はじめてキュロットを履いた日
私は女の子だったので(今も女ですが)、幼い頃はいかにも女の子という感じの可愛い洋服を着ていた。
上が兄だったからでしょうか。母はよく、手製のワンピースやスカート、パフスリーブのかわいい手編みのセーターなどを着せてくれた。私本人はもちろん、母も手作りを楽しんでたのだろう。女の子ならでは、、という感じかな。
そんな私が、生まれてはじめてキュロットを履いたのが幼稚園生のとき。
私にとっては大事件だったので、今でもよく覚えている。
キュロットというのは言わずもがな、ズボンのような形態で片足ずつ分かれている。桃色で裾が少し折り返されたかわいらしいデザイン。ズボン=男の子、だと思っていたけれど、こんなかわいいズボンもあるんだと子供ながらに感じた記憶がある。買ってもらったのか、誰かのお下がりだったのかはよく覚えていない。
でも新しい洋服を着るときは、心が弾む。
その日は新しいそのキュロットを履いて、意気揚々と登園した。
時々窓に映る自分の姿を見てはご満悦。
ところがそのキュロットが原因で、私はある問題に直面する。
トイレだ。
トイレに行きたくなって、個室に入っていざ!という時になり、どうやってしたらいいのかわからないことに気づく。
スカートだと、ガバっとめくってパンツおろしてそのまましゃがめばよかった。
でもズボンは??
スカートみたいにめくれない。
4歳の私は必死に頭の中で思考する。
ちなみに幼稚園のトイレは、男女兼用。
男の子が立って用を足す便器が並んでいて、その向かいに並行して個室トイレが並んでいる。
個室と言っても幼稚園児用だから、完全に密室になっているわけではなく、西部劇のバーの扉みたいにスイング式で、上下は開いている。
私は一度しゃがんでみるも、パンツが下ろせないことに気づき、一度立ち上がってみた。
スイングドアの上から反対側に目を向けると、男の子用の立って用を足す便器が見える。
「男の子=ズボン=立って用を足す」、という図式が私の頭の中に浮かぶ。
しかし女の子もズボンを履くことを今日知った。
「そうか!男の子が立ってオシッコするんじゃなくて、ズボンを履く人が立ってオシッコするんだ!」と私はひらめく。
私はおもむろにスイングドアを開け、反対側にむき出しに並んでいる男子用小便器の前に立った。
「たしかみんな、チャックをおろしてオシッコしてたよな」
記憶を辿りながら、私は思考する。
でも、4歳の女の子には恥じらいがちゃんと備わっていた。
その時周囲には誰もいなかったけれど、こんなむき出しの場所でオシッコなんて!
色々悩んだ末、私は個室で立って用を足すことに決めた。
再びスイングドアを開け、和式便器にまたがり、おもむろにチャックを下ろす。
立っていると、スイングドアの上から自分の姿が外に見えて恥ずかしいので、私は中途半端に中かがみになって事に及んだ。
チャックをおろして、その小さな小窓から無理やりパンツをずらして・・。
はてさて、私のこの作戦は当然失敗に終わった。
「あら〜〇〇ちゃん(私)、我慢できなかったのねー。間に合わなかったのね〜。でも大丈夫よ〜!」と先生は笑顔で優しく言う。
先生は、私が大人に負けないくらい、トイレで思考を張り巡らした末のこの失敗の経緯を知る由もない。
結果的に私の行為は誤ってはいたけれど、ここまで日々観察し思考できたんだなと。子供も子供ながらに色々考えることができるものなんだと、自分のことながらある意味で感心してしまう。
でも、大人の皆さん、私たちにとって当たり前のことも、子供にはちゃんと説明しなければわかりません。女の子に初めてズボンを履かせる日は、ぜひオシッコの仕方も教えてあげてください!
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