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再生可能エネルギーで、地域に循環経済を生み出す「たんたんエナジー」

京都市では、世界の平均気温を1.5℃までに抑えて、「将来の世代が夢を描ける豊かな京都」を実現するため、2050年までに二酸化炭素を出さない社会・経済活動への転換を目指しています。
そのためには、市民の皆様一人ひとりの生活が、二酸化炭素を出さない、脱炭素なライフスタイルに変わっていくことがとても大事です。でも、脱炭素なライフスタイルって言われてもよくわからないし、めんどくさそう……と思われる方も多いのではないでしょうか。
連載「こんな取組が始まっています。あなたも参加しませんか?」では、参加することで日々の生活がちょっと脱炭素に近づいていくような、身近な取組をご紹介します。

今回は、たんたんエナジー株式会社の代表取締役 木原浩貴(きはらひろたか)さんに、再生可能エネルギーに関する取組や、今後の展望などについてお伺いしました。

再生可能エネルギーで地産地消の実現を目指す「たんたんエナジー」

オンサイトPPAで、太陽光発電システムや蓄電池を設置した「体育館」

ーー現在、たんたんエナジーで行っている取組について教えてください。

たんたんエナジーは、丹波・丹後とつながり、地域を元気にするエネルギー事業を目指して電気を販売しており、ほとんどの顧客が、再生可能エネルギー由来のCO2排出ゼロの電力(※再エネ非化石証書等を使用)を選択されています。私たちは、地域とつながる電気をお届けするため、3つの取組を進めてきました。

1つ目はFIT電力、卒FIT電力(※)をお預かりし、福知山市の市役所や学校に再生可能エネルギー由来の電力を供給する事業、2つ目が家庭や小規模事業者向けの電気代の一部を活用し、地域の事業者を応援する「電気で繋がる美味しい丹波・丹後キャンペーン」です。

2021年度に実施した事業の中で最も特徴的だったのが、3つ目の「市民参加型のオンサイトPPA(Power purchase Agreement:電力販売契約)」です。具体的には、地域金融機関からの融資と市民からの出資を組み合わせて、福知山市内の体育館や学校給食センターなどの屋根に太陽光パネルを設置し、発電所や防災拠点を構築する事業です。

※固定価格買取(FIT)制度によって電気事業者に買い取られた電気。卒FITは、FIT制度による買取期間が満了した発電設備のこと

ーー「オンサイトPPA」には、どのような形で参加できるのでしょうか?

令和3年度の事業は、1口1万円から参加できる形にしました。また、3口以上出資した方には、福知山城・福知山市児童科学館などの入場券セット、もしくは京都北部の体験・宿泊の魅力発信サイト「北色(KITAIRO)」の体験及び宿泊予約に使える3,000円分クーポンのいずれかを特典としてご提供しました。

ーー環境問題には、どういった経緯で関心を持つようになったのでしょうか。

高校生の頃に、英語の授業で温暖化の文献を読んで、「これは非常にまずい状況だよな」と思ったのがきっかけです。最初の動機は危機感でしたが、環境問題に本気で向き合って社会を変えていく人々や、国外での成功事例を目の当たりにして衝撃を受けたというか、率直に面白いと感じたんですね。そこから、環境問題への関心が高まっていきました。

大学生になって、NPO法人「気候ネットワーク」でのボランティア活動を開始し、小学校で温暖化に関する授業を行うプロジェクトなどを担いました。その後、気候ネットワークでの勤務を経て、京都府地球温暖化防止活動推進センターの立ち上げに携わり、設立後に同センターで働くようになりました。同センターでは、ウッドマイレージCO2を組み込んだ京都府産木材認証制度の構築、学校給食や社員食堂での地産地消によるフードマイレージ削減などの取組を経験しました。

これらの取組を通して、地域で資源やお金を循環させることが、気候変動対策につながることを実感しました。エネルギーの地産地消の取組をもっと推進したいという想いから、2018年に「たんたんエナジー」を創業しました。

「我慢」を強いる環境活動は、誰も幸せにならない

木原氏

ーー取組を普及させる過程で得た気付きがあれば教えてください。

小学校の出前授業では、「1人ひとりのこまめな取組が大切です」と環境活動への参加を呼びかけていましたが、最近これは間違いだったのではと感じています。学術的にも「負担意識」が気候変動問題への無関心を生み出してしまう可能性が指摘されています。

「一人ひとりが反省する」のではなく、逆にみんなで議論して「脱炭素型の素敵な暮らしや社会」を思い描くことが重要で、「そっちの方が良いやん」と、これを実現するための政策が支持されることが必要だと思います。

ーー制度や政策で、「環境問題に取り組むのは当たり前」という空気をどれだけ作っていけるかという話ですよね。

そうですね。先ほど紹介した「電気で繋がる美味しい丹波・丹後キャンペーン」も、環境問題に貢献したいという理由で参加する方ばかりではありません。ただ、取組を通して、消費者と生産者の繋がりが生まれることが、環境問題を考える最初の入り口になると思っています。

未来の暮らしや社会について会話することが環境活動の第一歩

売上の一部を福知山成美高校に「SDGs推進応援金」という形で寄付されました。
写真は贈呈式の様子

ーー木原さんの今後の展望をお聞かせください。

まずは再生可能エネルギーを利用した自治体や企業様のイメージアップに取り組む、事業体を作っていきたいです。

また、国際情勢の緊迫化によるエネルギー供給の不安定化や、パリ協定によるエネルギー転換により、近いうちに再生可能エネルギーの獲得競争が始まると予測されます。京都産の再生可能エネルギーの買い付けや発電所づくりを推進し、地域にある資源やエネルギーを地域で循環させられる仕組みを構築していければと思います。

もう少し長期的な展望では、気候変動対策だけでなく、まちにおける防災力の向上や、地域の農産物に目を向けられるきっかけ作りなど、少しでも明るい未来が見られるような取組をしたいですね。

ーー環境のためにできる第一歩として、どんなものがあると考えていますか。

「脱炭素=身近な省エネ」のイメージがありますが、こまめな省エネによる効果は大きくはありません。もちろん意識して省エネに取り組むべきですが、家庭における温室効果ガスの排出量は、発電所で出された家庭用の電気や自家用乗用車による排出を合わせても、20%しかありません。

個人の方ができることは、家族や友達と未来の暮らしや社会について語り、「選ぶ」ことだと思います。

具体的には、「家をリフォームするなら、燃費が良く、快適な家にしよう」や「地元産の食べ物を選んで、地域の農家さんを応援しよう」など、自然の恵みやエネルギーで、暮らしや地域、企業活動をどう持続させるかについて語ることが大切だと思います。

こういう会話が当たり前になれば、関心を持つ人も増えるだろうし、それによって購買行動が変わり、社会も生活の質の高いものへ変わっていくのではないかと思います。

関連リンク
・たんたんエナジー

https://tantan-energy.jp/

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