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血管を通る「ゲル」コーティングワイヤー

MIT(マサチューセッツ工科大学)が極細の金属ワイヤーをゲルでコーティングし、脳卒中や動脈瘤の治療に応用する研究を行っています。

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脳の血管モデルにワイヤを通している様子(http://news.mit.edu/2019/robot-brain-blood-vessels-0828)

脳の血栓を除去するために、患者の主動脈(脚または径部)に細いガイドワイヤーを挿入します。 蛍光透視鏡で血管の画像を見ながら、外科医は損傷した脳血管にワイヤーを手で回転させて入れ、カテーテルをワイヤーに沿って通し、薬物または血餅回収デバイスを患部に送ります(血餅=赤血球、白血球、血小板、線維素などからなる塊。または血液から血漿などを作った際の残滓。止血や損傷部の回復に役に立つ。・・・Wikipedia)。

しかし、血栓除去には高い技術が必要で、特に細い血管にワイヤーを通すのは時間がかかります。
とはいえ、脳卒中などの治療は一刻を争います。

そこで、ガイドワイヤーを正確に遠隔操作し、しかも血管内との摩擦の少ない柔らかいゲルでコーティングしたワイヤーなら、血管の損傷を防ぐことができる上、手術時間を短縮できると考えられます。

急性脳卒中が最初の90分以内に治療できれば、患者の生存率が大幅に向上する可能性があります。
血管閉塞を迅速に回復できれば、生存だけでなく、脳損傷による障害が残ることも回避できるでしょう。

脳の血管モデルで試験をすると、ゲルでコーティングしたガイドワイヤーの方が滑りやすく、詰まることなく血管内を通すことが出来るそうです(従来のガイドワイヤーはポリマーでコーティングされている)。
このモデルは、実際の患者の脳のCTスキャンデータを元にし、血栓や動脈瘤を含む脳の主要血管を再現した、原寸大シリコンレプリカです。さらに、シリコーンの血管を血液と同じ粘性の液体で満たしています。
以下の動画では、ガイドワイヤを磁石で操作し、モデルの曲がりくねった狭い血管の中にワイヤを通している様子を見る事ができます。

動画を見ると良く分かります。
磁石でガイドワイヤをコントロールし、小さなリングのコースも正確に通していますね。
長年の研究により、生体適合性のあるハイドロゲルと磁性材料(粒子)を組み合わせ、遠隔操作可能なゲルコーティングワイヤを作ったそうです。
ワイヤの芯には曲げやすくて弾力のあるニッケルチタン合金が採用されています。曲がりくねった血管内を柔軟な動きで移動させることができます。
しかも、前述したように滑らかなハイドロゲルでコーティングされているため、血管を傷つけずに詰まることなく通すことが可能です。

この技術の研究者によると
医師が別室もしくは他の都市に居ながらワイヤーを遠隔操作(ジョイスティックで磁場を操作)することが出来ます。
次のステップでは、生体内でこのロボットのテストを行いたいと考えています。」
と言っています。
また、機能を追加し、凝血抑制薬を直接送ったり、レーザー光で障害物を壊すことも可能だそうです(金属のコアを光ファイバーにする)。

遠隔操作出来れば、熟練の医師や設備が不足している地域でも、迅速に手術が出来るというわけです。
さらに、開腹術なしで脳の外科的処置が出来るようになる可能性を秘めています。

極細のワイヤーにゲルを薄く均一にコーティングしているところが素晴らしいと思います。
今後の進展に期待したいです。

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