見出し画像

子供達の奮闘〜空中ブランコ〜③

本番当日

ついに本番の日がやってきました。Tunaはなんら問題はないようで、いつも通り。Nicoは昨日の最後の練習では、なんとかなりそうなところまで来たという話。

ショーの開始時間は14:00なので、少し早めにショーへと向かう事にしました。

学校につくとサーカスのテントの中は既に半数は埋まっていて、期待に満ちた父母の熱気でムンムン。時間になると派手なシルクハットとベストを着たエンターテイナー風の校長先生が出てきて、短い口上を述べて、いよいよ始まりました。Nicoの事が気がかりで、心配でドキドキしながら聞いていました。

始まった途端、私の心配はある種の驚きに変わりました。

最初の方は幼稚園の小さい子達から始まりました。3歳くらいの子がちょこちょこと出てきてポーズ。単に出てくるだけのような状況。そして親たちは拍手喝采!!何やってるのかもあんまりよくわからない。次は平均台をフリフリを着た女の子が先生に手をもってもらって渡る……またまた拍手喝采!出演する子達も満面の笑顔で得意げなポーズ。

???いったい、こりは……?!?

クオリティ

日本のお遊戯とは全く違う状況であり、訓練をしたような様子は皆無。日本の組体操みたいなものがあったのですが、背中合わせに寄りかかるだけのような内容。もしもここで日本の幼稚園の組体操を披露しようものなら、驚きより先に非難されそうな感じで、落ちて骨折したニュースなんか漏らしたら、人でなし国のレッテルを貼られそうな気がしました。

難しい内容もあるにはあるのですが、その完成度は個人の裁量で、できる子もいればできない子もいます。それでも子供達は失敗なんてなんのその、自信満々、日本人とのメンタリティの違いに仰天でした。中にはもちろん緊張して取り組んでいる子もいたのですが、本当の数人で圧倒的に少数派でした。

前日までNicoの苦悩を聞いていた身としては、完全に拍子抜けでした。

それぞれの演目

Tunaの出番になりました。4本のはしごが出てきて、これはなかなかサーカスらしいぞ、と思ってみていると二本のハシゴを立てかけてみんなで押さえて登るだけ。しかもTuna、一番下……
ウムムムムム、これを1週間かけてやる事に何か意味があるのだろうか。いやいやいけないいけない、日本の尺度ではかってはいけない。

そしてついにNicoの空中ブランコの番になりました。ぶら下がって空中へ動かすのかなと思っていたら、地面から160cmくらいの高さでストップ。

へ?!?まさか……… こんな低い位置の、、、く、空中ブランコなの?!?!?

Nicoの話からの想像だったので、まさか身長くらいの位置での演技だとは、完全に想定外でした。

そして演技は続きます。2人づつの演技で、それぞれブランコにぶら下がってポーズを決めるという内容。それでも一連の競技の中では、サーカスらしい高難度の種目の1つでありました。
上手な子は鉄棒にぶら下がってくるりと翻ってバーの上に上がり、新体操のようなポーズをとっていました。かと思えばちょっとお尻を押してもらって鉄棒に登ったり、人それぞれです。左右きっちり揃えようとか、そういう気は全くないらしい。Nicoの番になり、ちょっとだけインストラクターに手伝って貰ったものの、ちゃんとバーの上にあがり、なんとか一緒のタイミングでポーズを決める事ができました。

ちゃんと出来たじゃあないの!

1週間、言葉はわからない、上手くもできない、友達いない、のないない週間で、流石のNicoも相当こたえたようで、夜ベッドの中で泣いていた日もありました。Nicoの頑張りを思うと、演技を見ながら思わず涙してしまいました。

が、……泣いている親は私だけ。


楽しむための行事

親も子も満面の笑顔でした。子供の存在自体を称えて割れんばかりの拍手!

思い詰めたりしないのです!
重圧に押しつぶされそうになったりもしないのです!
そもそも重圧なんてないのです。
なんなのだろうか、このメンタルの差は!いや、メンタルの問題だけではない。目的意識がどこにあるのかの違いだ!

オリンピック競技やフィギュアスケートの大会ではないのです。プライオリティは自分が楽しむ事。人に下手だと思われたくないとか、上手にやらなくてはいけないとか、そんなものはどうでもいいことです。この特別な1週間で、普段の学校と違う雰囲気の中で生徒たちがワクワク感を存分に感じて、楽しむことが何よりも大切という、そういう行事なのでした。

日本の運動会のように、先生が鬼の形相で怒鳴りながら、体力と気力ギリギリのところまで一糸乱れぬダンスを披露させる。怪我する可能性のある巨大な組体操を命懸けで作る。そういった日本の素晴らしい演技は、見てる父兄にとっては見応えある素晴らしいショーでしょう。でも考えてみれば、運動能力の高い子と低い子、やりたい子、やりたくない子のいる学校で、果たして何%の子供達が楽しかったという満足感を得るのでしょう?もちろん我慢して諦めずに何度もチャレンジすることもとても大事な事なので、ドイツ式のやり方が全て良いわけでもないのですが、素晴らしい演技の陰で、辛い思いをする子もいるという事を忘れてはいけないと思いました。

タターン!という盛り上げの音楽と、参加者の全員のやり切ったという満足感と、みんなの笑顔。
自分の馴染みの世界との違いに驚愕した日でありました。

#ドイツ #教育#小学校#海外生活#学校生活#学校行事#運動会

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?