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夏をしのいで

夏はいつも、中心がぐんと熱くて、その熱に手を伸ばすように人が集まる。

わざわざ誰かと連れ立って、プールで泳ぎ、花火を見て、スイカを食べて、ビールで喉を鳴らし、「暑いね」と言いながら笑い合う。「危険な暑さ」「熱中症に注意」などと聞いていても、素知らぬふりをして遊びに行く。フェスでも、バーベキューでも、スイカ割りでも、外の暑さよりも自分の中心が熱く、身体の芯が夏になっているみたく遊び散らした。

そんな「夏」が遠い昔のことのように眩しく見える。

最後に止めたのはいつなのか、忘れるくらいにヒタっと冷房の効いた部屋の中心で、キュウリをかじる。シャリッと青臭い水分が喉をつたう。

自分の知っている「夏」とは姿形が違えど、やっぱり季節は「夏」だと思い知る。今日もかけがえのない2020年の夏を、しのいでいる。

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