多数の投資家の賛成等の任意に設定された一定の要件を満たした場合、発行会社、創業株主に限らず他の株主に対しても株式の売却に応じるべきことを請求することができる権利のことです。【参考】「我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」平成30年3月経済産業省

(※2)みなし清算条項とは、M&A によるEXITの際に、あたかも会社を清算したものとみなして投資家に対して分配を行うことを内容とする定めのことです。本来、種類株式に定められる優先分配は、発行会社が配当を行う場合や事業を停止し清算を行う場合に適用されます。一方、M&A は株式譲渡等により行われるため、配当や清算に該当するものではありません。そこで、経営支配権の変更が伴うような M&A が生じた場合に、発行会社が清算した状態になったものとみなして、優先分配を行う旨を規定しているのが、みなし清算条項なのです。【参考】「我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」平成30年3月経済産業省


株式投資型クラウドファンディングのデメリットへのプラットホーム側の対応策

第一に、全株主との合意のデメリットに対しては、現物株式による調達ではなく、(全株主の合意を必要としない)新株予約権型資金調達スキームを用意している事業者もあります。例えばFUNDINO型新株予約権の場合、新株予約権による調達以降、株式発行による1億円以上の資金調達を初めて実施する際に、その時点の企業価値を考慮した転換価額、交付株式数が決定されます(この時点ではまだ交付はされません)。投資先企業に4つのシナリオ(IPO、M&A、解散、存続)が実現したときに、初めて株式が交付されます。要するに、EXITまでは議決権の無い、新株予約権のままにしておけるということなのです。

第二に、株主に反社会的勢力が紛れ込む可能性に関しては、プラットホーム側で反社チェックを公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターや警視庁組織犯罪対策第三課等に照会されているケースもあるようです(株主が多数ですし、公的機関でもチェックしきれない可能性は残るとは思いますが。。。この点が、通常のエンジェル投資と違う点です。人間関係を通じたリファレンスチェックの実施が事実上期待できないからです)。

株式投資型クラウドファンディングでの新規株式上場実績

2021年3月30日には、卓球で国内トップのTリーグに参加するチーム「琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社」が株式会社東京証券取引所「TOKYO PRO Market」に上場しました。株式型クラウドファンディングを活用した企業の株式上場第1号です。今後も、株式型クラウドファンディングでの新規上場実績が継続するか注視していきたいと思います。

琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社の資本政策

2018年2月23日設立、100株、資本金100万円。

2018年3月1日、株式分割(1:100)。

2018年10月19日、有償第三者割当増資、発行価格10,000円、調達額33.5百万円、ポストの時価総額133.5百万円。

2018年12月31日、有償第三者割当増資、発行価格10,000円、調達額300万円、ポストの時価総額136.5百万円。

2019年4月25日、株式分割(1:3)。

2019年6月30日、有償第三者割当増資、発行価格10,000円、調達額40百万円、ポストの時価総額449.5百万円。主な割当先は、㈱シーエムディーラボとMTGV投資事業有限責任組合。40百万円(発行価格10,000円)を調達しています。MTGV投資事業有限責任組合はマザーズ上場のMTG(美容機器健康家電メーカー)によるコーポレートベンチャーキャピタルです。JAFCO出身の藤田豪氏が代表取締役です。

2019年11月22日、株式分割(1:30)。

2020年1月9日に株式投資型クラウドファンディングにより22.5百万円(発行価格500円)を調達しています。発行価格500円、ポストの時価総額696.75百万円。このケースでは、ベンチャーキャピタルからの資金調達後に株式投資型クラウドファンディングを行っています(ベンチャーキャピタルとクラウトファンディングで増加した株主と株主間契約を締結したか否かは確認できていません!)

2021年8月4日 株価700円、時価総額975百万円

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