見出し画像

パリ・オペラ座の日々1993~1994:5月13日 パリ・オペラ座「ローラン・プティ」


5月13日

午前中は雪はバレエ、Gは寝る。午後ラベイリーさん宅へ行って、アパート外壁破壊の件について話す。

夜はオペラ座。ローラン・プティのプログラムをサン・ヴィジヴィリテ(立見席)で観た。モニク・ルディエール、カデール・ベラルビー、ピエトラガラなど出演。とにかく素晴らしい。「Le loup」と「若者と死」が特に良かった。若者~に出ていた男の子はまだプルミエだけど、すごく元気で好印象。モニクは絶好調。

カルネ 39F
魚屋 15F
玉ねぎ 6F
イチゴ 8F
牛乳 6F
バレエレッスンチケット 480F
オペラ座ペリエ 15F
プログラム 60F


画像1

さて、オペラ座ではローラン・プティ振り付けのプログラムが始まりました。

ローラン・プティ(マルセイユ国立バレエ団)、
モーリス・ベジャール(20世紀バレエ団、ベジャールバレエ団)、
ジョージ・バランシン(NYシティバレエ団)、
ジョン・ノイマイヤー(ハンブルクバレエ団)、
マッツ・エック(クルベリバレエ団)、
ウィリアム・フォーサイス(フランクフルトバレエ団)…

世界的に著名なバレエ振付家の多くは、振付家・芸術監督として常任のバレエ団に所属しているのが常です。ところがパリ・オペラ座にはそういった常任の著名な振付師は見当たりません。それはこのバレエ団のためにぜひとも振り付けしたい、踊ってもらいたいと世界中の著名な振付家が常にパリへとやって来るからです。自身の振り付けを、世界最高水準のダンサー・バレエ団で具現化してみたい。長い伝統と格式、厳格なメソッドとヒエラルキーがこのバレエ団を特別な存在にしています。

もちろん振付家が所属バレエ団を率いてパリ・オペラ座(ガルニエ宮)で客演というケースも多々あると思いますが、パリ・オペラ座バレエ団とコラボして公演することには唯一無二の価値感があります。ガルニエ宮ではそういった舞台を次から次へと観ることができるわけですから、これはもう眼福というか至福というか、見ないでどうするよ!という話なわけです。

ということでローラン・プティ。この時も、もちろん本人がリハーサル段階から全面的に参加して舞台を作っていました。まだまだ現役感バリバリだった頃です。公演の初日は舞台挨拶にも姿を現していました。

画像2


演目は、
・Debussy pour sept danseurs(1990) 音楽:Debussy
・Les Forains(1945) 音楽:Henri Sauguet
・Le loup(1953) 音楽:Henri Dutilleux
・Le Jeune Homme et la mort(1946) 音楽:Bach

1990年製作の「7人のダンサーのためのドヴィッシー」を除けば、いずれも振付家としてのプティの初期の作品が並んだプログラムです。適度な物語性・演劇的要素、抒情的なムードが印象的でした。王子様&お姫様が…というクラシカルな世界観からは離れ、庶民的な市井の人々の姿を描いているように感じられました。


画像3

「7人のダンサーのためのドヴィッシー」については、あまり書けることがありません。じつはよく覚えていない…(笑)(すいません)。ピアノ曲に合わせてモダンバレエ的な振り付けが繰り広げられていたような気がします。ストーリーのようなものはありません。

下の写真にある通り、エリック・キエレ、カロル・アルボ+ウィルフイード・ロモリ、ナタリー・リケ+ステファン・エリザベ、アニエス・ルテステュ+ファビアン・ルークという面子。当時まだスジェだったルテステュが光っていました。オーレリー・デュポンもそうですが、大成する人は位が下の段階でも舞台上ではピカピカに輝いています。観客はみなよく分かっているので、そういった目立つ人への拍手はひときわ大きくなります。
上演時間25分。


画像4


Les Forainsは「旅芸人」「露店商人」の意。舞台から舞台へと旅する一座の悲喜こもごもが描かれます。

この日はプラテールとドゥラノエがメイン。シャムの双生児(Les Siamoises)役でミテキ・クドーとロール・ミュレ。この頃すでに日本でもCMなどで話題になっていたかな…。ミテキちゃんは、オペラ座の大エトワールだったノエラ・ポントワと舞踏家の工藤大貮さんとの間に生まれた娘です。この時期が一番上り調子だった頃かもしれないですね。この年の12月にはポントワのアデュー公演が控えていて、そこでは親子共演の機会もありました。日本的な静謐な美しさのある人でしたが、その分舞台全体を支配するような圧倒的な迫力には欠ける印象を受けました。Wikiで調べたところ、その後1997年のピナ・バウシュの公演で抜擢されるなど脚光を浴びる場面もたくさんあったみたいです。
上演時間30分。



画像5

Le loup「狼」
ローラン・プティの振り付けは、演劇的要素が濃いように感じていますが、このLe loupもそういった作品です。狼男と恋に落ちてしまった娘が、村人たちによって引き裂かれる悲劇が描かれます。

モニク・ルディエールとカデール・ベラルビーが本当に素晴らしかったのです。日本でLDでバレエを観ていたころからモニクは一番のお気に入りでした。シャープで確実な踊りと高い演技力。ここから何度も何度も感動することになるわけですが、ようやく生の舞台を見れてとても嬉しい夜でした。
上演時間20分



画像6

(公演プログラムから ジャン・コクトーの描いたローラン・プティのスケッチ 1946年)

Le Jeune homme et la mort(若者と死)
超有名作品で、ローラン・プティの代名詞といっても良いでしょう。脚本がジャン・コクトー。リアルタイムでコクトーと共同して製作した作品ですから、エッジが効いているいるというか詩的な世界観がひしひしと伝わってきます。

日記に「プルミエだけれども元気が良い男の子」と書いているのは、ニコラ・ル・リッシュです。今まさにエトワールへと駆け上がろうとする勢いそのままの素晴らしい舞台でした。この後6月の「ジゼル」でエトワールに指名されました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?