【ベランダの女】

娘の〈T〉は、お婿さんの〈K君〉と、２歳５ヶ月になる女の子〈Eちゃん〉と仙台で暮らしている。正確に言えば、黒ポメラニアンの〈のあ君〉も一緒である。

さてある日のことだった。ベランダに出ていた娘が部屋に戻ろうとした時、〈Eちゃん〉が内側からサッシ戸の鍵をロックしてまったのだった。

ベランダから、手振り身ぶりでロックの開け方を説明する娘なのだが、如何せん２歳５ヶ月の〈Eちゃん〉には二重ロックを開けることは無理だったのだ。

泣き喚く〈Eちゃん〉なのだが、スマホは部屋の中だし誰にも連絡することが出来ないのだった。

しかし幸運なことに、住んでいるマンションが２階だったので、意を決した娘はベランダの手摺を乗り越えて１階まで飛び降りたのだった。

幸い怪我もなく、タマタマ近くに居た近所の人の家から〈K君〉に連絡、管理会社に電話して貰って、ドアを開けて貰うことに成功したのであった。

ドアが開くや、真っ先に〈Eちゃん〉のところに駆け寄った娘であったが、〈Eちゃん〉は既に泣き止んでいて、いい子をしてソファでゴロゴロしていたそうである。

もしも２階じゃなかったら、相当ヤバかったかもしれない。