あんよ


電車に飛び込んだ時足に重症を負って3ヶ月は歩けなかった。3ヶ月が過ぎてようやく、歩くリハビリが始まって松葉杖と人の手を借りて少しだけ歩けるようになったけど普段は車椅子に乗って移動していた。夜トイレに行く時は自分で車椅子に乗って行った。でも看護師のミスでベットの近くに車椅子を置いてくれなかった。そこで看護師を呼べばいいものを何故か私は歩けるような気がして3ヶ月ぶりに1人の力で地面に足を付けて立とうとした。でもびっっくりするほど力が入らなくその場で崩れてしまった。向こうに置いてある車椅子まで這いつくばって行った。トイレに行ってもベットに戻ってもずっとずっと自分が弱い気がして許せなかった。

看護師さんは嘘をついた。

皮膚を無くして骨が丸見えだった足。皮膚を移植する手術をすると言われた。とても死にたい気分だったからどうでもよかった。皮膚があるかどうかなんて私には関係ない。歩けなくてもどうでもいい。只、死にたいだけで、何も考えられなかった。でも、手術をするためには同書にサインをしなきゃいけなかったらしい。サインを自分の意思でした記憶は無い。どうでもよかったからサインをした。たくさんの大人がしゃがんで私にサインをして貰ってもいいかなって言うからそんなの断るも何も無いじゃないか。同書に自分の名前とチェックをつけて、そっからはトントン拍子で気づいたら手術室の前だ。私が居たICUから手術をする場所まで、よく話しかけてくれた優しい看護師さんが車椅子を押してくれた。手術が始まる前に「綺麗なあんよなるよ」って言ってくれた。あんよ?一瞬なんの事か分かんなかったけどあんよが上手…足か!なんて考えながら少し嬉しかった。あんよってなんか可愛いなって思った。


14歳の頃に綺麗なあんよになるよって言われたけど、16歳の今もまだ綺麗なあんよは戻って来なかった。もうすぐ17歳だ。私の足はまだあの電車の下で下敷きになっているのかな。ごめんね。痛かったよね、きっと、痛いなんて記憶一切ないけれど、痛かったんだ。大切にしてあげるべきだった。ごめんね。あんよ戻ってきて。

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