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三ケ月(短編小説)

劇団ロオル公演【モノクロ】より

三ケ月(みかづき)スピンオフ小説

モノクロ公演DVD https://gekidanrole.thebase.in/items/2551608

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三ケ月


立ち止まると、汗が一気に噴き出してきた。
心臓が鳴るのが咽喉で感じるほどだった。
小さく深呼吸をする。
空は驚くほど青く、馬鹿馬鹿しいくらいに澄んでいた。
呼吸が整ってきて、ようやく足元に重みを感じて視線を移す。生温かな血液が靴に浸みて不快だった。足の上に転がっている屍を蹴りどかして、重たく息を吐いた。
「つまらねぇ。」

長きに渡り続く戦は、様々な国が陰謀を巡らせ泥沼となっていた。幾つもの国がこの間に陣地を拡げ、そして狭まり、そして、消えていった。
その中で、権力を圧倒的に伸ばし続けている国があった。戦々恐々と凍えるこの時勢に、国民が幸福を感じながら生きていける国。その違和感は他国に畏怖の念を感じさせていた。

「それもこれも、私のおかげってね。」

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