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異次元の恋人

この現実世界のわたしは、
ただ死ぬのを待っているだけの、
ただそれだけの、さびしい女。

そんなわたしが昨日、夢を見た。

夢の中のわたしには好きな人がいた。
とてもとても大切な人。
会いたいんだけど、でもずっとずっと会えなかった人。

そんな彼と夢の中で出会えた。

うれしくて彼のことを抱きしめたら、
彼の身体に違和感を感じた。

男らしく引き締まっていた彼の身体が丸みを帯びて、
胸も膨らんできている。

彼は女になってしまうの?
もう女になってしまったの?
だからわたしに会いに来てくれなかったの?

彼は説明をしてくれた。
なぜ彼がわたしに会えないのか。
なぜこんな身体になってしまったのか。

それについて、ていねいに説明してくれた。


わたしはもう夢から覚めた。

この現実に戻ってきたわたしは、
彼がどんな説明をしてくれたのかを、
もうすっかり忘れてしまった。

でも彼がずっとわたしのことを想っていてくれたことがわかった。

この世界では言葉にできないことが、
別の世界では言葉にできてしまう。

この世界では説明できないことが、
別の世界では説明できてしまう。

夢の中で起きたことをわたしは言葉にできないが、
でも「納得した」という感情だけが残った。

彼はわたしのことを忘れたわけじゃない。
彼はずっとわたしのことを想っていてくれた。

それがわかったから、
わたしは彼のいないこの現実世界でも生きていける。

次元が違っているとしても、会えないとしても、
好きな人がいるってことは、とても素敵なことだね。


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