95_で収縮

温度応答性ゲルの耐熱性

僕が扱ってきた温度応答性ゲルは30℃~40℃で変化するものがほとんどで、
今研究しているゲルも38℃付近で体積変化をします。

今月初めに、80℃以上の高温でも繁殖する好熱菌と、そのメカニズムを利用した温度応答性ゲルの話をしました。
では、自分の研究しているゲルはどうなのか?
何度か試したことはありますが、アバウトにしかやっていません。
そこで、改めて実験を行いました。

理論上、60℃以上だと多糖類の一部が溶けだしてしまい、温度応答性を失ってしまいます。
実際、以前80℃で試験を行ったときは、水温を下げても収縮したまま元に戻りませんでした(少しだけ膨潤しました)。

ただし、このときはゲルの製法を確立出来ていなかったときです。
今なら、違う結果になるかもしれません。

ということで、95℃の熱水に10分間浸漬させてみました。

95℃で収縮

約15%収縮しました(収縮に伴って白濁しています。)。収縮後、室温(15℃)に戻すと10分で元の大きさに戻ります。
これは意外な結果!
沸騰するような温度で加熱しても、温度応答性を維持しています
収縮率も、40~50℃で10分間加熱したときとほぼ同じです。
しかも、95℃の熱湯に二時間浸漬させても結果は変わらず、温度応答性を失う事はありませんでした。
つまり、高温状態にしてもゲルの構造は大きく崩れていないことが分かります。

以前実験したときと違うのは、ゲルの構造を強固にする処理を行っている点です。
その効果が現れました。
高温状態でもゲルを構成する高分子の溶出が抑えられ、温度応答性を発現する構造が維持されたと推測されます。
それにしても不思議です。使用している高分子の性質と組成を考えると、90℃を超える熱湯に漬ければ溶けてもおかしくない
それが、溶けるどころか収縮し、温度を下げれば元の大きさに膨潤して戻るわけです。
こんなゲルを作ったつもりはないんですが、結果的にそうなりました。

僕が目指すのは体温付近(約36℃)で30%以上収縮するゲルなので、目的とは違う性質です。でも、これは興味深い性質なので、もっと掘り下げていきたいと思います。


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