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N.B.A. 高橋功樹さん@アーツ千代田3331


昨日、仕事終わりの夕方にアーツ千代田3331へ展示を観に行ってきました。お目当てはNo.207の部屋のギャラリー「Gallery OUT of PLACE」で7月26日からスタートした「N.B.A. nothing but art」という企画です。



関西で活躍されている3人の作家を紹介する企画なのですが、その中の高橋功樹(こうじゅ)さんの作品をどうしても見たかったのです。高橋さんは1987年生まれの奈良在住の作家です。2018年に初めての個展を奈良で開催し、今まさにキャリアをスタートさせたばかり。でもその作品から漂うオーラは圧倒的なものがあります。

というのも、彼の作家活動は20歳の頃からスタートしているのです。10代で美術家を志したものの、美術大学の経由を前提とする既存の美術教育システムに疑問を抱き、以降そういった美術界のメインストリームの歩みとは距離を置き、ひたすら奈良の自宅で読書と思考を積み重ね、自身の表現を磨き続けてきました。作品制作は12年も前からずっと継続し続けているそうです。世に問うべきだと思える作品が仕上るまで、ずっと孤独に自己研鑽をしてきたのだと。

こう書くと仙人とか、滝に打たれる修行僧のような難解な人物を想像するかもしれませんが、高橋さんご自身はとても明るくて気さくな方です。ただお話すればすぐに分かるのですが、哲学、音楽、美術の膨大な知識量、思考の深さがもの凄いんです。10年以上、孤独に自己研鑽を続ける日々を過ごしてきたわけですが、それは自己満足の思考形成ではなく、人類が長い年月をかけて築いてきた英知をコツコツとした努力で学び、美術の範疇に留まらない広範な知識を吸収するための時間だったのです。そんな中で、やがて1950~60年代米国のロスコなどの抽象絵画、国内の鎌倉期の美術表現などに触発されて、だんだんと現在のような独自の抽象表現が確立されてきたようです。

(今回のアーツ千代田3331での展示の一部です)

木製パネルに漆喰を塗り重ねて顔料を定着させるフレスコ画の手法で描かれています。素材の質感、何層にも重ねられた漆喰の複雑な表情。人間が人間存在としてシンプルに生を全うしていた時代、中世・ルネサンスの絵画と向き合うような静謐な気持ちになります。



こんなに熱く語っておいてなんですが…(笑)

実は僕は高橋功樹さんの作品を拝見するのは初めてだったんです!でも本当に期待以上というか、想像の何倍も実際の作品は素晴らしかったです。

ちょうど一年くらい前に、他の作家さんの展示会場で偶然お話させていただいたのが出会いなんです。その時の会話があまりにも楽しすぎて、すっかり惚れ込んでしまいました。美術教育の話をずいぶんしましたし、音楽の話もたくさん。クラッシック音楽への造詣の深さには圧倒されました。僕が大好きなクラッシック・バレエの話題になったときでも、打てば響くというかとにかくあらゆる分野に博識。そしてただ物知りというのではなくて、その情報を咀嚼して自分自身の存在の糧とする力が只者ではないという印象でした。

それ以降ネットを探ったり、どこかで展示を拝見する機会がないものかとずっと待ち望んでいました。27日に仕事をしていたら案内のDMが届き、慌てて夕方駆けつけてきました。ちょうどレセプションのタイミングで、ご本人もいらしたし、画廊のみなさんともたくさんお話できて楽しい時間でした。

9月1日までのずいぶん長い会期です。ご興味持たれた方がいらしたら、ぜひアーツ千代田3331へ足を運んでみてください。

木曜日ー日曜日 12時~19時
(月)(火)(水)は休廊。8月12日~21日も休廊。


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