【若気の至り】
昭和の時代である。
熱燗を3合呑んだ後、毎夜のように、愛車〈S―12型シルビア〉に乗り込んでは国道バイパスを暴走するのが楽しみだった。
或る夜などは、後ろから煽ってきたクルマと競り合い、時速160kmまで出して対抗したのに、3Lの〈ソアラ〉に追い抜かれていったこともあった。
〈ソアラ〉に敗けたことにムシャクシャしながらバイパスを下りると、交差点の信号が赤だったので已む無く停止する。
長い赤信号だなぁ~、と、イライラしながら待っていると、助手席側の窓の外に1本の道路標識が立っていることに気が付いた。
暫くは標識を見詰めていたが、やがてグローブボックスに手を伸ばし、中から〈ベレッタM―92Fのガスガン〉を取り出す。
そして助手席側のパワーウィンドウを「ウィ~ン」と下げると、構えた〈ベレッタ〉の照準を標識に合わせるや直ぐに連射した。
「シュポン❗️シュポン❗️シュポン❗️」
バレルから飛び出したBB弾が標識に命中して弾け飛ぶ。
「キ~ン❗️キュ~ン❗️キュイ~ン❗️」
1発も外すことなく射撃できたことに満足して〈ベレッタ〉をグローブボックスに戻した。
やがて信号が青になると、ターボ車独特の排気音を響かせて、〈シルビア〉は交差点を走り去って行く・・・
・・・そんな無謀な友人がいた。
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