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平成元年 酢酸の思い出

ただ消費されるプリント あたり焼き


昔々のことだった。
広告写真撮影。特に折込チラシ。

撮影はカラー・モノクロ同時撮り。カラーはAポジBポジをセレクトして印刷会社に納品。モノクロはラフの指示された大きさに合わせてプリントし、デザイナーに納品する流れ。

撮影済み商品の値札を復元し返却準備ができたら、いよいよ暗室作業。
もちろん底辺の作業である。時間は21時をまわっている。

ファインドールの深タンク。フィルムを落とすと大変なことになる。
停止液は使わず時間がくると、そのまま定着液に移動。
水洗30分。ドライウェルにくぐらせて乾燥機へ。

乾燥後は長巻のまま引き伸ばし機にかけて、サイズ焼きをする。
小さいのは名刺サイズ。モデルは手札か六切。
テスト焼きはしない。タイマーも使わない。そんな時間はないのだ。

名刺サイズは露光したものを10枚ごとに現像液につける。その繰り返し。

水洗、乾燥後はラフに照らし合わせて焼き漏れがないかチェック。

各サイズごとに枚数を数えて仮納品書に記入。
ラフとプリントを封筒に入れスタジオを出るが、まだ帰れない。
デザイン事務所にそれを届ける。

深夜0時を過ぎているがデザイン事務所はまだ灯りがついている。
煙草の匂い。小太りなデザイナーにその封筒を渡して、本日の業務は終了。

自宅に着くのは2時過ぎだろう。

※すべて倍率を変えてピントと露光時間を調整する。当時フォコマートがあれば確実に時短できたと30年後に想う。



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