はじめに

 道の上に枯れ葉がたくさん落ちている。時折靴に触れる葉がかさかさ鳴って心地よい。彩子さんは落ち葉の上を飛び石を踏むようにぴょんぴょん進む。得意そうにこっちを向いたから、前方の落ち葉をすべて除けて邪魔をしてやろうと思ったが、存外落ち葉が多過ぎた。あたかも彼女に踏まれるためにあるかのように、道の至る所に葉が落ちている。反対に、左右に立ち並ぶ亭々たる木々はその肌を露わにし始めている。冬が来る。長い冬が。

Zeit vergeht schnell.

 伯林の冬を前に、僕は筆を執る。きっと寒い。モーレツに。だから一寸暖を取ろう。この国には炬燵もないのだ。

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