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化学ニュースピックアップvol.4 ~はやぶさ2の持ち帰ったもの & ポリアセタール~

(はやぶさ2の部分は無料です)
はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った物質と、エンジニアリングプラスチックとして使われているポリアセタール。
今回はこの2つの話題を取り上げます。

12月6日、無事に地球に戻り、オーストラリアで試料の入ったカプセルが回収されました。まずオーストラリアでガスの分析が行われ、その後、日本のJAXAへ輸送されました。
そして分析の結果、カプセルの含まれていたガスは小惑星リュウグウ由来のものだと分かりました。
地球の大気とは異なる組成だったんです。
JAXA相模原キャンパスでも同様の分析を行った結果、オーストラリアでの分析と同じ結果が出たそうです。
地球外惑星のガス物質を持ち帰ったのは世界初です。

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オーストラリアで発見・回収されたカプセル(JAXA HP:http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20201208_capsulephotos/)

カプセルの中身も確認され、写真も公開されました。
目的とする小惑星リュウグウの砂などの物質は、0.1gが目標でした。
ところが、カプセル開けてみると大量の石や砂が入っていました。
その量は目標の50倍となる、約5.4gだったそうです。

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カプセル内の試料(https://www.sankeibiz.jp/business/news/201216/cpc2012160540001-n1.htm)

黒い物質が見えます。炭素系の物質でしょうか?

はやぶさの持ち帰ったイトカワの試料はごく僅かで、快挙とは言え、物足りませんでした。
今回は想定をはるかに上回る量で、詳細な分析が可能です。
物質の分析にはある程度量が必要です。少なすぎると分析機器が物質を認識できないため、分析自体が不可能です。
分析出来たとしても、分析の精度が著しく落ちます。
つまり、試料の量が多ければ精度良く、そして様々な分析をすることが可能になるんです。
今回のように沢山あれば、試料を溶液化して行う分析にも使えます。

リュウグウは炭素系の物質を主成分とするC型の小惑星です。
太陽系ができた初期の有機物や、水を含んだ鉱物を多く含んでいると考えられています。
特に、保存状態の良い地下物質を分析することで、太陽系ができた当初の物質の元素組成などが分かるのではと期待されています。
小惑星について、より深く知ることが出来そうですね。

採取物質に有機物が含まれていれば、揮発した有機物由来のガスが発生する可能性があると考えられていましたが、冒頭でご紹介したように、リュウグウ由来のガスがカプセルに含まれていました。
これは期待できますね。分析結果が楽しみです。

続いては、様々な用途に使われているエンジニアリングプラスチックのポリアセタール樹脂についてです。
ポリアセタール樹脂の需要は年々増加し、来年以降も増え続けると予測されています。

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