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横浜DeNAベイスターズのファンになった

イントロダクション

横浜に来て早4年。ちょうどコロナ禍に入る直前に引っ越してきた。人生の大半をフッド(地元)を離れて転々と暮らしてきたので、自分の住んでる地域への愛着や誇りがあまりない。いや、全くない訳ではないが、元々生まれ育ったネイティブに比べるとやはりどうしても薄い。胸を張ってレペゼンできないのだ。

横浜の前は静岡県の浜松に3年間住んでいた。浜松は祭りが盛んな地域で、なぜか夏以外でもあちこちで花火が上がっていたりする。クレイジーな土地だ。夏のある日、近所の神社の前を通ると、お揃いの半被を着た老若男女の集団が練り歩いてきた。すごい人数だ。男達は汗だくで神輿を担いでいた。巨大な山車が次から次へとやってくる。俺も混ざりたかったが、その輪の中には入れなかった。そもそも入り方も知らない。町内会とか青年団とかそういうやつ?つまり皆と一緒に盛り上がることはできない。

ある程度の都市ならば基本的にどこに住んでも生活スタイルはさほど変わらない。普段は仕事に追われ、飲食やショッピングやレジャーでリフレッシュし、そしてまた新しい一日が始まる。どの地域に住んでいようと、やることは同じだった。でも昨年(2023年)から横浜DeNAベイスターズのファンになり、地域密着のチームを応援することになって、俺もある意味「神輿を担いでる」気持ちになった。晴れて真の意味での横浜市民になれた気がする。


俺と野球

俺は野球が好きじゃなかった。いや、どちらかと言うと嫌いだった。俺の故郷は北陸なのでプロ野球チームがない。JリーグチームもJ1〜J3まで気になって今調べたがなかった。プロスポーツ不毛の地なのだ。同級生たちは「なんとなく」巨人ファンだったり阪神ファンだったりしたが、俺はそういうのダサいなと思い、いまいち興味が持てなかった。もちろん野球の基本的なルールは知っていたし、友達と公園で遊んだり、野球マンガを読んだ記憶もあったが、自分とは無関係なコンテンツとして、特に今まで意識を向けることなく人生を過ごしてきた。

なぜ世間の人々は、あんなにスポーツでバカみたいに盛り上がれるのだろうと日頃から疑問を感じていた。TVのニュース番組では必ずスポーツコーナーがあるし、自分以外のほとんどの人々は、プロ野球やオリンピックやワールドカップなど、皆何らかのスポーツに熱狂していた(ように思えた)。俺は地元愛があまりないし、愛国心が特別強いわけでもないので、祭りの輪に入ることに抵抗があった。

反面、音楽や映画などのサブカルチャーに関しては人一倍のめり込んでいた。比較的パーソナルな趣味だったので居心地がよかったのかもしれない。それもあってか、それらのサブカルチャーとスポーツは自分の中でなんとなく切り離して考えていた。俺は特にアメリカのヒップホップやR&Bなどの音楽やストリートファッションが大好きなのだが、俺が被るNEW ERAのニューヨーク・ヤンキースのキャップには特に意味合いはなかった。ヤンキースやメジャーリーグに関する知識はゼロだった。ただ、なんとなくかっこいいと思っただけだった。


きっかけ

そんな人生を過ごしてきた俺が野球に注目するきっかけになったのは、あまりにもベタで、ベタすぎるくらいベタで死ぬほど恥ずかしいのだが、去年(2023年)のWBCだった。実は今までWBC(World Baseball Classic)という野球の国際大会の存在自体もよく知らなかった。思い返すと、2009年のWBC、あのイチローの決勝打に関しては、当時勤めていた職場の応接室のTVで仕事の手を止めて皆と観ていた記憶があるが、当然俺は興味ゼロだったので特に興奮もせずに「おー打った!パチパチ」と冷めた目で拍手していた。

話を2023年に戻す。ある日、俺と同じく野球に興味が全くない妻と一緒に夕食を食べながらTVをつけたら、ちょうど野球中継が放送されていた。日本代表と阪神タイガースとの試合。これはWBC本番に向けた練習試合らしい。他に観たい番組がなかったので何気なく観ていたら、これがめちゃくちゃ面白かった。いくら野球に疎い俺でもさすがに大谷翔平のことは知っていたので、あの片膝を付いて放った特大ホームランには度肝を抜かれた。

日本代表チームはどんどん勝ち進んでいった。俺と妻はどんどんハマっていった。全試合かじりつくように観た。韓国戦の放送時は、俺はちょうど友達のバンドのライブを観に行っていたのだが、試合が気になってしょうがないのでスマホで速報を時折チェックしていたくらいだった(ごめん!)。そして準決勝や決勝戦にはあのようなマンガや映画を超えたドラマがあった。

観るまでは大谷以外、俺は誰一人知らなかったが、日本代表の選手たち「侍JAPAN」はまるでマンガのようなキャラ立ちをしていた。わかりやすかったのだ。アメリカ生まれのガッツ溢れる切り込み隊長、お調子者の強打者、異様に球が速い投手、足が速い選手、守備が上手い選手、不調に苦しむ三冠王(前年度の流行語大賞に選ばれた選手だが、当時は誰?と思ってた)、そして言わずと知れた完全無欠のスーパースターな主人公など。

TV中継時に画面の隅に野球用語が表示されるのが初心者向けで良かったし、最近の野球ファンがよく使っているミーム(「源田たまらん」「デスターシャ!」など)が紹介されるのも「あー、野球にもそういうのあるんだー」と面白がれた。

WBCでの興奮冷めやらぬまま、俺はもっと野球が観たいと思った。生まれてはじめて野球に関心を持ったのだった。WBC2023の代表メンバーはとても豪華だった。音楽に例えれば、ヒットチューン揃いのベストアルバム。今後のステップとしては、各アルバムを聴いてみたくなったのだ。


横浜の球団

俺と妻は今度は生でプロ野球の試合を見に行きたいねと話していた。現在俺らが住んでいる横浜にはDeNAベイスターズと言う球団があるらしい。俺が子供の頃は確か大洋ホエールズと言う名前だった。正直セ・リーグの中でも地味な印象を持っていた。いろいろあって改名したようだ。それすら知らなかった。

横浜には横浜スタジアムと言う球場もある。中華街のすぐ近く。何度か前を通ったこともある。街中にある立派な球場だ。ペナントレースはすでに始まっていた。ちょうどイベント期間中で試合後にミニライブがあるらしく、4月26日のゲストはラッパーのKREVAが出る。KREVA観てえ!これはお得だ。俺はオンラインで予約して妻と観に行った。


初観戦

生まれて初めて中に入ったスタジアムの景色に俺は圧倒された。選手の名前が書いてあるユニフォームや、かわいいマスコットキャラが描かれた応援グッズを手にした多くの観客でロビーはごった返していた。そしてコンクリートの外周通路から真ん中のグラウンドに抜けた瞬間、緑と茶色と青い空が一気に飛び込んできて俺はたまらなく高揚した。

試合はとても面白かった。選手の名前は全く知らなかったが(かろうじてWBCに出ていた牧秀悟選手だけだった。今永昇太投手も知っていたが、この日は出場していなかった)、観客は選手たちの一挙手一投足に興奮し、一人一人に作られた応援歌を歌っていた。見様見真似で手拍子をし、歌ってみた。ビールも大変美味しかった。野球場で飲むビールは格別だと思う。この世で一番ビールが合うシチュエーション。試合後のKREVAのミニライブも知ってる曲ばかりでイッサイガッサイ楽しめた。


そして沼へ

非常に満足したので、それ以降、ベイスターズの試合をよく観るようになった。チケットが取れたらハマスタ(横浜スタジアム)へ足を運び、家でもTVやニコ生などで試合観戦するようになった。

シーズン中のプロ野球の試合は1球団あたり約140試合。基本的に週6(月曜だけ休み)もあるので、俺の日常は急に忙しくなった。もちろん全試合を観ることはできないが、試合結果やハイライトをチェックするなど、他の趣味や用事を減らしてでも野球の時間に割り当てる必要があった。現地観戦はもちろん、選手名鑑を買ってデータを読み込み、各選手の応援歌やチャンステーマを覚え、グッズを買い漁るようになった。ほとんどの観客は何かしらのグッズを身に着けているので、普段着の素のままで球場に行くのはちょっと恥ずかしいのだ。これは祭りなので半被を着るべきなのだろう。

ズブの素人なので、とにかく覚えることが多い。俺は凝り性なので、一度興味を持つとディープに知識を吸収したくなるのだ。

各選手のデータはすべて数値化されており、数字の読み方がわかるとより楽しめる。基本となる打率や防御率はなんとなくわかるが、OPS、WAR、WHIPなどの英語の略語はさっぱりわからなかった。

ピッチャーが投げる球種も、ストレート、カーブ、フォークくらいしか知らなかったが、近年ではツーシーム、スプリット、カットボール、チェンジアップ、ナックルカーブ、そしてスイーパーなど一気に増えており、その違いがわからなくて混乱した(いまだによくわからない)

ネットと野球

現代の野球カルチャーを楽しむにはネットが欠かせない。対立軸がはっきりしているのでネットと親和性が異様に高く、常に盛り上がっている。俺は別アカを作りSNS等をチェックしてみたが、スラングやミームが多すぎてよくわからない。それらは主に「なんJ・なんG・おんJ」と言われる、いわゆる2ch系の掲示板から誕生しているようだ。

現在も使われてるネットスラングの多くは「なんJ・なんG・おんJ」の野球由来の言葉が多く、最も有名なものはドミンゴ・グスマン選手の名前から取られた「〜ンゴ」だろう。あと金本知憲アニキから来た「〜ニキ」とか。

とにかく、それらを追わないと話についていけない。何か話題があると、すぐにYouTubeやTikTokに「なんJ・なんG・おんJ」のまとめ動画が大量にアップされる。自動音声読み上げソフトで作られた簡素なネタ動画を毎晩観続けた。特に2年連続最下位になった中日ドラゴンズは「チュニドラ」と揶揄され、やることなすことネタにされてバズりまくったので、中日ファンには大変申し訳ないが楽しませてもらった。

YouTubeではまとめ動画以外にもいろんな野球系の動画を観るようになった。球団の公式チャンネルや過去の名場面集はもちろん、球界OBはみんなYouTubeをやってるのでそれらもチェック。俺が好きなのは今浪隆博のスポーツメンタルTV。自ら「二軍の帝王」と名乗り、プロ野球の裏事情や視聴者の疑問点をかなり丁寧に解説してくれる。ドヤらないし、悪口を言わないし、隣に女性アシスタントを置いてないのも清潔感があって好印象(レジェンドOBはそれをやりがち)

野球実況系YouTuberもたくさんいて、ベイスターズの配信だとあまちゃずる青海一星が有名。コメント欄のライブ感が楽しい。他球団だがオリックスファンの応援系YouTuberB-モレル、タイガースファンのきちを。、ドラゴンズファンの中日ガチ勢アウトローインハイなんかの応援動画やネタ動画を楽しませてもらってる。現役の一流選手でありながら、ゲーム配信系YouTuberとしても活動しているライオンズの平良海馬投手のたいらげーむTairaGameも切り抜き動画をよく観てる。そんなこんなで、一度観るとオススメ動画として毎回トップに挙がってくるのだ。これは依存症のあるドラッグだ。

日本のプロ野球(NPB)の一軍を追うだけでも大変なボリュームなのに、さらにファーム(二軍)や育成選手、社会人野球、高校野球に至るまで気になってくる。音楽に例えると、つまりインディーズのシーンもチェックしたくなってくる。もちろん、日本人選手が増えている本場アメリカのメジャーリーグ(MLB)も観たい!こんな感じで収拾がつかなくなるのだ。その結果、俺の可処分時間はゴリゴリに削られた。


2023年を振り返る

2023年のベイスターズは話題盛りだくさんだった。毎年こんな感じだったらかなり面白い。

まずは、なんといってもトレバー・バウアー投手。MLBでサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を獲ったが数々の問題を起こして日本にやってきた。お騒がせ系YouTuberとしても有名になり、数々のバズやネットミームを生んだ。

その後はセ・パ交流戦での優勝、からの転落。何かやらかすとすぐにミーム化される山﨑康晃選手や京田陽太選手や関根大気選手。不調の佐野恵太キャプテンの涙。ハマのプーさん「プニキ」こと宮﨑敏郎選手が首位打者になり、東克樹投手が山本祐大捕手とのバッテリーにより「祐大のおかげ」で最多勝投手に。そして、エース今永昇太投手のMLB挑戦など。

ベイスターズは結果的にCS(これも全く知らなかった。各リーグの上位3チームが争うクライマックスシリーズの略)は3位に終わったが、その後も優勝した阪神の試合を見たり、その後のオリックスとの日本シリーズや、アジチャン(アジアプロ野球チャンピオンシップ)を見たり、シーズンオフにも契約更改やFA移籍、ドラフト会議などに注目したりして、野球そのものを目いっぱい楽しんだ。


2024年に期待する

そして明日は開幕戦。いよいよ2024年のプロ野球シーズンが始まる。今年からとうとうベイスターズ公式ファンクラブBlueMates」にも入ってしまった。何枚かタダ券がもらえるので、複数回ハマスタに行くなら結局お得だからだ。飲食やグッズ購入でポイントも付くし。

プロ野球を好きになって生活が向上したことが二つある。まず一つは夫婦仲が良くなったこと。俺と妻は世代が離れてることもあって、通ってきたカルチャーが異なっており、音楽や映画などの趣味が全く合わないのだが、野球という共通の趣味ができたことにより、以前よりもよく話すようになった。球場にもなるべく一緒に行くようにしている。

次に心身が健康になったことだ。別に日頃からそれほど運動をしてるわけじゃないのだが、インドアな趣味に比べると球場で大声を出すのはストレス発散になる。年を取ると音楽ライブでも大声を出すのは抵抗があるが球場ならOKだ。平日の労働で疲弊した後にビールを飲みながらウサを晴らす。これが正しきジャパニーズのライフスタイル。

まとめると、野球という長い歴史を持ち、一生かかっても食い尽くせない巨大なコンテンツに興味を持つことで、俺の生活に新しい彩りが加わった。以前は「どこに住んでも結局同じ」と思っていたけれど、今では住んでる地域に誇りを新たに感じるようになった。

今後は同じベイスターズのファンのみならず、他球団のファンとも交流を持ちたいと思っている。ビジター(アウェイ)の球場にも足を運ぶ予定だ。これからも新たな喜びや感動が待っていることを心から楽しみにしている。


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