医者(いしゃ)は医者(せんせい)に非ず

「どちらも選べる事が在るべき姿なんだ!尊厳死も、延命と同様に!」

穏やかな私でも、その時は百雷落ちるよう感情を込めて反論した。
あなたが産まれて10年。でも、ほぼ脳死での誕生だった。

病名は、低酸素性虚血性脳症。
・寝たきりで床ずれ発症、関節も頭も変形してしまう。
・痰がつまってもセンサで苦しくなるまで伝えられない。つまると鼻から管を通されて吸い出される、一日に何回も。だから、管で鼻腔内が傷ついて鼻血が出る。
・目蓋を閉じられず、細菌が入って目が腫れ上がってしまう。
・排便しても、数時間おきの定期回診でおむつ交換を待たないといけない。
・慢性的な汗疹(あせも)が悪化してあかぎれとなり、ひび割れになる。
全てが不自由で、回復はなく苦痛だけが無期限に続く。

絶望した。あなたの立場に立つと一日でも早く解放されたい。延命は望まない、治療の差し控えによる看取りつまり尊厳死を希望した。すると、医療者から様々な非難を浴びる。
「医療ネグレクトに相当します」
「気管切開する為にも親権を預けませんか?」
「治療に同意頂けないのなら、児童相談所に相談します」
といずれも該当しないのに、事実に沿わない看護師の発言
「なぜ胃ろうと気管切開が出来ないのか!」
と感情的な主治医の脅迫
「他の病院も調べてみましたが、治療の差し控えは不可能です」
とすぐにあきらめて医者と看護師にまかれるソーシャルワーカー

延命か尊厳死か、ALS患者など大人でも迷う。なのに、なぜ子供は延命一択なのか。いくら繰返し尊厳死を希望しても専門家にムリと言われ続けると、素人はやはりムリなのだと思ってしまう。そこまで自分たちがひどい親なのか、職種・性別・年齢・国籍各々が偏らないよう身の回りの色々な人に聴いて回った。ほとんどが、私達と同じ選択をするとの答えだった。死生観の殴り合いで、医療者と私達はずっと平行線。
そこで、事実を基に話そうと、ダメ元でセカンドオピニオンを受けることにした。本当に尊厳死が不可能だと、自らの手で自分達を追い詰める可能性もある。怖い。尊厳死にも理解を示されている国内と国外の病院計3件受けた。すると、いずれも治療の差し控えによる尊厳死は可能と回答があった。内一件は、事例まであった。
この強制延命から降りられると分かり、安心した。素人が3か月調べて看取りの実績が分かるのに、専門家達は1年間何を調べていたのか。なぜ、ここまで苦しまないといけなかったのか。安心、怒り、落胆が渦巻いて離れない。医療者は全く事実に基づかず、個人の独善性で判断しているのだ。

私は延命を否定していない。どちらも選べる事が在るべき姿だ。重要で繊細な点なので繰り返し述べる。

 延命も有り
 それと同格で尊厳死も有り
 対立関係ではない、選択できる共存関係なのだ。

ここから尊厳死実現までは、以下を参照頂きたい。

結果、7年半もかかってしまったが、尊厳死は実現できた。あなたはもう苦しまなくて済む。しかし、残った家族のその後は、決して楽ではない。なぜなら、本土である家庭にて尊厳死実現という総力戦を7年半続けたので、30代という働き盛りの職歴を焼失して戦後の焼け野原に立っている。役職も収入も変わらない、戦時下にあれだけ公私とも頑張ったのに…、「のに病」になる。

日本は必死に出生率を上げようとしている。しかし、増え続ける医療的ケア児を十分に周知せず、生まれた医療的ケア児の療育は若い夫婦に負わせている。明日を担う若い夫婦とその子供が、長く苦しむことがあってはならない。その時は、この記事を参考にしてほしい。
この問題は、患者だけに限らない。なぜなら、皆さんもいつかは老いて寝たきりになり、同じ選択を迫られる可能性がある。大怪我や大病でそうなる可能性もある。そうなってからでは、自身で選択できない。尊厳死と延命の選択に年齢は無関係。子供にもこの選択に市民権を獲得できれば、巡って大人にも貢献する。また、医療的ケア児には多額の医療費がかかり、皆さんの税金や医療保険を使う。その限られた貴重な原資を、医師だけの独善性でなく我らの意思ある選択で使われるべきだ。

上記リンクは要約で端的に分かりやすいが、実際の苦労は伝えにくい。少しでも多くの方に認知してもらい、延命と尊厳死が選択できる世界の実現を願って自身のケース詳細を書き記していこうと考える。

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