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パリ・オペラ座の日々1993~1994:7月20日 南仏旅行①「ゴルド」


7月20日

AM7時にリヨン駅から出発、TGVで一路南へ。一等車で快適な旅。アヴィニヨンに到着し、すぐにバスに乗り換えてまずはカヴァイヨンまで。乗り継ぎだけの予定だったのだけど、次のバスまで時間があったのでクレープ屋さんで食事。ランチメニューでウサギを初めて食べた。早生メロンで有名な土地でデザートで出てきたけど、やっぱりすごく美味しかった。まだ時間に余裕があったので町のすぐ脇の岩山で登山。二時間くらいかけてお喋りしながらゆっくり上った。頂上からの眺めが素晴らしく、パリ生活でのイライラは吹き飛んでしまった。

18:15分のバスでゴルドへ向け出発。19時すぎに到着。日が長いのでまだまだ明るいから村の中を散策。ゴルドは何から何までスーパー素晴らしい景観で感動の連続。南仏プロヴァンスのイメージを丸ごと具現化したような素晴らしい村。予約しておいた宿も可愛らしくて清潔で大満足。夕飯はお向かいの宿屋兼レストランの「プロヴァンサル」で。ここがまた人生で指折りの体験になるような素敵なレストランだった。目の前で焼いてくれるピザ、トリュフとフォアグラがどっさりのサラダなど筆舌に尽くしがたい!なによりも、そこに集う旅行客、お店の人たちが織り成すムードが本当に最高。忘れられない夜になった。

朝食パン 16F
TGVのカフェ 27F
バス 36F
お昼レストラン 132F
水 6F
バス 36F
カフェ 20F
レストラン「プロヴァンサル」 192F


待望の南仏プロヴァンスを巡る旅行に出発です。


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まずはアパートの管理人フレデリックが推薦してくれたプロヴァンスの村「ゴルド Gordes」を目指して、新幹線のTGVでアヴィニヨンまで移動。ここは1309年から始まった「教皇のアヴィニヨン捕囚」以降、1377年までの69年間に渡って教皇庁が設置された場所で歴史的にとても重要な場所です。


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(アヴィニヨンの教皇庁。立派な歴史地区なんだけど帰りに観光することにしました)


でも僕らはゴルドへと向かうバスの時間があったので教皇庁関連は全部スルーして、とりあえず中継地点のカヴァイヨン(Cavaillon)へと向かうバスに乗り込みました。アヴィニヨン観光は帰りにということにしました。


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(カヴァイヨンの町。奥に見えているのがリュベロン山)

バスで1時間くらいのカヴァイヨンという町に到着。ここでゴルド行きのバスに乗り換えるのですが、あいにく4時間後くらいの便しかありません。ゆったりカヴァイヨンを観ようということになりました。

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といってもローカル鉄道の駅前兼バスターミナルがこんな感じですからお店もそんなにたくさんありません。半端なく寂れていて、平日の日中ということもあり人通りが本当に少ない。まずは適当に見つけたクレープ屋さんでお昼ご飯を食べました。


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ごくごく普通のランチメニューだったのですが、初めて味わうラパン(ウサギ)のお肉がマスタードソースとマッチしてとても美味しいし、お店のおばさんたちもすごく親切で良いお店でした。大都会のパリだとなかなかこういうお店には巡り合えません。

その後まだまだ時間があったので、腹ごなしに町のすぐ脇にある山に登ってみることにしました。

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山というより丘ですね。ゴツゴツした岩だけのサン・ジャックの丘。けっこうハードな登りでトータルで2時間くらい散策しました。

頂上まで上がると…

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こんな感じで町が一望できます。岩ばかりで草木が低いのがプロヴァンス地方の特徴です。年間を通じてとても厳しい風(ミストラル:フランス南東部独特の乾いた強風)が吹き続けますので、植物は岩石にへばりつくようにしか育ちません。

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夏らしい強い日差しと、カラッとしたプロヴァンスの風がとても心地よいひと時でした。


夕方6時過ぎのバスにようやく乗り込み、そこからは1時間くらいでゴルドに到着しました。夏で日が長いので、夜7時過ぎでもまだまだ日中のように明るくて、バスからだんだんゴルドの様子が見えてきます…


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ゴルド村の様子。崖にへばりつくように建てられた家々の様子は、「天空の城」と表現されることも。この光景が目に入ってきたときの感動が伝わるでしょうか。これぞプロヴァンス!と言いたくなる素敵な村の佇まいです。はるばる訪ねて良かったと心から思いました。

予約してあったTante Yvonneも、小さくて素敵な宿でした。1階はレストランになっていて、2階、3階に一部屋づつ。2部屋しかありません。部屋の内部はとても綺麗な設えで、まるで友人の家に泊めてもらっているような心地良さでした。窓からはお向かいの城と、村の中心である広場が見渡せます。陳腐な例えですけど、まるでジブリの世界に迷い込んだかのような感じです。

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夕飯は広場を挟んでお向かいにある「プロヴァンサル」というお店で食べました。こちらも民宿なのですが、少し規模が大きくて一階のレストランもキャパが大きめで賑わっていました。ここの食事がまた最高だったんです。これはもう文章ではとても表現しきれないのですが、とにかく人生の中で最高の食事といってもよいような時間でした。

三ツ星シェフが作るような料理が出るわけではありません。レストランの中央にはピザ窯があり、そこでお爺ちゃんが次々にピザを捏ねて焼いています。窯から出て来た巨大なピザがハイよ!とばかりにそのままテーブルに回され、運ばれてくる新鮮なサラダにはトリュフとフォアグラがてんこ盛りに添えられています。そして口にする何もかもがシンプルで美味しい。

良く冷えた土地のワインCôtes du Luberon(コート・デュ・リュベロン)のロゼがこれまた最高。

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でもこの夜を最高なものにしていたのは食事だけではないんです。それは何よりもこのお店に集っている人たちの醸し出すムード。旅行客もお店の人たちも何もかもが幸せに包まれているように感じたんです。隣のテーブルの家族連れは、頼んだ料理が想定外に量が多すぎると言って真剣な議論になっていました(笑) 

それはなんというか、自分の権利や取り分ばかりを気にしてきゅうきゅうと暮らす都会暮らしとは正反対のもの、おおらかで、誰かをもてなす喜びに満ち溢れた世界でした。単に田舎だからということではなく、この歴史ある静かな場所に暮らすことに誇りを持ち、自分たちの土地に深い愛情を持っている人たちの心からのもてなしだからこそ感じた感動だったのだと思います。この夜のことを思い返すと、今でも少し涙が出そうな気持ちになります。それくらい素敵な食事でした。


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(夜更けのゴルドの路地。ニューシネマパラダイスの画面に迷い込んだかのような素晴らしい時間。)

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