【絵本原作】いいたいことがいえません

幼稚園にいる女の子

『おはようございます』がいえません

　いい返事ができません

『いっしょにあそぼう』なんて　ぜったいムリです

『いただきます』は小さな声で

『ごちそうさま』も同じくらい

　もちろん『さようなら』もいえません

　いいたかったコトバと　
いえなかったコトバがワタシのおなかに　いっぱいいっぱいつまっているよ

　このままにしていたら　どうなるのかな？　
　おなかがおもーーーく・・・・・・なってしまうのかな？
　そして　おなかがいたーーーく・・・・・・なって泣いてしまうのかな？

　いいたかったコトバ　いえなかったコトバ

野原にやって来た女の子

　だからワタシは野原に行って、いっぱい　いっぱい　はき出した

　いいたかったコトバ　いえなかったコトバ

　コトバがどんどんつみ上がる

　いいたかったコトバ　いえなかったコトバ

『あそぼう！』や『おはようございます！』などのコトバが立体化して女の子の口から飛び出し、目の前にどんどん積み上げる

　ワタシよりも高く　お父さん、お母さんよりも高く　家のやねより高くなり……

　とうとう　山のように　なってしまった

　いいたかったコトバ　いえなかったコトバ

　それらをしばらく見上げていたら

　涙が出てきて　止まらなくなった

しばらくの間、泣きじゃくる女の子

小鳥が羽で女の子の肩をチョンチョン叩く

　えっ？　なに？　「登ってみて」って？

　『コトバの山』を一生懸命登る女の子

　女の子の眼下に、夕方の街の景色が広がる。

　わぁ！！

　とってもいいながめ！！

　(小鳥を見ながら)あなたはワタシに　これを見せたかたんだね！！

　明日は……ちょっとだけ　がんばってみようかな。

　(次の日の一コマ)幼稚園のお友達に、ドキドキしながら「あそぼう」と言った女の子

お友達「いいよ！　あそぼう」

　　　　　　　　　《終わり》

読んで頂きありがとうございました。女の子のモデルは幼稚園時代の次女です😊