Topaz Knack
※この話は今月の番外編「Potluck」に掲載されている話を抜粋したものです。
始めはそこまで好印象ではなかった。
なんなら少しだけ、苦手だなとも思っていた。
いつからあの子のことが気になり始めたんだっけ。
せっかくだし、思い出してみようかな。
今回の話は、小学校のあの時から少し成長をした(と思いたい)中学時代の話である。
部活は吹奏楽部に入り、担当楽器はチューバに。
その他にも、吹奏楽部の男子だけで行っていたバンド活動(ザブンの話→#7を見てね)など意外にも好調なスタートだったと思う。
そんな中学生活の中、個人的にあんまり好きになれないというか、
悪くいえば疎ましいと感じていた人がいた。
当初、そのバンドで曲を合わせるときはとりあえず楽譜無しでやっていたのだが、その人はその演奏に合わせておんなじ曲を隅っこで吹いていた。
今考えれば、僕たちが演奏したそのすぐ後に彼女が(いわゆる)耳コピで演奏が出来たというのは凄いことだと思う。
けれど、当時の僕はその姿を見て、
「僕たち(男子)だけの活動なのに、何マネしてんだよ」
と、今の社会では信じられないような感情を抱いていた。
これが中学1年生でのちょっとした出来事。
今思い返してみても、失礼すぎて
ほんとうに申し訳ないと思う。
別にこのことを相手に伝えたわけではないので、これこそ墓場まで持っていくべきだな。
そんな「疎ましい」という認識を改めたのは、2年生に入り、同じクラスになった頃からだった。
あの子に関わっていくうちにだんだんと色んな面が見えてくる。
笑った顔も、はにかんだ笑みも、悩んでるときの仕草も、真剣な表情も。
2年生も終わりに差し掛かったある日。
その子とクラスや部活でいくつもの会話を交わすようになっていた自分はあることに気がついた。
そして、何故か言いたくなったので呟いた。
「僕、○○のこと好きなのかな」と。
そして中学校最後の年が始まる。
そこからはとりあえず、コミュニケーションの幅を拡げてみた。
朝、会ったら「おはよう」と必ず言うこと。
帰るときは「おつかれさま」を。
そういえば、後半からは「バイバイ」も言い合っていた気がする。
自分に出来そうな、あの子のこころを掴むことは言葉を交わすことだけだと思い、髪型も変わっていたらすぐ反応するようにしていた。
あの子はどう思っていたのだろうか。
今となっては知る由もない。
そんなこんなで2人はお互いにコミュニケーションを取り合う仲にまではこぎつけることが出来た。
そうして訪れる受験期。
ほんとうはおんなじ高校に行きたかった。
けれど、人生はそう甘くない。
親が静岡での仕事に転職した影響で自分も着いていくことになった。
告白をするかしないか
自分は迷って、
いつぞやと同じ理由であきらめた。
自分に言い訳をして、
しょうがないと飲み込んで
やめた。
連絡先は持っていたけど、高校生活の合間で気づけば連絡もしなくなった。
とある事件のおかげでそもそもの連絡先も消してしまって、今は手元にもない。
そんなこんなで毎年11月になると、あの子のことを思い出す。
どこで何をしているのか。
何を見て、何を感じて生きているのか。
少し気になって、
幸せであることを願って気持ちを払拭させている。
あの子にとっての誕生日は特別なものだったのだろうか。
トパーズ。
その誕生石に則って、誠実な友情や恋を掴んでいると嬉しい。
ほんとうに、久しぶりに恋が出来た。
あなたを好きになって良かったと思う。
ありがとう。
さようなら。
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