【Freshジュースの話】
ホテル勤務時代に同僚から聞いた話である。
当時、彼は地方のある有名な老舗ホテルの宴会課に勤務していた。
さて、ある日のことであった。彼は、1組の高貴な御夫妻への朝食をサービスする担当となったのだった。
超VIPへのサービスだということで、周りのスタッフも落ち着かない様子である。
御提供するその日のメニューは〈洋食〉だった。添えられる〈Freshジュース〉には、御夫妻の好みによって、〈パイナップルジュース〉と〈グレープフルーツジュース〉とが、それぞれ用意されていた。
・・・・・・・
やがて〈朝食会〉がスタートし、御夫妻は和やかに食事を楽しまれている風である。
ところが〈 Freshジュース〉を提供する段になって、彼は困り果ててしまったのだ。
こともあろうに、彼は前夜大酒を呑んでいて、大変な二日酔い状態だったことから、調理場から運ばれてきた、8オンスタンブラーに入れられた〈パイナップルジュース〉と〈グレープフルーツジュース〉の識別が付かないのだった・・
どちらも色がソックリである。薫りを嗅いでもよく判らない。御夫妻がそれぞれ御所望された通りの〈ジュース〉を間違いなく提供しなけらばならないのに、どっちが〈パイナップル〉でどっちが〈グレープフルーツ〉なのかが判別出来ないのだ。
・・・意を決した彼は、それぞれの〈ジュース〉に、人差し指を突っ込んでは舐め、突っ込んでは舐めして、味を確かめたのである。
「よしっ❗️こっちが〈パイン〉でこっちが〈グレープフルーツ〉だ」
こうして、間違えることなく、お二人の御所望通りのジュースを提供することが出来たのであった。
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