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シャニマスの250連CMが最悪な理由と欠けているもの

この記事では、これまでにシャニマスが作ってきたCMに最大限のリスペクトを示しつつ、250連CMの何が最悪で、何が足りないのかを見ていく。

先日、シャニマスの250連CMが公開された。

「これはダメだろ」以外の感想がない酷いCMだった。悪手どころか最悪の一手だと思う。Twitterでも、まともな考えを持っている人たちは怪訝な態度を示していたように思う。何がダメなのか。シャニマスはこれまでもいくつかCMを作ってきているので、特に今年からシャニマスを始めた人は、まずはそれらを見てみるといいのではないか。

歴代のCMと比べてみる

全部は網羅できないが、いくつか歴代のCMをピックアップしてみる。

・大崎甜花のCM(2018年7月ごろ)

・ウインターキャンペーンTVCMシリーズ(2018年12月ごろ)

各CMが1人のアイドルにフォーカスしており、「この子可愛いな」と思えば視聴者はそのままシャニマスをプレイしてくれただろう。このCMが直接の理由ではないが、私も甘奈のCMをみてモチベーションが上がってシャニマスを始めた一人である。甘奈に「この冬一緒に過ごそうよ」と言われ、実際に一緒に過ごした本人がそう言っているので信憑性はあるだろう。

さらに「SNOW FLAKES MEMORIES」をBGMで流しているので、楽曲のアピールにもなる。TVで何度もみれば、サビのリズムが気になってシャニマスに興味が湧いてくるはずだ。極め付けは、各アイドルのナレーションがこのCMのための完全撮り下ろしであること。担当プロデューサーにとってはとても嬉しかったはずだ。仮に4人が好みではなかったとしても、「他にどんなキャラがいるのかな」と興味を持たせることができた時点で広告の役割は完璧に果たせていると思う。シャニマスの高品質なアニメーションを前面に出した、とてもいいCMだと思う。

・YOSHIKIとのコラボCM(2019年3月ごろ)

「YOSHIKIを無駄遣いするな」とツッコミたくなるものの、黒基調の一貫された高級感ある動画でかっこいい。「あのYOSHIKIが?」となるあたり、話題性は抜群である。アイドルマスターシリーズに全く関心がない層にもアプローチをかけられただろう。

・シャニマス2周年CM「bloom for you」(2020年4月ごろ)

2周年の実写CMはとても面白い試みだったと思う。ドラマのクオリティがめちゃくちゃ高い。シャニP役の俳優さが名言をバンバン言いまくるし、シャニマスのCMであること除いてもシンプルに1本のドラマとして質が高い。YOSHIKIには申し訳ないが、歴代のCMで一番好きだし「シャニマスらしいCM」だと思うので未聴の方は是非みて欲しい。

二次元コンテンツにあえて実写のPVを、わざわざ俳優を雇って短編ドラマとして作ったこのCM。もっと低予算で実現できたはずなのに、わざわざ手間暇かけて、ドラマの脚本まで作っている。しかもこれまでの歴代CMにはない新しいドラマ仕立てのPVなので、チャレンジ精神も感じられる。このPVに対して考察するファンも現れたぐらいには、こだわりを持ってつくられた1つの作品だと感じる。手間暇かけて作っているのだなと好印象しかない。

250連CMに決定的に欠けているもの

歴代のCMと比較してみて、再度250連CMをご覧になればわかるだろう。何がダメなのか、とても簡単な話だ。「伝えたいテーマがない」、これにつきる。ギャグが悪いと言っているわけではないし、シリアスな演出の方が優れていると言いたいわけでもない。これまでのCMと比べてコミカルな演出に挑戦したことを蔑んでいるわけでもない。言いたいことはただ一つで、「内容がない」こと。YOSHIKIを呼ぶための金も必要なかった、俳優を雇って手間暇かけて実写のドラマをわざわざ作ってもない、にもかかわらずこの体たらくなのである。

「テーマがない」、これは短時間でセールスする媒体である広告というフォーマットにおいて最悪だと思う。広告においては、一番伝えたい内容を手短に、かついかにインパクトを最大にして一瞬で伝えられるかが大事だと思う。このCMは、「250連ガシャが無料」としか言っていない。「無料ガシャを25日間毎日引く習慣がつけば、あわよくばシャニマスを始めてくれるだろう」的な、運営の浅はかな考えが見えすいているだけだ。音ゲーばかりが量産されるこの時代に「じっくりとアイドルをプロデュースするゲームである」ことも、「他シリーズに比べて1年間に出す楽曲数を絞ってまで拘って1つ1つの楽曲を作っている」ことも、自分たちの大切にしてきたはずの矜恃を何も伝えていない。こんなCMは他のゲームにもできるし、オンリーワンではないと思う。

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YOSHIKIや実写ドラマのCMの最大の強みは、「輝かせよう、アイドルのすべて。」というシンプルな表題・メッセージがあることだ。このキャッチフレーズがあるかどうかがとても重要だ。250連の動画にはあるだろうか、一切ない。250連無料と主張しているだけだ。ゲーム性や高い品質の物語について一切語ってない。外部からのキャスティングに金を使う必要がない分、別のことに予算を使えただろうに、完成したCMがニコニコ動画で作られるような動画だったのだから非常に残念だ。

テーマがない以外にも、重要なポイントがある。アプローチをかける対象が不適切であるだ。有名人を使ったり、実写ドラマをわざわざ作る方法は、オタクとは異なる層にアプローチできていると思う。もう2年もサービスを続けているのだから、ほとんどのオタクがシャニマスの名前ぐらい聞いたことはあるはずだ。全く知らない、という人は二次元オタクの界隈ではとても少ないと思う。

Twitterにはオタクが多いはずだし、同人作家がシャニマスの二次創作を毎日のように拡散しつづけている。運営が定期的にリツイートキャンペーン(総選挙など)を開催するので、シャニマスのツイートで目眩がするほど執拗にTLが汚されることも目にしているはずだ。特に今年はVTuberが積極的に宣伝した結果、多くの新規ユーザを獲得したように思う。何度もトレンドに入っているし、やはりシャニマスを全く知らないという二次元オタクはいないはずである。

だから、メインの顧客層であるオタクたちに宣伝してもあまり旨みはないはずだ。それはこの前のSSR総選挙の結果でも明らかだ。一番リツイートされたツイートですら、2800程度の数値しかない。正直、あまりにも少なくないかと思った。これはもう、ファンの中でもリツイートする企画ばかりが催されることを億劫に感じている人が増えてきていると感じる。

オタク層はレッドオーシャンだから、それ以外のブルーオーシャンに宣伝するほうが取れる客は多いはずだ。これは至極当然だが、口で言うほど簡単ではないとも思う。とても難しい課題だ。Twitterでファンにリツイートさせて拡散させる、以外のどんな方法を使えばいいのか運営も決め手にかけているのだろう。私もいくつか代案を考えたが、難しいことに変わりはない。だが同時に、それが企画者の仕事なのではないかとも思う。Twitterはオタクで溢れかえっており、リツイートさせて認知度をあげたいのはわかるのだが、1つの方法に固執せずにいろいろ話し合って別の案も考えてみて欲しい。

「テーマがない」「アプローチする対象が相応しくないのでは」という2点を踏まえて、再度この250連CMをみてみるとどうだろうか。BGMはシャニマスオリジナルではないので、楽曲のアピールにもつながらない。4コマのギャグを初見の人がみても、ギャグの意味やどの部分で笑えるかなどはわからないので、キャラの魅力も伝わらない。前項で紹介した、4人のアイドルにフォーカスしている「ウインターキャンペーンTVCMシリーズ」のようにキャラに興味を持ってもらうのは難しい。

YOSHIKIのCMほどインパクトもないし、ドラマPVのような「いかにもシャニマスっぽいCM」ではなく、「いかにもアイマスの運営が考えそうなCM」という表現がぴったりに感じる。事実、ミリシタでも似たようなCMが作られた。このCMも「180回ガシャ無料」と念仏のように唱えるだけでテーマが一切ないCMだ。

4コマを貼り付けた250連CMは、アイマスの運営が大好きな、お得意の「内輪ネタ」に走っているようにしか思えない。これをオタクから程遠い人たちがみて「シャニマス面白そうだな」と感じるのか、甚だ疑問である。シャニマスが好きな人たちだけで、内輪で盛り上がっているだけだ。「やばい動画だなw」と、プロデューサーたちが内輪で騒いでいるだけだ。いい年した大人が集団で群れて、内輪ネタで盛り上がっているというのは、群れの外側からみれば異様な光景だと思うが、アイマス村にいると外からどう見えるかを気にしないのかもしれない。

ファンの間で盛り上がることは重要だと思うが、ファンの間「だけ」で盛り上がるのは好ましくないと思う。なぜなら、今いるファンの間だけで盛り上がっても、新しい顧客を獲得できないからだ。今いるファンを蔑ろにするのはいけないが、今いるファン以上に新しいファンを獲得するためにプロモートして欲しいと願っている。

まとめ

アイドルをプロデュースすることは、そのアイドルにどんな魅力があるかを相手に知ってもらうことだ。そのアイドルを応援し、好きになることで、相手にとってどんないいことがあるか(たとえば楽しい気持ちであったり、幸福感であったり)をプレゼンすることだ。TVCMという短く限られた時間で、それを完遂するのがゲームプロデューサーの仕事ではないのだろうか。

このTVCMから、シャニマスの運営が伝えたいテーマというのが一切ないということがよくわかった。そしてそれは、彼ら自身がシャニマスの魅力を伝えるために必要な1フレーズを見いだせていないとも言える。かなり厳しく、穿った見方ではあるが。「輝かせよう、アイドルのすべて。」や「精一杯の先へ」といったフレーズよりも、「250連ガシャ無料」のほうが効果的にプロモートできると運営が考えたから、このようなCMになったのだと思う。

その点が何より残念である。私はそうは思わないからだ。「輝かせよう、アイドルのすべて。」や「精一杯の先へ」といったフレーズを使って、自分たちの楽曲を使って、自分たちのアニメーションを使って、シャニマスの魅力を伝えるCMを作ることができたと思っている。なぜなら、そのような素晴らしいCMはこれまでに作っているからである。この判断を下した運営自身が、誰よりも自分たちのシャニマスに自信がないと思っているように感じられた点がとても悲しい。

定量的な観点でみると、YouTubeでの250連CMの再生回数は290万再生を超えている。運営がこれで「いい数値が出た」「結果が出た」と判断すれば、今後もこのようなCMが作られていくだろう。再生回数が多いものの、これはファンが何度も見直しているだけの数値なのではないかと私は思ってしまう。目先の数字ばかりを追い求め、どんどんと内輪ウケする方向に狭まり収束していく。そして最後には閑古鳥が泣く、ずっとこれの繰り返しだ。さすがは9・18事件を起こした運営だなと納得・関心させられる。

シャニマスはこれから1年が勝負所なんじゃないかと思う。相変わらず楽曲やコミュは本当に素晴らしいので、クリエイターの方々にはリスペクトしかないし頭が上がらない。素晴らしい作品を作ってくださるクリエイターの方々に対して、運営は一体何をやっているのだと今回の杜撰なCMを見せられると疑問に思ってしまう。プロモートは難しいと思うが、もっと別のやり方があるのではないだろうか。

運営に二言物申す

1:甘奈のこのCMだけがYouTubeで消されているので、再アップロードしていただきたい。甜花のCMだけ消してなくて(おそらく消し忘れ)、違和感があります。甘奈のCMも見れるようにしてください。

2:今年の4月にやった実写版のCM(シャニマス2周年CM「bloom for you」)をBlu-rayで売ってください。ドラマとしてもとてもクオリティが高い素晴らしいCMなので、手元におきたいです。

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