lazy navy blue

土曜日に少し遠くの友達に会いに、君と二人で新幹線に乗る。新幹線に乗り慣れていないと職場で前日に慌てる君を、仕方がないから一緒に行こうと誘う。
せっかく隣の県まで出かけるというのに、観光も何もなし。ただ今月で退職するという同期を見送りに、飲み会に行くだけ。愛想もへったくれもない突貫旅行だ。

いつも職場でふざけ合っている君も、いざ二人で会うとなるとどんな顔をしてあえばいいのだろう。なんとなく恥ずかしい気がしてそっけなく、できるだけなにげなく。
誰と会う時だってそうだ。待ち合わせの瞬間はいつも少し緊張する。

新幹線の買い方を教える、という約束だったが、教えると言ってもなぁ。チケット売り場まで行けばあとは買うだけだ。自由席ならどの時間に乗ってもいいなんて知らなかったと君はいう。
頼られるというよりも任されるという感覚。嫌いではない。

無事新幹線を買って、たまにしか来ないこだまを座って待つ。そろそろ上着を着なくても外に出られるかなぁという季節。
数ヶ月前と比べてだいぶ長くなった日。真っ青な空に真っ白な夕焼けを残しているのか、真っ白な空に薄黄色の夕焼けを残しているのか。
全体的に霞んだような白い色の夕焼けを、君と見送りながら新幹線に乗る。そんなものに意味を見出していたのはきっと僕だけだろうけど。

こだまは空いているから大丈夫と、自由席を買った僕ら。思ったより埋まる席に焦りながらも、なんとか見つけた2人がけの席。
当然のように隣同士に座る。君はゲーム、僕は動画を見始める。お互い気を使わない関係。こんな人と一緒にいられたら、人生楽しんだろうな、と思うのもよそに。
動画を見ているのに疲れた僕は少し外を見る。
夜が始まるのか、昼が終わるのかわからない。三月の寒いのか暖かいのかわからない気温にも似た、中立的なくすんだネイビーブルーの空。同じ色をした富士山が見える。
君と仕事で一緒に運転した時に、関東に来たばかりの僕は富士山をみてはしゃいだことを思い出す。
富士山が見えることを君にも伝えようか。少し迷って君をちらりと見る。君はそんなことには気づかずにゲームをしている。迷った挙句、やめた。遠慮したのではなく、伝えるほどのことでもないかなと。そんな気がした。

少し目を休めようと、目を瞑っているうちに目的地につく。どっちつかずだった、あわいの時間は過ぎ去りはっきりと夜が来ている。





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