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【10月号】「去年よりクオリティは上がってる」オズワルドの“ネタの育て方”

今夏の「ABCお笑いグランプリ」で決勝に進出し、10月には「オールナイトニッポン お笑いラジオスターウィーク」で「オールナイトニッポン0」のパーソナリティを経験するなど、昨年のM-1以降、オズワルドは着実に歩みを進めている。
先月号のからし蓮根との対談では「自己分析だと2019年のM-1ファイナリストでいちばんハネなかったのは俺ら」と語っていたが、現状をどうとらえているのか? 衣装も新しくなった二人にたずねる――つもりが、伊藤が30分の遅刻! 申し訳なさそうに立ち尽くす畠中と共に待つところから、インタビューは始まった。


伊藤:申し訳ないです。

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――いえ、『勇者ああああ』(テレビ東京)で観た伊藤さんの遅刻を生で体験できて楽しかったです。

畠中:楽しいことは何もないですよ(笑)。すみません。

――新衣装ですが、サスペンダーを継続する/しないで大喧嘩したそうで。

畠中:はい、その様子はYouTubeにありますので。

伊藤:あれを観たいろんな人が「仲良くやれよ」って言ってくれるんですけど、YouTubeはマジで喧嘩してたわけじゃないんですよ。むしろ撮影の前にその40倍くらいのマジ喧嘩があって。

畠中:そう、1回終わって落ち着いて、お互い「悪かった」っていう状態で。

伊藤:でも大きい声出すイメージが俺らにないんで、映像でああいうことやると本当に揉めてると思われちゃうんでしょうね。

――意外と喧嘩はするとYouTubeで言ってましたね。

畠中:そうですね、ネタのことで喧嘩することはあります。喧嘩というか、お互い譲らなくて口論になるみたいな。

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伊藤:それを喧嘩って言うんだよ。

畠中:まぁまぁ、喧嘩というよりは話し合いね。

伊藤:喧嘩って言うんだよ。

畠中:喧嘩っていうより、良くするための……。

伊藤:なんでここで揉めにきてるんだよ。

――春から「ニューラジオ」を始めてすぐ外出自粛期間に入ってしまって、「話すことがない」というときもありつつも更新ペースを守ってやってきています。苦しい中でも続けてきたことで、何かしら“筋肉”がついたと思うところはありますか?

伊藤:そうですね、いいんだか悪いんだかですけど、何もない時間も大丈夫になったと思います。前は「笑いどころをつくらなきゃ」って焦ってたんですけど、全然思わなくなりました。話していくうちにおもしろくなるだろう、って。

畠中:ニューラジオは、いい意味でも悪い意味でもめちゃくちゃゆるくやってるんですよね。もともと僕らあんまり「これ用意して、このくだりやろう」っていうのはないタイプの芸人なんですけど、本当に2人でただただどうでもいいような話題を長く話すことができるんだ、って思いました。ちっちゃい話を2人だけで話してても、それを面白いと思ってくれる人がいるんだっていうのは発見でしたね。

伊藤:ただ、明日の「オールナイトニッポン0」をこのノリでいったら大変なことになるなとはさすがにわかってます(本取材は放送の前日)。大事故になる。

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――「オールナイトニッポン0」特番は大抜擢ですよね。

伊藤:めっちゃありがたいですね。まったく理由はわかんないですけど。

畠中:「お笑いウィークはこのメンバーです」って発表された写真を見て、びっくりしました。オズワルドいるじゃん! って。

伊藤:あれ見てると、自分らで「オズワルドって誰だ?」ってなりますね。

――緊張しますか?

伊藤:これも良くも悪くもですけど、まったくないですね。シンプルに、めっちゃ楽しそうだなって思ってます。

畠中:去年のM-1もそうですけど、チャレンジャーというか、もともと誰も知らねぇやつなので、これで何人か面白いと思ってくれる人が増えたらいいな、くらいの気持ちです。

伊藤:張り切るとろくなことないんで。

畠中:そう、張り切ると僕らろくなことがない(笑)。気負わないほうがいいんだろうなって思ってます。

――張り切ってろくなことにならなかった実例というと……?

伊藤:「まだ言うのか」って思うかもしれないですけど、去年のM-1の細稲垣も張り切った結果ですからね。二度と張り切らないと決めました。

畠中:やっぱ人間は張り切っちゃうとダメなんですね。

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――M-1の話が出ましたが、今年の予選がスタートしています。3月に予定されていた単独ライブは中止になってしまいましたし、もろもろの状況は今年のネタの出来に影響出てますか?

畠中:でも逆に、ライブが去年より少ない分、じっくり考える時間が増えてます。ネタ作りの時間は長くなりました。

伊藤:確実に去年よりネタのクオリティ自体は上がってると思います。

――だいたい1本のネタが形になるまでに、どれくらいかかるんでしょうか?

畠中:2〜3時間でできるときもあれば、3日考えて案すら浮かばないときもあります。「こういうテーマでいこう」っていうのさえ決まってれば、1日1本はできるかな。

伊藤:できますね。

畠中:つくってやってみて「ここがダメだった」って直して、っていうのが僕らは多いんで。何回もライブでやってからじゃないと完成にはならないですね。

伊藤:完成は無理だよね。「この日が来ちゃったからこれで完成とします!」って感じです。

――YouTubeに昔の単独の映像をあげてるじゃないですか。

伊藤:音が小さい音が小さいと大クレームのやつですね。

――そうです(笑)。あの中に「想像妊娠」のネタがありますが、その後にM-1予選や『マイナビラフターナイト』などで披露されていたバージョンとはかなり違っていて、興味深かったです。

畠中:そうですね。単独ライブだったんで、あのときはおろしたてでした。

――つくって直してまたやってみて、という繰り返しの中で、ウケなかったところを削ったりするわけですよね。「ここは気に入ってるから、どうにかしてウケるようにして残したい」ということもあるんですか?

畠中:何度かチャレンジはしますね。お互い「これは言わせて」みたいな部分があると、1回やってウケなかったら「もう1回だけチャンスちょうだい」って残してみて、それでもウケなかったら「じゃあ変えようか」ってなります。

伊藤:それこそM-1用のネタだったらそういう部分は100パー削りますけど、そうじゃないネタだったらウケなくても入れることは全然ありますね。

――最近やってるネタでそういうくだりはありますか?

伊藤:「なんでやねん」って言いたかったなっていう思いがあるんですけど、関西出身じゃないんで言えないんですよね。それで「そりゃかなりなんでやねんだよ」ってワードで言わしてもらってて。それはもう本当に日に日にウケなくなってますけど、好きなんで外せないですね。

畠中:(笑)。

伊藤:似たようなので「話がちゃいまんがなすぎる」っていうのもあったんですけど、それはすぐ削りました。

畠中:あまりにもウケなかったね。僕でいうと、話の流れをつくっていく中で伊藤が何か言った後に一言返さないといけない場面で、「なるほどね」とか「そうそう」とかでもいいところを、まったく脈絡のない言葉を言うことが結構あるんですよ。「ありがとねぇ」とか「言うね〜」とか。それはそんなにウケないんですけど、毎回入れてますね。別にウケなくてもいい部分なんで、面白いと思ってくれる人がいりゃあいいなって。

伊藤:そういうのちゃんとやるの、大事だよな。シシガシラの脇田さんとか、それがめっちゃうまいんですよ。前に組んでたヨコハマホームランって男女コンビのネタで、本筋と関係ないところで脇田さんが相方の荻さんに触って「離してよ」って言われるくだりがあったんですけど、そこで普通なら「ごめんごめん」とか返すじゃないですか。
それを脇田さんは「知らなかったから……!」って言ってて、めっちゃおもろいなって。別にそこがウケてるわけじゃないんですけど、それだけでめっちゃおもしろい人なんだなってわかるんで、そういうのは要所要所に入れたいですね。

――「この人ちょっと変だな」って雰囲気が漂ってウケる下地ができそうですね。

畠中:そのニュアンスが伝わればと思って、邪魔しないくらいに入れてます。

――最後に、今年の上半期は、誰もが思うように身動きがとれない状況でした。普段と全然違う生活を経て、芸人として自分の中で得たものや変わった部分はありましたか?

伊藤:普通に、「やっぱ売れたいな」って再認識しましたね。自粛期間とはいえ働いてる人は働いてたじゃないですか。この状況になる前に売れてたらこんなことにならなかったなと思うと。

畠中:ニューヨークさんとかすゑひろがりずさんもそうですけど、YouTubeがすごい伸びてる人はむしろこの期間がプラスになったくらいなんじゃないかと思うんで、本当にいろんな売れ方があるなぁと思いました。僕らも一応、前からYouTubeをやろうとは言っていたのが、そういう状況になったことでちゃんとやろうと決意して続けるきっかけにはなりましたね。だからめちゃくちゃマイナスだけではなかったと思います。

伊藤:そうですね。しんどかったですけど、地獄ではなかったですね。

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――「新しいものに腰が重い」とnoteなどでも伊藤さんが書いてましたが、それを振り切るきっかけになったわけですね。

畠中:本当にずっと「やる」「やる」とは言ってたんで。

伊藤:お笑いに関しては、賞レースM-1に出てそこで「面白い」ってなってテレビに出て……っていう売れ方以外を考えられないんですよね。そうなると、ほかのことが邪魔だなって感じちゃうときがあるんです。最初に思っていたその売れ方がいちばんかっこいいなと思ってしまっていて。本当に良くないと思うんですけど。

――いろんな芸人さんにインタビューしていて、みなさん今はそこの迷いがあるんだなと感じます。

伊藤:柔軟なほうが絶対いいんですけどね。

――じゃあ今年もM-1で勝ち上がるしかないですね。

伊藤:まずは決勝にいくのがマストですね。

畠中:やっぱりいちばんの目標だし重きを置いてるので、とりあえず決勝目指します。

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――楽しみにしてます。

伊藤:遅刻して本当にすみませんでした。

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■オズワルドプロフィール
「2019年M-1グランプリ」決勝進出。畠中の独特で奇妙なボケに対して、伊藤が強くツッコまず困惑しながら話を合わせていくスタイルで、独自の世界観へ引き込む。白シャツにサスペンダーが特徴。

■インタビュー動画 「BEHIND THE STAGE」



祇園一会~オズワルド×コウテイ~
日程:2020年10月12日(月)18:15開場 19:00開演
※配信あり
配信開始19:00 配信終了20:15
※見逃し視聴は10/14(水)12:00まで※
会場:よしもと祇園花月(京都府)


空気階段×オズワルドトークライブ『幕張蟹』
日程:2020年10月14日(水)17:30開場 18:00開演
※配信あり
配信開始18:00 配信終了19:00(17:30よりOPEN)
※見逃し視聴は配信開始から24時間後まで※
会場:よしもと幕張イオンモール劇場(千葉県)


オズワルドさんったらもう
日程:2020年10月28日(水)18:45開場 19:00開演
※配信あり
配信開始19:00 配信終了20:00
※見逃し視聴は配信開始から24時間後まで※
会場:ヨシモト∞ドーム ステージⅠ(東京都)




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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE

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