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【銀座や丸の内なら利回り1%でも良いが住まいなら利回り5%以上の物件を選ぶ】

1.銀座中央通りの高値取引物件

少し古い話になりますが、2013年10月4日の日刊ゲンダイで、銀座中央通りの「ティファニー銀座本店ビル」をソフトバンクの孫正義社長が高値で買ったと報道されました。ロイター通信の報道によれば、孫社長の購入金額は320億円で、リーマン・ショック前の2007年にゴールドマンサックス系の不動産ファンドが取得した380億円が「異常な高額取引」だと注目された物件です。その後、リーマン・ショックのあおりで物件の価値が下落。ゴールドマンサックス系の不動産ファンドが期限までにローンを返済しなかったので、売却権は銀行に移譲されました。孫社長の購入額はその金額に迫る、かなり割高な投資だとみられていました。記事にはみずほ証券チーフ不動産アナリスト・石澤卓志氏によれば買収金額から得られる期待利回りが2.6%だと記載されています。
賃貸ビルとして運用するのには一般に3.5%の(期待)利回りが必要だと言われていますから通常の投資事業としては採算が取れません。五輪がらみでこれから不動産市場に資金が流入して地価が上がる、そして転売利益が得られるだろうとの期待があったのかもしれませんが、はたしてこれ以上の価格で転売ができるのかと疑問視するコメントもありました。

2.取引利回り(期待利回り)と還元利回り

投資物件を購入する際に着目する利回りは、その物件から得られる年額賃料を購入金額で割って計算する取引利回りです。話を分かりやすくするために単純化して、現在も将来もお金の価値は変わらないと仮定すると、取引利回りは期待利回りと一致します。その場合期待利回り5%の物件は毎年5%の賃料が得られ20年で投資金額を回収できます。20年で投資金額を回収できる物件の還元利回りは5%です。還元利回りは不動産の価格を査定するときに、純賃料を割り戻して元本価格を算定するのに用いる利回りです。還元利回りは物件の種類や内容によって異なります。土地ならば地域ごとに異なりますが、将来も物件価格やお金の価値が現在と変わらなければ、期待利回りと還元利回りは一致します。
将来賃料が上昇して期待利回りが大きくなるとみられる物件ならば、その分だけ還元利回りは小さくなります。そのような物件は投資物件としては有利な物件です。将来賃料が下落して期待利回りが小さくなるとみられる物件ならば、還元利回りはそのぶんだけ大きくなります。このような物件は投資物件としては不利な物件です。

3.還元利回り3%以下で買うと高値取引とみられるのだけれど

還元利回りが小さいほどその物件の購入金額を回収するのに長時間を要します。還元利回りが2.5%の物件は、購入金額を回収するのに40年かかります。孫社長はティファニー銀座本店ビルを、当時の相場の1.5倍くらいの価格で購入しましたが、短期間での資金回収を目的とする、投資事業として購入したわけではないのでしょう。会社の資金ではなく個人の資金で買ったらしいのです。銀座や丸の内のような一等地ならば100年後でもきっと今以上に繁栄しているでしょうから、41年目以降には利益が生じます。経済環境が大きく変わらなければ、還元利回りが1%で買ってもよいのです。100年以上所有すれば利益が生じます。長期保有を前提に考えるならば、持続的に発展が見込める地域の物件を選択するのならば、その取引価格(相場価格)は常に割安だといえるのです。銀座や丸の内のように100年後も賑わいが持続しているだろう土地の相場価格の還元利回りが仮に3%であったなら、その相場価額の3倍で購入しても、100年後には採算がとれるということです。

4.期待利回りが4%以下になるような金額で、住いは購入しないほうが良いでしょう

住まいを購入するのに35年返済の住宅ローンを借りて、ローン完済までそこに住んで、35年後に購入した住まいの価値が0円になったとすると、その物件の還元利回りは2.86%です。この数値に固定の借入金利を約1%として、これを加算した3.86%を上回る数値がその物件の還元利回り(還元利回りの判定は難しいので、取引利回りで代用しておきましょう)ならば、その物件は購入しても損はしないということになります。
東京の都心に所在する物件ならば35年後でも価値が0円になることはまず無いでしょうから、実質賃料利回りが4%以上の物件を購入すれば、買って損をすることはありません。35年後に物件価値が残存していればその金額が、あるいは36年以降の実質賃料(管理費等相当分を控除した賃料)の総額が、購入によって生じる利益です。

5.粗利回りなら5%、期待利回りなら4%以上の物件を選びましょう

期待利回りは想定される賃料をそのまま採用した概算賃料利回りではなく、賃料から管理費・修繕積立金・固定資産税等を控除した後の金額による実質賃料利回りです。概算賃料利回りでは概算しかできませんが、概算賃料利回りで5%程度の物件ならば、実質賃料利回りで4%以上は確保できると期待できます。ネット上の貸希望賃料情報の90%程度を妥当な賃料と想定すれば、概算賃料利回りの計算はさほど難しくありませんから、その数値を参考にして購入物件を選びましょう。
不動産は本来長期所有すべき資産なので、不動産を購入する際は期待利回り(取引利回り)と還元利回りの違いをよく理解して、保有期間や採算分岐点を考えて、購入目的に合った物件を選びましょう。実質賃料利回りが4%以上になる新築マンションは、それほど多くはありません。実質賃料利回りが4%に満たない物件を購入するのであれば、将来確実に値上がりする物件か、確実に35年以上使い続けられる物件を選ばないと、いずれ後悔することになってしまいます。都心立地の物件なら大丈夫でしょう。そして中古物件は値下がりしても僅かです。だから住まいとして購入するのなら実質賃料利回り4%以上、概算賃料利回り5%以上の都心の中古物件をお勧めします。

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