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酢酸ナトリウムで過冷却を体験

液体の温度が凝固点まで下がると固まります。例えば、水なら凍りますよね。
しかし、ゆっくりと時間をかけて冷やすと、凝固点以下の温度でも固まらず、液体のままです。
この現象を過冷却と呼びます。

種結晶の添加で結晶を析出

この過冷却を体験するのにピッタリなのが、酢酸ナトリウムです。
演示実験に最適です。
ルミカさんのキットを使って実際にやってみます(後述しますが、添付されている酢酸ナトリウムは三水和物ではなく、無水物のようです)。
*酢酸ナトリウムは食べられません。危険ではありませんが、扱った後は必ず手を洗って下さい。

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添付の酢酸ナトリウム30gを熱湯(80℃以上)50mlに溶かします。
つまり、酢酸ナトリウム:熱湯=3 : 5の割合で混ぜます。
*スプーンなどで混ぜると、すぐに溶けます。
溶けたらラップをかけて室温付近まで放置し、冷蔵庫に入れます。
1~2時間冷やしたら、衝撃を与えないようにゆっくりと冷蔵庫から取り出します。
そして、ごく少量の酢酸ナトリウムを加えます(酢酸ナトリウムは全量溶かさず、一つまみ分残しておきます)。

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すると、加えた酢酸ナトリウムを核にして、一気に結晶が析出します。

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10秒程度で全体が固まります。

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凝固点より低い温度になっているため、わずかなきっかけで一気に結晶が析出するんです。


ゆっくりと結晶を析出させる

もう少し熱湯の量を増やせば、ゆっくりと結晶が析出・成長します。
酢酸ナトリウム:熱湯=1 : 2くらいで水溶液を作って冷やします。
(熱湯の量はこの比率よりも少な目に入れた方が良いと思います)

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綺麗な針状結晶です。
ゆっくりと結晶が析出するため、結晶が成長する様子をじっくり観察することが出来ます。

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結晶の出来る様子は何度見ても飽きません。
液体を凝固点まで冷やすと結晶の核ができ、その核を中心に結晶の析出・成長が進み、固まります。
しかし、ゆっくり冷やすと結晶の核を作るためのエネルギーが不足するため、結晶が出来難くなるんです。そのため、過冷却状態になります。

また、酢酸ナトリウムの結晶が析出すると発熱するため、容器が温かくなります。結晶が析出したら触って確かめてみて下さい(40~50℃くらいになります)。

結晶が出来る様子は写真や動画などでよく見ますが、実際に目にすることは滅多にありません。
酢酸ナトリウムを使えば、簡単に誰でも綺麗な結晶を作ることができます。

今回使ったのは、ルミカさんから出ているキットです。
キットと言っても、酢酸ナトリウムと作り方の説明だけの簡素なものです。
説明が分かり易いです。

耐熱性のガラス容器を使えば、結晶化させた後に電子レンジで温めると液体に戻ります(危険なので、500Wで20~30秒ごとに様子をみながら加熱してください)
何度も楽しめます。

これを使っても良いですね。50g入っています(後述しますが、三水和物は50%以上で溶解する必要があります)。

こちらは、酢酸ナトリウム50gが2袋入っているので、失敗しても濃度を変えてやり直すことが出来ますね。

三水和物と無水物の違い

酢酸ナトリウム三水和物は、50~60%くらいの高濃度で溶かします。
一方、今回使用したルミカさんのキットに記載された添加量を計算してみると、約37%でした。
おそらく、添付されているのは三水和物ではなく、無水物と推測されます
その証拠に、50%の濃度(酢酸ナトリウム:水=1:1)だと加熱しても完全には溶けませんでした(溶けるまで電子レンジで加熱→攪拌を繰り返せば溶かすこともできますが、僅かな振動で結晶が一気に析出します)。
逆に、高濃度で溶かせば、スプーンや割りばしで器壁をこすったり、容器に振動を与えるだけで結晶が析出します。種結晶を入れる方法より難易度は高いですが、成功すると感動します。

市販のものは三水和物と無水物の両方があるため、作り方が説明されている実験キットはともかく、単品で購入するときは違いに注意して下さい。

酢酸ナトリウムを扱った後は必ず手を洗って下さい(口にも入れないよう注意して下さい)
あまり危険なものではありませんが、お子さんがやるときは必ず親が付き添って下さい。
特に、電子レンジの使用は必ず大人がやってください(繰り返しになりますが、500Wで20~30秒ごとに様子をみながら加熱してください)。
演示実験には最適ですが、上手くやるには慣れが必要だと思います。

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