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フルーチェ作りとゲル

日本人にお馴染みのデザート、フルーチェ。
フルーチェは1976年、ハウス食品さんから発売されました。
以来、年齢・性別に関係なく多くの人の支持を得て、現在も続くロングセラー商品となります。
フルーチェは、フルーツとイタリア語で甘いもののことを指すドルチェという単語を組合わせて作られた名前なんです。

味はもちろんですが、簡単に作れるところも、長く支持されているポイントなんでしょうね。

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フルーチェの入った袋を切ってボールに入れ、冷蔵庫で冷やした牛乳を入れて混ぜます。

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1分程度でゲル化します。

果肉が入っているところが良いですよね。

ちなみに、フルーチェの方は冷やさないで下さい。
そして、使用する牛乳は、種類別「牛乳」と表記されたものを必ず使って下さい。
乳飲料や加工乳・豆乳だと固まりません。

牛乳を入れて混ぜても直ぐには固まらないので、失敗したと思わず、混ぜ続けて下さい。
スプーンなどで大きく混ぜるのがコツです。
ゲル化が不十分だと感じたときは、冷蔵庫で1,2時間程度冷やしてみて下さい。

フルーチェは一袋で4人分です。
でも、好きな人は一人で全部食べてしまいますね。
実は、100円ショップで売られているフルーチェは2人、もしくは3人向けのものなんです。
さらに、最近では一人分のものも販売されています。
今回作ったのはイチゴですが、ほかにもメロンやピーチ、パインやマンゴーなどがあります。
かつてはキウイフルーツやぶどうなどがありました。
そして、一番人気の味はイチゴです。
圧倒的な人気を誇っているそうです。

さて、フルーチェはなぜ、牛乳を加えるとかたまるのでしょうか?
その秘密は、フルーチェに含まれるペクチンにあります。
ペクチンは、植物の細胞壁などに含まれており、このような構造をした多糖類の一種です。

スケッチ-153 (2)

多糖類とは、糖がたくさんつながってできた高分子のことです。
そして、果物の皮に多く含まれています。

ペクチンそのままでも、食品に粘性やとろみを加えることが出来ます。
果物と砂糖を煮詰めて作るジャムがそうですね。
しかし、ペクチンに牛乳を加えると
牛乳に含まれるカルシウムイオンがペクチンのカルボン酸を橋架けします
橋架けによって、ペクチンの網目構造が出来、ゲル化します(下図は構造を簡略化しています)。

スケッチ-100 (2)

フルーチェが固まるのはこのためだったんですね。
乳飲料や加工乳・豆乳だと固まらないのは、カルシウムが少ない、
もしくは含まれていない
ためなんです。
カルシウムのような二価の金属イオンでゲル化するのは、豆腐や人工イクラも同じです。
使っている材料が違うだけで、ゲル化の原理は同じなんですね。
ちなみに、フルーチェに使われているペクチンは、
果物などから抽出・精製された純度の高いものなので、
ペクチンを多く含むリンゴなどの果物を潰して牛乳と混ぜてもゲル化はしません。
ジャムなどに使える精製されたペクチンが販売されているので、そちらを使うことをお勧めします。

ちなみに、ペクチンには酸や糖を加えることでゲル化するタイプも存在します。
どのペクチンも元は同じなんですが、食品用ペクチンを作るときの処理方法によって複数の種類があります。
また、ペクチンは食物繊維でもあり、消化はよくありません。


ここからは、ちょっとしたフルーチェのアレンジメニューをご紹介します。

まずはシャーベットです。
これはとてもかんたんです。
作ったフルーチェを冷凍庫で1~2時間冷やすだけです。
このくらいだと一部だけが凍結するため、フルーチェの柔らかい食感と、
シャーベットのサクサクした触感の両方を楽しめます。

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見た目は普通のフルーチェとかわりません。
暑い夏にお勧めです。

続いて、フルーチェムースです。
公式サイトでは生クリームを使ったレシピが紹介されていますが、
ここではホイップクリームを使ってみます。

ガラスの容器などに、ホイップクリームとフルーチェを同じ量加えて混ぜます。
量は目分量です。
*クリームの量は好みで変えてみてください。

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均一になるまで混ぜたら、そのまま冷蔵庫で二時間冷やします。

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フルーチェがよりクリーミーで滑らかになります。
ちなみに、ホイップクリームは増粘剤などが入っているため、
形が崩れにくく、生クリームよりも安価です。
そして、生クリームよりも長く保存できます。
1か月程度はもちますが、開封後は出来る限り早めに使った方が良いです。

生クリームとホイップクリームの違いを簡単に説明すると、動物性脂肪に植物性脂肪を加えたもの、もしくは、植物性脂肪のみでできたものがホイップクリームです。

とても簡単に出来るアレンジなので、フルーチェを作るときに是非試してみて下さい。
フルーチェはペクチンの性質を上手く利用したデザートだと思います。
ゲル化の仕組みやペクチンの特徴を考えながら作ると、より楽しめるかもしれませんね。


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