見出し画像

【現役フリーランスに聞いてみた#03】自分の人生だから自分で選びたい。 フリーランスになって初めて人生の主人公に

※本記事は、ギークスマガジンにて2017/07/07に公開した記事です。

読者の皆さんは、“フリーランスエンジニア”という言葉からどんな働き方をイメージするでしょうか?今「フリーランス」の働き方が注目されています。中でも、専門技術職であるエンジニアは、この働き方がマッチする職種です。

しかし、まだ実態を知れる情報は少ないのが現状です。フリーランスを目指すエンジニア、悩んでいるフリーランスエンジニアにとっては、リアルでもネット上でも「先輩」を探すのは難しいですよね。

今回は、現役フリーランスエンジニアにインタビュー。なぜフリーランスを選んだのか?何を乗り越え、何に気付いたのか?そして、この先何を目指すのか? 「先輩」たちの生の声をお届けします。

今回紹介するフリーランスエンジニア Mさん

画像1

大学卒業後、電子機器メーカーへ入社。ハードウェアの設計や品質保証、特許の権利化などを経験します。2009年にキャリア転向を決意し、IT専門学校にてプログラミングの学習を開始。自身のプロダクトを制作し、2011年には会社を設立。その後2012年から常駐型フリーランスとしての働き方を始めます。現在も自身の会社のプロダクトに改善を重ねながら、平日は企業内で常駐型フリーランスとして活躍をしています。

「自分の人生だから自分で選びたい」自分らしく働くための決断

Mさんは、今いるIT業界とは異なる電子機器メーカーから、キャリアをスタートさせました。現在は物腰柔らかく人付き合いの良いMさんですが、ご自身の入社当時を振り返るとコミュニケーションでとても苦労をされたといいます。

「入社当初、私は上司にも思ったことをそのまま言ってしまうような部下でした。仕事は一生懸命していましたが、このため上司の評価は良いものではありませんでした。その会社には12年勤めることになりますが、思うように評価が得られませんでした。最終的には自分のやりたいことを仕事にするため、以前から温めていたアイディアをベースに起業しようと退職をしました。」

長年勤めあげた会社を辞め、独立するということは生半可な決意ではありません。でもMさんには会社勤めに対しての未練はありませんでした。

もちろん会社にはよるものの、上司との関係が評価に影響してしまうのが”会社員”という働き方。特にMさんの働いていた会社では、進む道を決めるのは自分ではなく上司の方だったようです。当時のMさんは、このしがらみから解放され、進む道を自分で選ぶことで、自分らしく働くことを願っていたのです。

キャリアチェンジし、起業。苦労の日々「それでも楽しい」

退職をきっかけにIT業界での起業を目指したMさんですが、プログラミングは未経験。専門学校に通い、一からプログラミングの勉強を始めます。しかし、文字通り”何も”分からなかった当時のMさんは、大変な苦労をすることになります。

「まず何から勉強するべきかが分からないので、Webサービスを作りたいと思っていたのに、 Visual Basicを学んでサービスを作り始めて。後からそれは妥当じゃないと気が付いてJavaで作り直したり。今思えばPHPで十分なのに。デザイン、インフラ、ネットワークも学び、結果的にその学校のカリキュラムはほぼやり尽くしましたね。」

勉強はプログラミングだけにとどまりません。起業するために何でも自分で実現できるようになりたいと、エンジニアにデザイナー、コピーライター、カメラマンとビジネスマッチングサイトを使ってあらゆる職種の人に教えを請いました。

「起業した当初は休む暇なんてなかったけど、とにかく楽しかったです。やりたいことをやれている実感がありました。当時いろんな人に話を聞いて回りましたが、今思えば本当に良い方ばかりで。その方々の中には今でもご縁のある方がいますが、そうした出会いが今の私の貴重な財産となっています。」

苦労した営業活動。支えになったのは ” 自分で手を動かした実績”

画像2

プログラミングを学び初めて2年後、努力の末に自社サービスをリリースします。当時は二度新聞に掲載されるなど注目を集めました。しかし、売上は思うように伸びません。改善のためのリニューアルも行いましたが、生活費、学習費、開発費で手元のお金が底を尽きてしまい、エージェントを利用した常駐型フリーランスの働き方を平行して始めることになります。

「SES一社目の成約を出すのはとても苦労しました。当時の私には実務におけるIT業界でのキャリアがありません。なかなか仕事が決まらない中、悩みながら行ったのが、“経歴書に自分のやってきたことを徹底的に落とし込むこと”です。」

そうしてなんとか成約を獲得したMさん。

「一社目の参画当初は、IT企業で働くのが初めての経験だったために初めて耳にする言葉ばかりな点では苦労しましたが、技術的には問題なく対応することが出来ました。」

1社目での実績が評価されると2社目からはスムーズに営業活動を進めることができました。

「フリーランスとして営業するときに”やっていてよかった”と思ったのは自社サービスのポートフォリオがあったことです。今考えると出来がいいものではなかったかもしれませんが、伝聞でなく自分で経験したことなので、商談の場で自信を持ってアピールができます。」

フリーランスになり、ようやく自分の人生の主人公に

画像3

フリーランスになり、 収入や人間関係、勤務地、睡眠時間、健康などあらゆる意味で状況は改善し、精神的にも肉体的にも落ち着けるようになったといいます。

「やっと自分の人生の主人公になれました。自分の進む道を、確実に自分で選べています。正社員のときは、良くも悪くも上司との関係が自分の評価に大きく影響します。そして自分の進む道は、自分ではなく上司が選択します。

特に私がいたメーカーは、組織への人の出入りが非常に少ない環境だったので、より一層その傾向にありました。フリーランスになったことで、人間関係でうまくいかないことがあっても、『いざとなれば参画案件を変えればいい』という、心に余裕のある状況になりました。」

業界も移ることにしたMさんにとって、IT業界へ転向したことも大きな契機になったようです。Mさんいわく電子機器メーカー業界と比較してIT業界は上司との関係をそつなくこなすよりも仕事自体の成果を評価する傾向を強く感じるらしく、彼にとって、それはとても心地のよい環境でした。

しかし、すべての人がフリーランスになれば状況が好転するわけではなく、向き不向きがあるというのがMさんの意見。

「私としては、やっぱりフリーランスの方は“仕事が好き”な方が活躍できる気がします。プログラミングが大好きだからプログラマーになったような方のことです。自分自身で主体性を持ってどのように働いていけば良いかを考えるからでしょうか。」

人間関係に苦労した会社員時代。でも今大切にしているのは「人とのつながり」

フリーランスになるにあたり会社員時代に準備してよかったことを聞くと、意外な答えが返ってきました。それは“一度徹底的に上司の言うことをシンプルに聞いてみること”。

「私は会社員時代に人間関係で散々失敗をしました。でも、失敗しながらも『これはだめなんだ、あれはだめなんだ』と一つずつ問題を潰して正解に近づけていったんです。昔は人の話を上手に聞く方法が分からず、人から指示されたことを自分なりに勝手に解釈していることがあったため、余計なお世話となっているケースがありました。

結果、不明点はしっかり確認しつつも、自分の解釈で余計な配慮をするより理解したご指示をシンプルにそのまま対応するのが実は一番スマートであることを経験的に学びました。」

人から言われたことに自分で推測を加えて判断してしまったり、独りよがりなバイアスを掛けてしまったりと、ごちゃごちゃと考えてしまうことで、齟齬が生まれてしまいます。違和感があるならそのまま質問してしまえばいいので、まずはシンプルに考えることを意識し、Mさんはコミュニケーションスキルを上げていったようです。

これからやっていきたいこと

画像4

Mさんが今後自社サービスにおいて目指すのは、大きく儲かるものでなくても、日々多くの人が使い定期収入が入ってくるような仕組み作り。リアルでいう自動販売機のようなモデルがイメージです。メンテナンスだけで報酬を得れるようになれば、愛されるサービスを追求するための時間ができ、自由な時間ができ、自分のやりたいことへも挑戦がしやすくなるはずだといいます。その仕組みを作る資金を得る意味でも常駐型フリーランスの働き方は重要です。

「フリーランスとして参画する案件では、自社サービスに還元でき、自分の価値を上げ、結果報酬も上げやすいものに挑戦できたらと思っています。具体的には、集客・統計解析・機械学習に関する領域です。基本的には、ITエンジニアとして後発の僕は、ひたすら努力するしかないと思っているので、自分の足りない部分を少しでも任せてもらえる現場で働きたいですね。」

自分の将来をしっかりと見据え、夢を描きながらも、決してコツコツした努力を怠らないMさん。エンジニアとしての開発スキル、コミュニケーションスキル…何においても、自分が努力を諦めなければ、成長するのだという勇気をMさんのお話から感じることができました。

私流フリーランスエンジニア3つの教訓

今回Mさんのインタビューから3つの教訓を得ることができました。

■ 経験が浅い人こそ経歴書は作りこむ
フリーランスになった当初ITエンジニアとしての経験が浅く、経歴書には一行しか書けなかったというMさん。同じく経験が浅い方に向けてのアドバイスが「ひとつでも、すごくこだわったこと、『好きだ』という理由でもいいから頑張ったこと、それをきっちり職務経歴書に落とし込む。」実力や実績が重要視されるフリーランスにとって、それを明示した経歴書は何より大事にすべきということでしょう。
■ フリーランスならしがらみから開放される。それでもなお人間関係は大事にすべき
フリーランスは正社員に比べ、職場の人間関係が自分に与える影響が小さくなります。それでも、自分の評価をするのはクライアントですし、人とのコミュニケーションを避けて仕事をすることはほとんど不可能です。人間関係の構築が苦手な人にとってフリーランスは一つの選択肢になるかもしれません。しかし、人とのコミュニケーションを円滑にする努力を怠っては、フリーランスとしても十分に活躍することは難しいかもしれません。
■ 仕事が好きな人はフリーランスで活躍しやすいのでは
好きなことであれば、人は自発的に取り組みます。自ら勉強をして主体的に仕事を考える仕事と、人から指示された、“やらされ”仕事では、仕事の質・スキルの成長に圧倒的な差が生まれます。高いスキルや即戦力を期待されるITフリーランスは、自主学習と成長が常に求められます。その努力を続けられるかは、“仕事が好きか否か”が大きく関係してくるのではないでしょうか。

\ ITフリーランスの働き方に興味がある方はこちら /


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?