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パリ・オペラ座の日々1993~1994:6月29日 パリ・オペラ座「バランシン&ロビンス」②


6月29日

午前中、下の家が引っ越してしまった。よく泣きべそかいていた坊やがいなくなって寂しい。午後駅前に出てチコローズを買った。可愛くて綺麗。夕方はオペラ座で「バランシン・ロビンス」の二回目。同じボックス内で一緒になった日本人のおばちゃんと話し込む。コオロギ君たちも来ていた。ロール・ミュレが良い。

八百屋・牛乳 27F
ピンボール 5F
食器カゴ 25F
チコローズ 35F


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振り付けのバランシン、ロビンスについては前回少し書きましたので、今日は個別の演目について。

「テーマとヴァリエーション」はバランシンの代表作といってよいでしょう。今日でもニューヨーク・シティ・バレエ、パリ・オペラ座バレエ団、東京バレエ団など多くのバレエ団がレパートリーに取り入れています。筋立てのようなものは無く中心軸はあくまで音楽です。チャイコフスキー作曲の「管弦楽組曲第3番ト長調」の第4楽章「主題と変奏」 に沿って、ダンサーたちが幾何学的な構成で(でも情感あふれる)美しい動きを見せてくれます。これは本当に素晴らしいバレエで、ラストへ向かう盛り上がりの部分では毎回感動してしまいます。



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ジェローム・ロビンスの「Moves」は、舞踏の抽象化に挑戦したバランシンのさらにその先をいく舞台です。バランシンは音楽を翻訳するような振り付けをしましたが、このMovesには音楽がありません。無音のバレエなんです。ちょっと抽象化が行き過ぎなんじゃない?とも思いますが、これも一つのチャレンジだったのでしょう。無音ですのでソロの部分はなんとかなりますが、何人かのグループで踊る部分はタイミングがとっても難しいと思います。お互いの呼吸とか、何らかの動きが合図になって群舞は動いているようでした。音が無いので、ダンサーの息遣いや身体の作り出す音が際立って、とても緊張感のある舞台です。



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最後はショパンの曲を使ったジェローム・ロビンスによる楽しい演目「コンサート」。舞台上には一台のグランドピアノがあり、実際にピアニストがそこに着席して演奏を始めます。そのコンサート会場に、ひとり、またひとりと癖のある観客が集ってきて…という展開。これはとにかくユーモアあふれる振りで大好きになりました。Movesという無音の張り詰めた演目の次にこれを持ってくるところが流石だなぁと思います。全編大好きなシーンの連続なのですが、僕が特別心を動かされたのはコントみたいな浮かれ騒ぎの後にやって来る雨のシーン。ダンサーたちが普通に傘を持って舞台上を横切るだけの振り付けなのですが、ここに込められた気持ちの深さに毎回大感動でした。ジェローム・ロビンスの振り付けは心の深いところにグッと響いて来るんです。


もうすぐヴァカンスシーズンというムードが漂い始めたパリの街の空気と、この「The Concert」の舞台の様子が僕の心の中では分かち難く結びついています。ダンサー達にとっても、このプログラムは1992-1993年シーズンの締めくくりとなるもので、バレエ団、オペラ座の会場、パリの街の人々…みんなが少しおセンチになっているように感じたのでした。




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