快晴 雲ひとつない青空に彼らは吸い込まれた

春一番だね
この暖かい風が吹くともう春になるなって思うよ。

あの人は下を向いてそういう。
下を向くというのはちょっと大袈裟ね、すこぅしだけ下を向いて、が正しいわ。そして伏し目がちに。でも、変なの、これ、笑ってるのよ?

あの人を映す影はいつも縦長。
いつどんな時間も縦長。
そしてちょっとだけ大きく地面に映すの。

春風は強引に次の季節へぐんぐん押し出して、
あの人が上を向くのも、もう時間の問題ね。

あ。

急に、あの人は走って何かを捕まえた。

捕まえた。春。
これは僕の。
君ったら、ぼんやりして。

もう、

ー子供なんだからー
ーこどもなんだー

ふふ
これは僕の。
君も早く見つけて
それから、僕のところへ持ってきて、見せてよ。

2016.3.19
柳 月花

#小説 #ショートショート #短編 #お話 #創作

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