見出し画像

パリ・オペラ座の日々1993~1994:12月4日 国立ナンシー・バレエ団「オンブル」


12月3日

(雪)はまたしても体調があまり良くなくてFIAPをお休み。(G)のみ年末のくるみ割り人形のチケットの買い出し。すごい人で1時間くらい並んでやって購入。その後FIAPへ行って授業。ハルカさんは今日で終了。授業後カフェで話し込んでたらイリフネに行く時間が無くなってそのまま帰宅。最新号のOVNIを見たら、このアパートのアノンスが掲載されていて焦る(笑) 慌てて日本のNさんにTelした。

プリズニック 60F
オペラ座チケット 120F
カフェ 10F


年末はパリ・オペラ座も「くるみ割り人形」。今回は定番のヌレエフ版ではなくて、ノイマイヤー版ということで期待大。チケットも人気で普段よりも競争率が高い感じでした。日本のように12月24日前後だけでなく、12月後半に14回、1月後半も7回公演があり合計21回。他のプログラムは10回前後の公演回数でしたから、このくるみ割りはバレエ団としてもかなり気合の入ったものだったんでしょう。

年間プログラムを眺めて、帰国までに観れるのはここまでだね…みたいな話がだんだん出るようになりました。オペラ座バレエ団の公演としては、このくるみ割り、そして「ニジンスキー」というプログラムが最後になりました。翌年5月のバヤデールもぜひ観たかったのですが、そんなのはキリが無い話ですから…(笑)



12月4日

日中はなるべく大人しくして、夜だけナンシー・バレエ団の「オンブル」を観にパレ・デ・コングレへ。幸運なことにアレッサンドラ・フェリが主演の日だった! でも会場はガラガラ…。遠慮なく前の方の高い座席に移動して観劇。フェリはやっぱり素晴らしい。フリオ・ボッカがぐるぐる回り過ぎて面白い。でもやっぱり作品がちょっと地味かな。ロマンティック・バレエだからということを差し引いても、演出がいまひとつなように感じた。

客席にエリザベット・モーランが観に来てた。最後に大道具がドカッと崩れてしまい、それもちょっと笑えた。。

水 50F
プログラム 50F
案内係へ 10F
vetier(ロッカー) 20F


画像1


画像2

パレ・デ・コングレは、17区にある国際会議場、大型ホール、ホテル、ショッピングモールなどの複合施設。僕らが住んでいたパリの東側とは正反対の西側ですが、メトロ1番線で行けるのでわりとシンプルな移動です。

この日観たのは国立ナンシー・バレエ団の公演です。ナンシーは、フランス北東部の所謂アルザス・ロレーヌ地方の街。ガラス工芸のエミール・ガレの活動などで有名ですね。

ナンシー・バレエ団は、この1993年時点でパリ・オペラ座の芸術監督だったパトリック・デュポンがかつて芸術監督を務めていたバレエ団です。妻は1991年に開催されたデュポン率いるナンシー・バレエ団の来日公演(プティ「アルルの女」、ノイマイヤー「ヴァスラフ」、ベジャール「サロメ」などの意欲的なプログラムだった)を観ており、すごく良い印象を持っていたみたいです。

ただ、1990年にデュポンがパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任すると、後釜としてナンシー・バレエ団の監督に就任したのは、ロマンティック・バレエを得意とするピエール・ラコットでした(1991-1999年まで芸術監督)。ということでこの日の演目は、”もろ”ロマンティック・バレエの「オンブル」だったわけです。

ピエール・ラコットは、パリ・オペラ座でも大きな存在感のある人で、ロマンティック・バレエ系の演目(6月にオペラ座で観たジゼルも彼のバージョン)は彼の改訂版が上演されることが多いです。「ラ・シルフィード」など失われかけていたクラッシックな演目を保存・復元した功績は大きいということです。大エトワールのギレーヌ・テスマーの旦那さん。


この日の演目「オンブル (l'ombre)1839年」は、イタリア出身で後にスウェーデン王立バレエなどで活躍したフィリッポ・タリオーニ(Filippo Taglioni 1777- 1871)の作品です。オンブルとは仏語で「影」の意。

画像3

(フィリッポ・タリオーニ)


フィリッポ・タリオーニの娘はやはりダンサーで、舞台上で初めてチュチュを着用し、トゥ・シューズでつま先立ちしたと伝えられるマリー・タリオーニ。フィリッポが振り付け、マリーが主演してパリ・オペラ座で初演された「ラ・シルフィード(空気の精)1832年」はロマンティック・バレエを代表する作品となりました。

画像4

(マリー・タリオーニ ポアントで立っています)


でも実際にはタリオーニの振り付けは失われてしまったケースが多く、このオンブルについても、1993年にピエール・ラコットが復元して初めての上演機会だったようです。そういう意味ではすごく貴重な舞台を観ているんだけど、当時はまったく理解しておらず…(笑)

ピエール・ラコットのWikiを観ると、彼が復元した演目が並んでいます。

1972: La Sylphide (1832)
1973: Coppélia (1870)
1976: Pas de six of La Vivandière (1844)
1976: Pas de deux of Le Papillon (1866)
1978: La Fille du Danube (1836)
1980: The Swiss Milkmaid (1821)
1981: Marco Spada (1857)
1982: Le Papillon (full ballet) (1866)
1993: La Gitana (1838)
1993: L'Ombre (1839)
1995: Le Lac des fées (1840)
2000: The Pharaoh's Daughter (1862)
2001: Paquita (1846)
2006: Ondine (1843)

パキータ、コッペリアもあります。こういった演目が現在一般的に全幕で上演されるには、彼の尽力があったというわけです。過去のものを復元・保存するというのは地道な活動ですけど、これは偉大なことですね。

で、この日の舞台は…というと…じつはあんまりよく覚えてない(笑) ははは。。。日記を観るとプログラムを購入してるんですけど、それも見当たらず(笑) アレッサンドラ・フェリとフリオ・ボッカが客演していたことは日記から分かります。フェリはLDで「ロミオとジュリエット」を観ていたので大ファンでした。ロマンティックな演目にはピッタリのキャストですよね。

と思ったら、すごい動画発見!!!
このときの舞台のためのリハーサル映像!!!!!
すごいね、なんでも出てくるYouTube(笑)


ナンシーバレエ団は、1968年の設立(アミアンで)当初から現代的な振り付けを好む団体でした。その後デュポンの時代、ラコットの時代を経て、1999年に国立振付センター(CNN)という団体の所属となり、名称も「国立振付センター・ロレーヌバレエ団」となりました。2011年にスウェーデンからピーター・ヤコブソンを迎え、より現代的な作品を上演するバレエ団として継続しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?