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【SUBARUサンバーな男】

残念ながら、現在では、自社での軽自動車製造からは撤退しているが、「SUBARU(元の富士重工)」というメーカーは、名車〈スバル360〉を皮切りに、かつては実にユニークな軽自動車を作っていた自動車メーカーなのである。

さて、知り合いに、その「SUBARU製」のふるい軽自動車を所有している中年男がいる。

乗っているクルマは、平成11年~24年までの間、6度のモデルチェンジを受けながら販売された〈SUBARUサンバートラック〉で、彼が乗っているのが2代目の〈TT―2型:マニュアルミッション車〉である。

ところで、戦後「富士重工」が初めて作った〈スバル360〉は、後ろにエンジンを積んで後輪を駆動させる〈RR型式〉のクルマであったが、後ろの低い位置に荷台があるにも拘わらず、この〈サンバートラック〉も〈RR〉の駆動方式を採用した、他社にはない、チョッと変わった軽トラなのである。軽トラは、運転席と助手席の下にエンジンを置くのが通常なのだ。

そして、3気筒エンジンが主流の軽自動車エンジン界の中にあって、コストの掛かる660cc.の4気筒エンジンを搭載しているところがまた凄いのだ。

更には、〈軽トラ〉のくせに、サスペンションが4輪独立懸架という、考えられないくらいのオーバークオリティを誇る軽トラなのだ。

・・・・・・・

「SUBARU」という会社は、実は、戦時中に名機「零式艦上戦闘機」を製造していた〈中島飛行機〉が前身で、流石に一流の航空機技術者を抱えていた会社だけのことはあって、戦後、自動車製造に転向してからも、その技術者魂は生き続けていたという訳で、性能への拘りが尋常ではない。

彼は言う。

「このクルマはさぁ、シフトチェンジする時の音がサーキットみたいで好きなんやぁ~」

つい先日、走行距離が12万kmを越えたというこの〈サンバートラック〉は、エンジン始動にはコツがいるし、またこのクソ暑い時にエアコンが故障中だというオマケまで付いているにも拘わらず、それでも可愛い「我が愛車」なのである。

さらに申せば、旧車に金を掛けてレストアをし、ピッカピカのクルマに乗るという、そういうタイプのクルマ好きではないのだ。ベンツにも全く興味がないというし、謂わば、実用の意味での〈スバルサンバートラック〉ファンなのだろう。第一、車体の至る所に点在するさびだって、一切気にも掛けないくらいなのだから・・・

だから、この〈サンバー〉で大阪から広島には行くし、夫婦で埼玉にも行くし、12時間掛けて金沢にも行ったのだ。

痺れるエンジン音をBGMにして・・この夏も汗だくになりながら今日もハンドルを握る、天晴れな「SUBARUサンバー男」なのである。


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